塞いだ耳に嗤う楽園㉖ 女たちの会話

「ねぇ、何が好きなの?」次の休み時間、倉木は岡根に続きを聞いてきた。
「おもしろいじゃん」岡根は答える。少し倉木に媚びるような響きがあった。

グループの中にも微妙にヒエラルキーがあるのだろう。
日下部グループもそうだった。

「目立ってないじゃん!」倉木は言う。
岡根は困惑と不満を浮かべた。

「いや」それを受けて堤芽依が答えた。
「あの人、他のクラスだと結構…」
「目立ってるの?」「うん、石割たちとも結構繋がっている」

石割グループと特に仲良くしていた訳ではないが、北嶋とは昼休みには会話をすることが多かった。
堤芽依は石割たちとも仲が良かったので、それを見ていたのだろう。

「みんな、あの人の事を知らないんだよ」岡根唯菓が口を開いた。
そう言うあなたは私のことをどれだけ知っているのかとも思った。
「早く帰って勉強ばかりしているんでしょ?」
「あの人、勉強してないよ」
「どうせ口でそう言ってるだけでしょ」
微妙な進学校の癖に勉強ばかりしている学生の何が悪いのか…不思議な価値観であったように思う。
「親とか呼び出されたりしてるんだよ」冬休みの三者面談のことか。岡根唯菓は知ってたのか。

「だって、学力テストの順位上の方に乗ってたじゃん」
それいつの話だよ。
「学力テストだと頭がいいんだよ」
だからそれは一体いつの話なのか。
「知ってた?」倉木は堤に聞いた。
「…うん」堤は答えた。

この感、古瀬島なつ季だけは私のことを時折睨むように見てきていたように思う。

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