仮り暮し
あの日は、雨が降ってましてね。
ええ、肌寒い雨の日やったんですわ。
天井裏に登って作業しとったんです。
換気扇をね、こうシュッと外して、そこからですわ。天井裏に登ったんは。そら、確かに狭いですよ。25cm角の正方形やからね。でもね、通れる予感がね。
したんですわ。予感が。
そや、デュークなんたらちゅう方おりましたよな。え、なんて?サライエ?さらいえ.....
せや!更家や!そうそう更家ですわ。デュークの更家。
彼のポージングっちゅうんかいな、腕をシュッとしてね、
こう、シュッ、シュッっていったらまあ、上手いこと登れたんですわ。
作業も終わって、降りようとした時にね、下から声が聞こえたんですよ。
「俺、コンビニ行ってきますわ。」
ってね。
だから、こう言うたんです。
「おう!アイスコーヒー頼むわ!俺の財布持ってき!」
でもね、リアクションゆうか、反応がなくてね。それでも、まあええわ思って降りようとしたらね、
脚立があれへんのですわ。
そこにあったはずの
換気扇外した穴の下にあったはずの
脚立があれへんやないですか。
どないしたらええんや....どないなっとんねん....
えらい、動揺しましてな。けど、コンビニゆうてたしすぐに帰ってくるやろ。そないに待たんでも帰ってくるやろ。そう考えて、待つことにしたんですよ。
そら、孤独ですよ。誰ぁれもおらんしね。ええ、梁の上で体育座りですよ。膝抱えて体育座りですよ。
「アイスコーヒー買ってきました!」
彼が帰ってきたんやね。
小一時間かかるコンビニまで行ってきたんやね。
夏やし、冒険したなったんやろな。
だから、こう言うたったんですわ。
「このまま、天井裏で暮らさなアカンかと思ったやないか!」
ってね。
【おしまい】