見出し画像

進撃の巨人第1話から学ぶドーパミンの使い方:感情を操る脚本術

こんばんは、アルです。いつも私のマニアックな記事を読んでくださり感謝しております。
前回は「葬送のフリーレン」の第1話を参考にしながら、
幸福ホルモンである「オキシトシン」を作品づくりに活かす方法を記事にしました。

オキシトシン優位の作品の方が時代に合っていますが、やはりドーパミン系展開特有の熱い展開、謎が解けたときのスッキリ感、恐怖体験などを味わいたくなるときありますよね。

ということで今回は近年の作品の中でお手本のようにドーパミンを出してくれる「進撃の巨人」第1話を参考にしながら、記事を作ろうと思います。
進撃の巨人第1話は構造や魅力の構築が複雑なので、
・ドーパミンが作品の魅力をどのように向上させてくれるのか
・どう自分の作品づくりに活かすか
ここにフォーカスを絞りたいと思います。

今回はこんな方に向けて記事を書いています。
▶ドーパミン系の作品づくりのコツを知りたい方
▶AIを作品づくりに活用したい方




ドーパミンとは?

おさらい

まずドーパミンがどんな幸福ホルモンなのか、おさらいします。

ドーパミンは、脳内で生成される重要な神経伝達物質の一つです。以下にその特徴をいくつか挙げます

報酬と快楽の感覚: ドーパミンは「報酬分子」とも呼ばれ、食事、性行為、ドラッグの使用など、快楽を伴う活動を通じて放出されます。これにより、その行動を再び行いたいという欲求が生まれます。
動機付けと欲求: ドーパミンは目標に向かって行動を促す動機付けや欲求にも関与しています。高いレベルのドーパミンは、ある行動に対する意欲や熱意を高めることがあります。
認知機能と注意: ドーパミンは学習、記憶、注意集中にも重要な役割を果たします。特に前頭葉でのドーパミンの活動は、計画、問題解決、意思決定などの高次脳機能に影響を与えます。
運動制御: ドーパミンは脳の運動制御に関わる部位、特に黒質と線条体の間の通信において重要な役割を果たします。ドーパミンの不均衡は、パーキンソン病のような運動障害を引き起こすことがあります。
心理的な影響: ドーパミンのレベルが異常に高いか低い場合、それぞれ異なる心理的、行動的な問題を引き起こす可能性があります。例えば、統合失調症は高いドーパミン活動と関連していると考えられていますが、うつ病は低いドーパミンレベルと関連していることがあります。
依存と中毒: ドーパミンは中毒や依存症の発展にも関与しています。薬物、アルコール、ギャンブルなどがドーパミン系を刺激し、その行為を繰り返すことで報酬系が乱れ、依存症につながることがあります。

ドーパミン自体が直接的な「デメリット」を持つわけではありませんが、そのレベルが異常に高いか低い場合、または特定の状況下でのドーパミンの作用が問題を引き起こすことがあります。

ドーパミンの過剰な放出とその影響

依存症と中毒:ドーパミンは報酬と快楽の感覚に深く関与しているため、薬物、アルコール、ギャンブル、さらにはSNSの使用など、快楽をもたらす行為に対する依存症や中毒を引き起こす可能性があります。
これらの行為がドーパミン放出を刺激し、時間が経つにつれて脳は同じ快楽を得るためにより多くの刺激を求めるようになります。これが依存症のサイクルを生み出します。

報酬系の麻痺:頻繁に高レベルのドーパミン放出を経験すると、脳の報酬系が「麻痺」し、日常的な活動や自然な報酬からの満足感が減少する可能性があります。
これは、例えば、長時間のビデオゲームやSNSの使用によって引き起こされることがあり、結果として日常生活における動機付けや喜びが減少します。

心理的な問題:ドーパミンの過剰な活動は、統合失調症や幻覚、妄想などの心理的症状と関連していることがあります。
また、ドーパミンの急激な増加や減少は、気分の変動や不安定さを引き起こす可能性があります。

ドーパミンの不足とその影響

運動障害:ドーパミンの不足は、特にパーキンソン病のような運動障害と関連しています。パーキンソン病では、脳の特定の部分でドーパミン産生細胞が死滅し、手の震え、筋肉の硬直、動作の遅さなどの症状が現れます。

うつ病:低いドーパミンレベルは、うつ病やその他の気分障害と関連していることがあります。ドーパミン不足は、喜びや報酬の感覚の減少、エネルギーの欠如、動機付けの低下を引き起こす可能性があります。


持続性について
ドーパミンの影響は一時的なものであり、そのレベルは継続的に変動します。しかし、ドーパミン系に対する長期的な刺激(例えば、薬物使用や特定の行動の繰り返し)は、脳の報酬系に恒久的な変化を引き起こす可能性があります。
依存症や中毒、運動障害などの問題は、適切な治療や介入がない限り、長期間にわたって持続する可能性があります。
ドーパミンのバランスが崩れると多くの問題が生じる可能性があるため、健康的なライフスタイルを維持し、過剰な刺激から適度に距離を置くことが重要です。

ChatGPT

簡単にまとめると
・強い刺激や快感を与える
・量が多すぎると依存症になり、少なすぎると心のエネルギー不足になる
・効果が持続しづらい
このような特性を持っています。


どんなシーンでドーパミンは分泌される?

続いて、どのようなシーンでオーディエンスはドーパミンを感じるのか、GPTに訊いてみます。
けっこう多いので、飛ばしてくださって大丈夫です。

成功や達成感を感じる瞬間: 目標達成のための長期間にわたる努力と挑戦が描かれ、最終的な成功がその苦労を乗り越えた結果として描写されることで、ドーパミンの分泌が促されます。

新しい発見や学びの体験: キャラクターが未知の領域に踏み出し、探求と発見の過程で得られる知識や経験が、新たな理解や洞察をもたらし、それによってドーパミンが分泌される瞬間です。

相手を言い負かす様子:勝利や成功を目撃することで感じる報酬系の活性化に関連しています。

ゲームやスポーツでの勝利: 激しい競争やチーム内での連携を通じて勝利をつかみ取る瞬間が描かれ、その過程で高まる緊張感と達成感が、ドーパミンの分泌を促します。

報酬や賞を受け取る瞬間: 困難な課題に立ち向かい、その努力が認められ報酬や賞を受け取る瞬間は、自己の価値や達成を確認することでドーパミンが分泌されます。

楽しいサプライズや予期せぬ良い出来事: 日常からの脱却や期待していなかったポジティブな出来事が起こることで、驚きや喜びがもたらされ、それがドーパミン分泌を促します。

クリエイティブな活動や趣味に没頭する:創造性の発揮と自己表現のプロセスはドーパミン分泌を促します。これは新たなアイデアや作品を生み出す達成感や満足感に関連しています。

ロマンチックな瞬間や恋愛の進展:感情的なつながりと親密さが深まることで、関係におけるポジティブな変化を経験し、ドーパミンが分泌されます。

面白いジョークやエンターテイメントを通じたリラックスや笑い:ストレスの軽減と幸福感の向上につながり、これもドーパミンの分泌を促します。

おいしい食事は味覚の喜び:それを共有することによる社会的な交流からもドーパミンが分泌される可能性があります。

課題や問題を解決する:その問題がどのようにして生じたか、キャラクターがそれにどのように取り組んでいるかを描写することが重要です。

自己啓発や自己改善に関わる瞬間:キャラクターがなぜ自己改善を望むのか、その過程で直面する内面的な葛藤を示します。

インスピレーションを受ける体験:創造的なプロセスやアイデアが生まれる直前の状況を描くことが効果的です。

親密な会話や深いつながりを感じる瞬間:キャラクター間の関係性が徐々に深まる様子や、互いに心を開くまでの過程を描写します。

アートや音楽などの美的体験を楽しむ時:キャラクターがどのようにしてそのアートや音楽に出会い、それに魅了されるのか、その背景を詳しく描くことが有効です。

冒険や新しいことに挑戦する:キャラクターが安定した状況から踏み出す勇気や、挑戦に至るまでの心理的な葛藤を描写します。

目標に向かって一歩を踏み出す時:その目標がキャラクターにとってどれほど重要か、そしてその一歩を踏み出す決意が困難にもかかわらずどのように固まったかを示します。

キャラクターが自己発見や成長を遂げる瞬間:過去の失敗や経験から学ぶ過程を詳細に描き、その成長に至る経緯を明らかにします。

ハラハラドキドキする展開やサスペンスが解決する時:緊張を高めるための障害や誤解、そしてそれらがクライマックスに向かってどのように解決されるのかを描くことが重要です。

感謝や承認を受けた時:キャラクターが目標に向けて努力し、その過程で直面する困難や挑戦を描写することが重要です。

チームでの共同作業の成功:メンバー間の協力やそれぞれの役割、チームとして乗り越えた障害を詳細に描きます。

自然の美しい風景を楽しむシーン:キャラクターが日常から離れて自然に触れるまでの移動や心の準備を描くことが効果的です。

心地よい音楽を聴く瞬間:音楽に込められた感情や、その音楽がキャラクターにとって持つ特別な意味を描写します。

新しい趣味やスキルを習得する過程:学びの初期の苦労や挑戦、そして徐々に上達していく様子を描くことが助走となります。

緊迫した逃走や追跡シーン:キャラクターの恐怖や緊張が高まる直前の状況を詳しく描写します。

予期せぬ展開や衝撃的な事実の発覚:視聴者の期待を裏切るようなヒントや前兆を散りばめることが重要です。

キャラクターが極限状態に置かれる場面:その状況に至るまでの精神的、物理的なプレッシャーを強調します。

対峙や闘争がピークに達する瞬間:対立の原因やキャラクター間の感情の高まりを描くことが効果的です。

キャラクターが困難や障害を克服するシーン:その障害がどれほど大きなものであるかを示すことで、克服の瞬間のインパクトを増します。

謎を呼ぶ描写:謎が物語に組み込まれると、人間の好奇心や解決への欲求が刺激されます。このプロセスは脳内でドーパミンの分泌を促し、謎を解き明かす過程で得られる達成感や満足感につながります。

サスペンスやミステリーが解決する:謎や不可解な点を徐々に提示し、解決への手がかりを小出しにすることで緊張感を高めます。

激しい感情的な対立や衝突の場面:その対立が生じた背景やキャラクターの個人的な動機を深掘りすることが、感情的な衝撃を強める助走になります。

キャラクターが罠や試練に直面するシーン:その危険や試練が迫る前の平穏な状況を描き、緊張感を徐々に高めます。

失敗からの再起を図る瞬間:失敗の影響とそれを乗り越えようとする内面的な決意を示します。

ダイナミックな動き:戦闘シーンに入る前にキャラクターの準備動作や心理的な高揚を描写し、視聴者の期待を高めます。

恐怖や不安を感じる:キャラクターの不安を引き起こす要素を強調し、視聴者がその恐怖を共有できるようにします。

倫理的または道徳的なジレンマに直面:そのジレンマが生じる背景やキャラクターの価値観の葛藤を描写します。

失われたものや人を悼む:その喪失前の関係の深さや意味を描くことで、悲しみの重みを増します。

ChatGPT

こんな感じです。

進撃第1話を振り返る


次に、進撃の巨人の第1話のあらすじをざっと振り返りながら、上記のリストを参考にそれぞれどうやってドーパミンを出しているのかを書いていきます。

①冒頭 50mの壁より高い身長の超大型巨人出現
「その日、人類は思い出した。やつらに支配されていた恐怖を。鳥かごにとらわれていた屈辱を」
恐怖や不安を感じる

②時系列戻る 調査兵団が巨人と戦うシーン。スタイリッシュなアクションシーン(⑦の布石)
ダイナミックな動き

③OP
入り方がとてもかっこいい

④意味深な夢を見て目覚めるエレン。なぜか泣いている
謎を呼ぶ描写
有名な伏線ですね

⑤壁の重要性ついて力説する宣教師のような男(世界観説明)
唯一といっていいくらい、ドーパミンもオキシトシンも出ないシーン。
世界観の説明のためのシーン。

⑥ハンネスたちとの口論(対立)
激しい感情的な対立や衝突の場面

⑦調査兵団の帰還。ボロボロで意気消沈している
失われたものや人を悼む
予期せぬ展開や衝撃的な事実の発覚
「なんの成果も得られませんでした!」

⑧家族とのシーン。調査兵団入りを反対する母
なにか知っているような意味深な態度をとり続ける父。地下室の存在
謎を呼ぶ描写
→失われたものや人を悼む
(⑪、⑫の布石):その喪失前の関係の深さや意味を描くことで、悲しみの重みを増します。

⑨アルミンが不良少年に絡まれている
相手を言い負かす様子

⑩異変発生。超大型巨人出現。時系列①に戻る。壁に穴をあけられ、巨人が街に入ってくる
→恐怖や不安を感じる

⑪母のもとへ駆けつけるが瓦礫の下敷きになっている。ハンネスが来てくれる。助けたいが瓦礫が重く、引っぱり出せない。
→恐怖や不安を感じる
→キャラクターが極限状態に置かれる場面
→倫理的または道徳的なジレンマに直面

⑫3人が逃げた後やっと「行かないで」と本音を漏らす母。母、喰われる。
恐怖や不安を感じる
→失われたものや人を悼む
→緊迫した逃走や追跡シーン
「その日、人類は思い出した。やつらに支配されていた恐怖を。鳥かごにとらわれていた屈辱を」アルミンのナレーションで終わる。

まとめ

この脚本の優れている点をまとめてみます。

・ほとんどのシーンでドーパミンが出るようにされている
しかもほとんどが負の感情から起こるドーパミンばかりで構成されています。コミカルなシーンはアルミンが不良に絡まれているときにミカサが怖い顔して走ってくるところくらいでした。
話を通じて「視聴者にどんな感情を抱かせるか」が非常によく練られていることがわかります。
また、負の感情から起こるドーパミンは前振りがあまり必要ないことも重要な点です。巨大な生物に食べられる危険は本能的に恐怖を感じるので、1話からいきなり盛り込んでも成り立ちます。
一方、困難を乗り越えるなどの展開でドーパミンを出すためには、前振りにかなりの描写を使う必要があるため難しいです。なので、ドーパミン系が多い少年誌の作品でも、オキシトシン系の感動を織り交ぜて第1話を作ることが多いです。ONE PIECE、NARUTO、金色のガッシュなどが典型例ではないでしょうか。

・説明的なシーンが非常に少ない
説明的というのはドーパミンもオキシトシンも出ないが、作品について理解してもらうために仕方なく入れるシーンと考えるのが良いと思っています。
出来れば入れたくないシーンです。一部、設定描写がとにかく好きだと言う方もいますが、少数派であると思います。
進撃1話では、宣教師が熱弁するシーンとアルミンが政府について少し話すシーンの2つのみです。

・伏線まで織り交ぜている
ここまで感情を高揚させるシーンを敷き詰めながらも、
謎めいた要素(エレンの夢、父の秘密、地下室の謎)などが視聴者の好奇心を刺激します。厳密にはこれらは伏線ではなく布石ですが、話が進むにつれて忘れる視聴者も多くなると思うので伏線で良いと思います。
これらは後の話でドーパミンを出すための投資になります。
つまり視聴者の感情という収益を得ながら同時に投資もしているわけです。


自分の作品づくりにどう活かすか

おすすめの方法は自分の作品をシーンごとに管理し、それぞれのシーンがどのような役割を持っているか明確にすることです。
役割とは「オーディエンスに感情を抱かせること」です。

料理をたとえにしてみます。
なぜ料理なのか詳しくは前回記事の「幸福ホルモンで検証:長寿のエルフが仲間と再会したらなぜ面白いのか」をご参照ください。
①作品全体を通じてどのような感情を持ってほしいのか考える(どんな料理を作るのか)
②そのためのシーン(具材)を配置する(リストを活用)
③必要であれば②のシーンを際立たせるための描写を入れる(調理する)

こう見ると進撃の巨人第1話は、「最低限の調理で具材の味を引き立たせる『壁と巨人』という調味料がとてもよく効いている料理(作品)」だとわかります。


今回はこれで終わります。いつもマニアックな話ばかりですが、最後まで読んでいただけた方、本当にありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、スキやフォローよろしくお願いします。
ではまた次回の記事でお会いしましょう。さよなら!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?