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流し足りないところはございますか
みなさんも1度ならず何度も聞いたことがあるであろう。
「流し足りないところはございますか?」
「あっ、大丈夫です。」
こう答えるしかないよね。
この問答どうにかならんのかな?
髪を切りに行くと毎回思う。
ハッキリいってワタシはかなりダサい。
なにがダサいかって、カットしてもらっている間、
鏡を一切見ないのだ。
いや、見れないのだ。(ら抜き言葉ってホント便利ですね。)
だって、恥ずかしいじゃないか。
”コイツ、ジロジロ鏡見やがって。イキってんじゃねえよ!” とか思われでもしたらたまったもんじゃない。
で、カットの最中何をしているかというと、モジモジしている訳だ。人差し指を揉んでみたり、膝の上あたりをマッサージしてみたりといった具合に。
「確認してもらっていいですか?」
と言われるまで鏡は一切見ないのだ。
チラ見すらも。
実は鏡を見ないのは自宅においても同じだ。
鏡のなかの自分に見つめられることで照れてしまうから。
もう、かなりのダサ坊だ。
というか、もうヘタレですね。
鏡を見ないということがどういうことか。
そう。
毎日、微妙に髪型が違うのだ。
あるときは右分けだったり、またあるときは左分けだったり。
ただ、自宅ではチラ見はするので、どんな髪型かは分かる。そういうシステムになっているのだ。
それでも、毎回同じ髪型にならなくてもいいと思っているので、前髪が上がっていようと、下がっていようとそんなことはどうでもいいのだ。
と、話が脱線してきたところで本線に戻そう。
カットの最中、ひたすらモジモジしながら待つ時間を終え、「シャンプー台の方へどうぞ!」
来た。
いよいよここからが本番だ。
今日こそは絶対負けないぜ!
椅子が仰向けに倒され、ちっさいタオルを顔にかけられる。
オーケー。
準備は万端だ。
そんななか、シャンプーが始まる。
「おかゆいところはございませんか?」
「ハイ!大丈夫です。」
そして、シャンプーが終わり、いよいよ流す時がやってくる。
今日こそは言ってやるんだ。
「見えないから分かりません。」と。
なにしろ、ちっさいとはいえ、タオルを顔にかけられているのだ。
流し足りないかどうか分かるハズないじゃないか!
そんな状態で聞かれても困っちまうんですよ。
こちとら。
いざ尋常に。
「流し足りないところはございますか?」
来たよね。このタイミングが。
だけどね。こっちも準備は万端だよ。
さあ、新しい扉を開く時だ。
「あ、大丈夫です。」
新しい扉は開きませんでした。
だって、こんな顔してるよ。きっと。
ちっさいタオルで見えないけどさ。
そりゃ、言えねえよ。
うん。
今日はこれぐらいで勘弁してもらおう。