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物語の心理学:読者との深い絆を築くホルモン「オキシトシン」

前回こちらの記事で
「ストーリーが過度なドーパミンに依存する危険性」についてお話しました。今回は続きを書こうと思います。

今回はどうやってドーパミンに依存することなく物語を作るのか、についてお話します。

この記事はこんな方向けの記事です。
▶物語オタクの方
▶物語オタクの頭の中を覗きたい方


オキシトシンとは何か?

今回も『樺沢紫苑』先生の著書「精神科医が見つけた3つの幸福」からインスピレーションを得たお話をします。

樺沢紫苑 出版:飛鳥新社

前回、人間の幸福を司る三大幸福ホルモンのうち、ドーパミンのお話をしました。
今回は『オキシトシン』の話です。

オキシトシンの重要性

オキシトシンは人間の社会的な相互作用や感情的な絆の形成において非常に重要な役割を果たします。
このホルモンは、人々が互いに信頼し、協力し、感情的なつながりを築くのを助けることで、社会的な結びつきやコミュニティの強化に寄与します。また、ストレスや不安を軽減することで、精神的な健康をサポートする効果もあります。

オキシトシンのこれらの特性は、物語作りにおいても重要な要素となり得ます。キャラクター間の関係性の深化、感情的な瞬間の描写、読者との共感の創出など、物語の中でオキシトシンの効果を模倣することで、より深い感情的な体験を読者に提供することが可能です。

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他者との交流によって感じる幸せ』です。
最後のひとつの幸福ホルモンは「セロトニン」という健康によって感じるホルモンです。
このオキシトシンとセロトニンは相互作用によって非常に健全な幸せを供給してくれます。
ではドーパミンは?答えがこちらです。

依存性と報酬システム:
ドーパミンは依存性のある行動や物質に対する渇望を引き起こす可能性があります。
オキシトシンはこのような依存性のメカニズムには直接関与していないと考えられています。

これらの違いを理解することは、人間の行動や感情、社会的相互作用を理解する上で非常に重要です。また、物語作りやキャラクターの動機付けにおいても、これらの化学物質の違いを考慮することが有効です。
オキシトシンがキャラクター間の絆や共感を深める要素として、ドーパミンがキャラクターの目標達成や行動の動機付けとして機能する場面を想像することができます。
このように、物語の中でこれらの化学物質の特性を活用することで、よりリアルで感情的に訴えかけるストーリーを作り出すことが可能になります。

ドーパミンとオキシトシンの分泌後の減少速度については、これらのホルモンの生物学的特性とその作用機序を考慮する必要があります。
ドーパミン:刺激に対する即時の反応で、効果は短期間
・オキシトシン:長期的な社会的結びつきに関連し、効果は比較的長持ち

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もっとも大きな違いです。
実生活同様、物語においてドーパミンに依存せずに幸福感を与えるためには、
オキシトシンを分泌させることが重要になってきます。

個人的な所感ですが、現代は「オキシトシン不足」に陥った経験がある若者が多いのではないかと思います。
コロナ禍を学生時代に経験し、人間関係の希薄さや孤独を味わった方が多いのではと思います。
それを物語で埋めたいという心理を持つオーディエンスが多いのではないかという仮説も立ちます。

物語におけるオキシトシンの役割

感情的絆と共感の創出

キャラクター間の関係性:
物語において、キャラクター間の深い絆や複雑な関係性を描くことで、読者はキャラクターに感情移入しやすくなります。
家族、友情、恋愛など、さまざまな形の関係性を通じて、読者はキャラクターの感情や動機を理解し、共感を感じることができます。
感情的な瞬間の描写:
物語の中で感動的、または心温まる瞬間を描くことで、読者のオキシトシンの分泌を促し、より深い感情的な結びつきを生み出すことができます。
例えば、キャラクターが困難を乗り越えたり、大切な人と再会したりするシーンは、強い感情的な反応を引き出すことができます。

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読者との深いつながりの構築方法

共感を誘うキャラクターの創造:
読者が自分自身や知り合いに似ていると感じるキャラクターを作ることで、彼らとのつながりを深めることができます。
キャラクターの弱点、挑戦、成長など、人間らしい特徴を持たせることが重要です。
物語の普遍的なテーマ:
愛、友情、勇気、犠牲など、普遍的なテーマを取り入れることで、より多くの読者に共感を呼び起こすことができます。
これらのテーマは、多くの人々の経験や感情に共鳴し、深い感情的な反応を引き出す可能性があります。
感情的な物語の流れ:
物語の中で感情の起伏を巧みに操ることで、読者はキャラクターの旅路により深く没入します。
悲しみ、喜び、驚き、安堵など、さまざまな感情を経験させることで、読者は物語により強く引き込まれ、キャラクターとの感情的なつながりを深めることができます。

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オキシトシンを活用した物語

葬送のフリーレン

最近の作品でオキシトシンを最も上手に活用している作品の代表例は
葬送のフリーレン」ではないかと思います。

長い間大切な人と会わず、相手が老いてしまい、なんでもっと会っておかなかったんだろう、と後悔する。これは人間一度は経験するのではないでしょうか。ここに共感が生まれます。長寿のエルフという設定を非常に上手く利用していますよね。
他にもキャラクターの成長や温かい触れ合い、ほのぼのしたやりとりなど、
この時代にこの作品が覇権を握っていると言っても過言ではないくらい人気なのも納得なくらい「オキシトシン」が出る作品だと思います。
上記の「読者との深いつながりの構築方法」を非常に上手く使いこなしている作品ですね。
さらに、ほどよい戦闘シーンでドーパミンも出ます。意外と戦闘シーンがお気に入りというオーディエンスも多いですよねこの作品。

では、オキシトシンの重要性の話はここまでです。
次回は、葬送のフリーレンを題材とし、ドーパミン・オキシトシンを定量化し、物語づくりに活かす試みのお話をしようと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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