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販売員だった自分に伝えたい10のこと その⑨

小売りはクリエイティブ。


 給料が低い。休みが少ない。立ち仕事で疲れる。このマガジンでいろいろ書いてきたように、販売の仕事に就くデメリットは、やっぱりある。
 もちろんどんな仕事においてもいいことばかりじゃない。でも最近の労働市場で、特に小売業で人手が足りていないといわれていることを考えると、やっぱり割りに合わないと思われている仕事なんだろう。
 僕自身もそう感じていたし、その状況から抜け出したいと思って、12年間ほど続けた販売の仕事、小売業を離れて別の仕事に就いた。そして離れてみて、振り返ってみて思うこと。

 なんだかんだ言って、小売の仕事って面白かった。

 でもあんな立ちっぱなしでいないといけない仕事の、一体なにが面白かったのか。

 1つはきっと、お客さんと直に接することができるということだ。
 この場合のお客さんは、“クライアント”という意味ではなく、“市井の人”、つまり“生活者”を指している。
 普段の生活をよりよくするもの、大げさにいえば、“希望”を求めてお客さんはやってくる。そして販売員は、どんな“希望”なのかあれこれ聞き出して、それを叶えることができそうな商品を提案する。
 でも残念ながら毎回叶えられるわけではない。だからこそ、“希望”を提供することができて、喜んでもらえたときは自分も嬉しくなる。

 そしてもう1つはきっと、決まった場があるということだ。

 例えば訪問販売のような形態でも、上に書いたことはおおよそできるかもしれない。でもやっぱり、お店という場所があることも重要なんじゃないか。
 商品の魅力を伝えるために、またブランドの世界観を伝えるためにお店はある。
 POPを置いたり、レイアウトを工夫したり、お客さんの目に止まるようにいろんな仕掛けが施されている。什器や照明、BGMなどの演出もあったり、そういったいろんな要素によって、お店は商品の舞台として機能している。
 そうやって表現されたものに反応した人たちがやってきて、提供する人と受け取る人が邂逅する。それがお店という“場”だ。

 自分たちの思いを表現した“場”に、“希望”を持った“生活者”がやってくる。そこで話を聞いたり、話をしたりする。思いが通じれば、ものとお金のやりとりがうまれる。“希望”を提供することによって対価を得て、それによってお店の運営を続けることができる。そしてそれに携わる人の生活が成り立つ。

 僕は音楽を聴いたり、本を読んだり、美術館に行ったり、映画を観たりするのが好きだ。そしてそれと同じくらい、もしかしたらそれ以上にお店に入るのが好きだ。多分それは、クリエイティブという点で共通しているからだと思う。

まとめ

・お客さんは、日常の中の“希望”を求めて小売店にやってくる。
・お店は、クリエイティブな“場”。

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