甘い汗、夏の憧れ⑤ 髪型

中二の夏休み、私は髪型を変えた。
それまでのスポーツ刈りの短髪を辞め、真ん中分けの髪型に変えた。
理由は、私の頭の形に対するコンプレックスだ。

一年の時に普段行っている理髪店が休みで近所の別の店で散髪した際に、その時の理髪師に私の頭の形を「切りづらい」「ボコボコしている」「変な頭の形だ」と散々呟くような声で(しかし私にはしっかり聞こえる声で)罵倒されたのだ。
幼少期に、活動的にすぎた姉に振り回され私は頭を何度か強打したことがあるので、その時に頭の形が歪んでしまったのだろうか。
そうでなくても私はクラスで一番身長が低いにも関わらず頭のサイズはクラスで一番大きく、頭の大きさにはもともとコンプレックスがあった。
その理髪師からの罵倒の言葉で、私は頭の形が出やすい髪型を心の底から辞めたいと思ったのだ。
(ちなみにその私の頭の形を罵倒した理髪師のいる理髪店には、それから二度と行っていない)

思春期でそういったことが気になりだした…ということでもあるのだろうが、正直そこまでの反響があると思わなかった。
私の髪型が変わったことは、クラスでも塾でも予想外の反響があった。
あろうことか「カッコいい」と言われるようになったのだ。

私は、無自覚だった。
小学生の時には無かった眉毛も成長期に差し掛かった今はあるし、歯も当然生えている(当たり前だ)。
先ほどの頭の大きさや形へのコンプレックスも含め、私は自分の顔を「醜い」と自己評価していたのだ。

考えてみれば、私の母は顔の中心にある疣(いぼ)が台無しにしてしまってはいるが目ははっきりとした大きな二重だし、父も160cmに満たない低い身長だが顔立ち自体は悪くは無かった。
私は、顔がそれなりに良かったのだ。

私はそれらの「カッコいい」の声を…なんともったいないことに…私に対する「いじり」として捉えてしまっていた。
私は…思春期にはよくあることだが…恥ずかしくて、女子生徒とはあまり話さないようになっていった。


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