あの少年はもういない

銀杏BOYZ
「光のなかに立っていてね」「BEACH」
2014年1月15日。

あの2枚のアルバムが発売されてから今日で10年だそうだ。10年か。

おれが銀杏BOYZを好きになってから初めて出た新譜。けれどもそれは、あの4人─峯田、チンくん、アビちゃん、村井君で作り上げた最後の作品となってしまった。
10年前のこの日、「光のなかに立っていてね」をiPodに入れて、前半は真っ暗くて寒い部屋の中で布団を被って聴いて、途中から堪らなくなって、後半に差し掛かる頃に外をとぼとぼと歩きながら聴いた。
全てが完全に失敗した2013年/18歳、先の見えない大学生活、全く癒えぬ失恋、慣れない街での暮らし、不安、絶望、焦燥、妬み、羨望、孤独、後悔、自責、未来、初期衝動…
色々などす黒いのを誰にも何にも吐き出すこともないままひとりで抱え込んでいた当時のおれにとって、銀杏BOYZの新曲(或いは新録)たちは冗談抜きに救済だった。聖典だった。10曲全てがおれの事を歌ってくれている。おれの為に在るのだ。
「新訳 銀河鉄道の夜」から「光」の時には、人目もはばからず泣きながら国道沿いを歩いていた。「ボーイズ・オン・ザ・ラン」で走ったと思えばすぐ息切れして止まったりを繰り返して、映画「ボーイズ・オン・ザ・ラン」のラストの峯田みたいになろうとした。なれた気がした。あの夜確かに。

それから今日までにおける10年間、あの2枚に収録されている一曲一曲に色々な出来事や感情や記憶や人をそうして重ねてきた。
忘れていたり憶えていない事もあるけれど、それはロックが憶えてくれているのだろう。「恋は永遠」じゃないけれども。
そしてそんな10年を経て、来月は銀杏BOYZが、峯田が高知に歌いにくる。
銀杏BOYZを好きになった頃に「いつか地元でライブを観てみたい」と願ったものだが、まさか約10年越しにその願いが叶うとは。
人生分からないものである。
来月2月25日の銀杏BOYZ高知公演は、おれにとって、またこの10年のおれの全ての記憶にとってきっと重要になる事は間違いないだろう。
まずは生きてその日を迎えたい。

眠れずに 夜のかさぶたに
泣いていたあの少年はもういない
Gコード抑えたら
メロディが泣いてくれた

消えたいと ネオンの底に
息を止めていたあの少年はもういない
白いノート 書きなぐった
遺言を歌詞にして

涙は捨てて 愛を見つけて
君の腕で 君の歌で
夕闇を殺せ あの娘を助けて
君の声で 君の声で
手繋ぎたいけど恥ずかしいから
You are my best friend.
同じ君の声で

銀杏BOYZ「夕闇を殺せ」より

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