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【要約】100円のコーラを1000円で売る方法①から学んだ4つのこと

新人商品プランナー・宮前久美が挑んだのは、「Appleにできて日本企業にできない壁」だった。彼女は日本の抱える課題 - 「高品質・多機能。でも低収益」から脱却できるのか?コトラーからブルーオーシャン、キャズム理論までつかめる1冊。



1.アメリカの鉄道会社はなぜ衰退したのか?

日本からすると、アメリカはビックリするくらい鉄道に乗る機会が少ないと思います。しかし、実はアメリカでも、昔は鉄道が主な輸送手段だったんです。でも、今は衰退しています。なぜでしょう。


「車やバス、飛行機にお客さんを奪われたから。」確かにそういう面はありますが、話はそんな単純ではありません。最大の原因は、鉄道の利用者が車やバス、飛行機などの他の輸送手段を使っても、鉄道会社の人たちは気にしなかったことです。


「なぜ、お客さんがどんどん他に流れているのに、鉄道会社の人たちは気にならなかったのでしょうか?」


その原因は鉄道会社自身の考え方にありました。彼らは、自分たちの事業を”輸送事業”ではなく”鉄道事業”と考えていたんです。だから、自分たちのお客さんがバスを使っても、「ウチは鉄道会社だから関係ない」と思ってしまったんです。


逆の発想をした化粧品会社があります。ある化粧品会社は自社の事業を、”化粧品の製造販売”、別の化粧品会社は自社の事業を”ライフスタイルと自己表現、そして夢を売ること”と定義しました。


将来、技術革新で化粧品よりももっと効果的な美容方法が生まれるかもしれません。そのとき生き残るのはどちらの考え方でしょう?


答えは、後者の化粧品会社で、新技術を柔軟に取り入れることができるからです。


もし、”化粧品の製造販売”にこだわっていると、化粧品に代わる新しい美容方法が生まれた時に、会社の事業は衰退してしまうかもしれません。”ライフスタイルと自己表現、そして夢を売ること”と考えると、新しい美容方法は会社を発展させるチャンスになります。


「市場志向」と「製品志向」という言葉があります。自社の事業を”化粧品の製造販売”と考えているのは製造志向です。一方で、”ライフスタイルと自己表現、そして夢を売ること”と考えるのが市場志向です。つまり、顧客中心の考え方です。


現場のセールス目線だけでなく、全社的で長期的な視点を持たなければいけないのです。

図解.002

2.お客様の要望に応えるだけだと0点

お客さんって、どんな時に満足すると思いますか?「お客さんの要望が満たされた時」だと思いがちですが、実は違うのです。「顧客満足の式」というものがあります。顧客満足は、”顧客が感じた価値”から”事前期待値”を引き算したものです。


顧客の事前要望を全て満たして、事前期待値が100だとします。そして事前期待値を100%満足させる100の価値の商品を提供したとします。その時は、顧客満足は”顧客が感じた価値”から”事前期待値”を引き算したものだから、100引く100で0点なのです。


顧客の要望が100%正しいとはかぎらないです。むしろ、的外れな要望や思い込みもあります。顧客が見過ごしていた問題点を指摘して、それらをいかに解決するか、具体的な解決方法を提案してくれる。その結果、会社全体のコストを大幅に削減できる提案内容になりました。この場合は、値段が高くても100点の顧客満足になります。


顧客が感じた価値 - 事前期待値 = 顧客満足

図解.003

3.街の電器屋さんにはあって、家電量販店にはない価値

街の電器屋さんはどうやって成長していると思いますか?電器屋さんの価値は”価格”と”品揃え”を重視しがちですが、他にもあるのです。街の電器屋さんが提供できて、家電量販店が提供できないものを考えると、答えは見えてきます。


シニア層をサポートすることで成り立っている街の電器屋さんが多いのです。街の電器屋さんが提供する価値と、家電量販店が提供する価値を整理します。


家電量販店が提供できる価値は「品揃え、廉価販売」
街の電器屋さんが提供する価値は「地域密着サービス」
シニア層の期待する価値は「アフターサービス、利便性、適性価格」


街の電器屋さんは、シニア層にターゲットを絞れば、価格や品揃えはそれほど気にする必要はなくなります。この考え方を、”バリュープロポジション”といいます。”顧客が望んでいて””競合他社が提供できない” “自社が提供できる”価値のことです。


ほとんどの企業は、時間とコストをかけて、他社と同じことを一生懸命自社でもやろうとします。その結果、商品もサービスも同じようなものになってしまい、際限のない価格競争に突入して、利益がどんどん少なくなっていきます。

図解.004

4.100円のコーラを1000円で売る方法

コーラは、ディスカウントストアで1缶50円とか60円くらいで販売されています。でも、同じコーラが1000円で売っているところもあります。もちろん、特別制のコーラというわけではなく、中身はディスカウントストアで売っているコーラと同じ液体です。


リッツカールトンのルームサービスです。普通に売っているコーラ、でも、今までの人生で、最高に美味しいコーラと感じます。部屋でルームサービスに電話をすると「15分お待ちください」と言われ、最適な温度に冷やされ、ライムと氷がついた、この上なく美味しい状態で、シルバーの盆に載ったコーラがグラスで運ばれてきました。


この美味しさなら、1035円は安いと感じるほどです。ディスカウントストアで50円、60円で販売しているコーラと同じ液体です。面白いですよね。コーラという液体だけでなく、サービスという目に見えない価値を売っているのです。


同じような商品が他でも売っていると、お客さんは値引きを求めてきます。だから徹底的にコスト削減を図る。このことを”プロダクトセリング”といいます。大きな規模の会社ほど、大量仕入れで原価を安くできます。


一方、リッツカールトンが売っているのは、心地よい環境で最高に美味しいコーラを飲めるという体験です。この体験は他では得られません。なので、顧客は値引きを求めません。そのため、コスト削減や規模の大きさは必要ありませんが、とことんまで、サービス向上を図ります。このことを”バリューセリング”といいます。


コストを徹底的に下げて価格勝負する戦略は、市場リーダーにしかできません。市場リーダーとは市場の中で1社だけ。世の中のほとんどの企業は本来、価格勝負をしてはいけないのです。


価格を下げるのではなく、価値をあげて勝負すべきです。
カスタマー・マイオピアからの脱却が必要です。


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