No hero,but dream⑳ 合唱団

「草木の会」には、合唱団があった。
会員の家庭の子どもたちの、特に小学校高学年前後のメンバーが集まって構成される合唱団を「使命の子合唱団」と呼んだ。
私は「使命の子合唱団」に入った。
正直、気は進まなかった。
私は音楽も歌も、好きではなかった。
そもそも我が家は音楽的な教育は、こと私には乏しかった。
(姉の方は幼少時にピアノを習っていた)
それでも、熱心な活動家の家庭の子どもたちは合唱団に所属することが通例なので、面接を受けた。
「歌が得意ではないので、克服したい」
なんて「草木の会」の大人たちが好みそうな動機だろうか。
受かった。(落ちるなんてことはよっぽどでない限りないだろうが)

たまに行くのが嫌になって、親に文句を言った。
すると、高熱が出た。
「使命の子合唱団」の文句を言った罰だと言う。
ちょっと怖くなって、あまり文句は言わないようになった。

合唱団には、近藤雄浩くんも他の小学校に進学した金本清もいた。
他に前髪がヘルメットみたいな髪型をした矢代光(やしろひかる)。矢代は金本清と同じ小学校らしく、やたら調子が良くて饒舌だった。少し澤枝くんと似ていると思った。

他の同級生たちと比べて異様に体の大きな小学生もいて、名前を北嶋信彦(きたじまのぶひこ)と言った。
北嶋とはこの時は特に仲良くなることはなかったのだが、後に多少関わることとなる。

「使命の子合唱団」は途中離脱することなく最後まで参加したが、罰が怖くて参加していたところもあって、私は音楽がむしろ少し嫌いになってしまったようにも思う。

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