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調査、発掘、分析…チャーハン?考古学者の世界に突入!

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(インタビュー2019年7月)

TANQ-JOBライター渡部みどりのインタビュー記事第10弾!
化石、何百年も前に使われていた食器、土の下から出てきたものに魅力を感じる人っていませんか?
でも、宝探しや、化石発掘など(とってもキラキラ光って見える職業)に興味を持っても将来役に立たないだろうと思う人たちもいると思います。
しかし!
考古学を学んだ人たちはいろいろなところで活躍しています。
考古学に興味があっても「どう仕事にしたいいんだろう?」「そもそも考古学者として生活できるの?」とはっきりしないですよね。
この記事では京都大学大学院文学研究科、教授の吉井秀夫先生にお話しをうかがいました。
渡部:恐竜の専門家に会えるかも:)!

クイズ

クイズです!
みなさんは、考古学者と言うとどういうことをする人だと思いますか?

渡部:考古学者といえば恐竜、マンモスやアノマロカリスなどの生物の化石を分析する人じゃないんですか?

吉井秀夫先生の紹介

京都大学大学院文学研究科、教授です!

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今回みなさんに考古学とは何か、考古学者は何をするのかを説明していきます!

考古学とは何?

まず考古学(英語:Archaeology)とは人間の過去についてしらべる学問です。
地面の下から掘り出した物を見て過去についてしらべます。

考古学と言うと有名な恐竜、アンモナイト、三葉虫などの生物を分析する仕事だと思われがちですが、実は違います。私たちは人間の過去を分析します。人間が出現する前の世代の生物を分析する学問は古生物学
(英語:Paleontology)と呼ばれます。

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考古学と歴史学の違いってなんですか?

考古学と歴史学はとても似ています。両方とも人間の過去について調べますが、歴史学者は見つかった書物(文字)を読んで歴史を分析します。でも考古学者は発掘で出土したものから過去を分析します。
例えば、日本の歴史学者なら、古事記、日本書紀などを読んでその時代の分析をするかもしれませんが、私たちは発掘で遺跡から出土した「もの」を分析します。

考古学者は何をするの?

私たちは文字記録がない場合、確実な記録が書物にない場合、発掘で出土した「もの」を分析します。しかし、「もの」は喋らないので形、場所から推測します。考古学者あるあるの一つに、「ものが喋ってくれたらいいのに…」というのがあります。

考古学者はいろいろな分野の専門家と協力します。
例えば、建物跡が見つかったら古代建築の専門家に伝えて、一緒に調査を進めます。
遺跡が出てきた!と気がつかなかったら壊されます。でも大きな遺跡などはそうそう見つからないです。(笑)
出土したものはとても脆いから割れることもあります。そしてよく割れます。その時は研究室で接着剤を使って慎重に直します。

発掘されたものの調査はとても大変です。それが何で、どのように使われていたのかなどを解き明かすにも時間がかかります。
コツコツ問題を解いていく必要があり、私は自分は好きな研究ができて幸せだと思いますし、また、自分が考古学者として発見を続けようと責任を感じながら仕事しています。

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慎重に埴輪を掘り出しています
(大阪府紫金山古墳・2003年)

考古学者のしごとは100ピースジグソーパズルを3セット分混ぜて、そのうち3分の2を捨てた後残りを袋に入れてガーッと振った後にパズルの絵を作らなければいけないようなものです。

渡部:絶対無理…脳みそパンクする

普段はどんなことをしているんですか?

私の専門は朝鮮考古学、つまり韓国の歴史専門の考古学者です。
私は現在韓国の三国時代の百済の、特にお墓について研究をしています。韓国の昔、百済だった場所から発見されたお墓の発掘で出土したものを調査します。韓国で見つかっている古墳は最大でも直径60メートルほどのお墓です。しかし、日本には大仙古墳(仁徳陵古墳)のような全長が486メートルもある前方後円墳もあります。日本の歴史の専門家と協力して、日本の王たちはなぜそんなに大きな古墳が必要だったのかも調べています。

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慶州の新羅古墳(鳳凰台古墳)

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扶余の百済古墳(陵山里古墳群)

普段は韓国の考古学者たちが調査した本を読んで調べたり、過去に日本語で書かれた韓国の考古学に関する論文を韓国語に翻訳して出版したりしています。他には、大学生や研究室にいる学生たちを指導して将来活躍できるよう人を育てます。

さらには、私の発掘の知識を使って京都市内での発掘協力もしたりします。京都に平安京があったため、市内の建物の下は全て遺跡です。企業がホテル、建物を建てる時に京都市に申請して、私たちが建物を建てる前に発掘調査をして、新発見があることもあります。特に京都大学のエリアはいろいろな時代の遺跡が残っています。

昔から百済(現在の大韓民国にあった国)と日本は深く関係していて、百済からたくさんの人々が日本に移住してきたこともありました。

桓武天皇の生母の高野新笠(たかののにいがさ)は続日本紀によれば百済の武寧王(ぶねいおう)を始祖とする百済からの渡来人の子孫とされています。仏教が最初に伝えられたのは百済からでしたし、有名な論語も、最初は百済からの渡来人が日本に伝えたそうです。
なので、遺跡からは韓国で見つかった物などに似た物が出土することもあります。

渡部:
(マレーシアの)学校で韓国からきた友達が、日常生活の中で使う韓国語の単語を少し教えてくれて、そこで日本語と韓国語には同じ発音で同じ意味を持つ言葉があることを知ってびっくりしました。「カバン」や「もんぺ」などは日本語でも韓国語でも「カバン」、「もんぺ」と発音されて、意味も同じです。その友達のお母さんも学校で漢字を習ったと話していて、何千年も漢字が日本や韓国で使われてきたというのを知ってびっくりです!

考古学者にも「歴史学者はコーヒーがないと生きていけない説」は当てはまるのか?

コーヒーのストーリー
ある歴史学者の方にインタビューした時に教えてもらった歴史学者あるあるネタです。
元ネタはこちら

コーヒーは飲みますけれど、生きていけないほどではないですね(笑)。歴史学者は本、文章を読むためにコーヒーをたくさん飲むのでしょう。しかし、考古学者の場合は「お酒」だと思います。私が大学で考古学者になりたいと先輩に言うと「酒は飲めるか」と聞かれました。(でもお酒には弱いので、あまり飲めません。でもこれも考古学者になるためだ、と思って「はい、飲めます。」と言っておきました。)最近は少なくなってきていますが、昔は昼に外で発掘作業に加わった後、夜はみんなでお酒を飲んでいました。昼は労働、夜は酒飲み、美味しいものをワイワイみんなで食べる、そんな感じでした。

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韓国留学当時の大邱・漆谷宅地地区遺跡発掘現場で(1992年)

考古学者になるためにはどのような知識が必要なんですか?

まず早起きできることと体力があることですね。発掘はいろいろな気候で行われるので、体力がないと辛いですね。ものすごく寒かったり、炎天下だったり、で発掘が終わるとヘトヘトです。(ヘルメットを被っていると余計暑いんです。)さらに、皆で協力して発掘するため、時間を守る、同じ釜の飯を食うことと(できれば)お酒が飲めることですね。他には、他国の考古学者たちと協力し合うことも多いので、その国の言葉ができるといいでしょう。私の場合は韓国の専門家と協力し合うこともあるので英語と韓国語が必要です。最後に、コツコツ努力できることです。終わりが見えないジグソーパズルの絵をつくるために、途方も無い努力、根気とこだわりが必要です。

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発掘は地道な協同作業です(大阪府紫金山古墳・2003年)

子供の頃に考古学者になりたくて、現場に参加することは?

私が高校生の時には夏休みなどに高等学校の先生が発掘に連れて行ってくれ、先生がリーダー、生徒が発掘者で関わったこともあります。放課後に出土したものを洗って整理、調査したこともあります。
最近は怪我や事故のリスクがあるので、高校生で発掘作業に参加するのは難しいでしょう。やはり大学生になってから現場に関わることができます。
それまでは、市町村の博物館に行ったり、もし地域で遺跡の発見があれば発掘の説明会に参加したり、夏休みに開催されるイベントに参加することができます。

渡部:インターネットで「小中高生 考古学 発掘」などを入れると発掘キャンプや講座などが出てきます!興味がある子供たちはお父さん、お母さんと一緒に調べて見てください!

将来考古学者になりたかったら

ぜひ興味がある人たちはトライしてください。私はコツコツ悩みながらも勉強を続けられる人とはぜひ一緒に仕事がしたいです。
考古学は他に比べて自分の興味ができる仕事だと思います。
次の人材を育てながらも自分のプロジェクトをすることを大事にしています。

研究者あるあるネタとは何ですか??

学生の頃、レストランでチャーハンや天津飯を食べる時に、それを墓に見立てて掘っていく(食べていく)ことをしていました。お墓の中身や形状を分析しながら慎重にスプーンを入れていくのを周りから変な目で見られました。
(先輩の鏃(やじり)の研究者の中には串焼き屋さんで何時代のどの種類の鏃に似ているなどと言いながら種類ごとに串を分類している人がいました。。)

クイズ
考古学では墓はどのように掘るのか?
1番と2番のどちらだと思いますか?
(数字は掘る順番です)

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私も記事を書き終わった後にチャーハンを食べに行ってチャー発掘をして見ました!(上がその画像です)
みなさんも次にチャーハン、天津飯を食べる時にぜひご飯を発掘して見てください!

(答え:考古学では対角線状に発掘をします。なので正解は一番です!)


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考古学を学んだら、どこで仕事をするようになるの?

私のような大学教授などの大学にいる考古学者の数は多くないんです。博物館で働く人たち、高等学校の先生になる他、都道府県や市町村の自治体で文化財・遺跡発掘の保護、その研究、地域振興に関わる人もたくさんいます。そのような人たちが小中高生向けのイベントを開催したりしています。
このような自治体で考古学の知識や経験を生かして仕事をしている人は実際何人いると思いますか?

考え終わるまでスクロールしないでネ!!

(答え:5−6000人)

モットー

関心を広めることを一番大事にしています。2000年に京都大学に入ってもうすぐ20年です。自分が今持っていること以上に学んで新しい発見をし続けるために常にアンテナを張り続けます。

吉井先生についてもっと詳しく知りたい人はこちら

京都大学大学院文学研究科・文学部のホームページはこちら
京都大学大学院文学研究科・文学部・歴史文化学の考古学専修のホームページはこちら
吉井先生のホームページはこちら
(吉井先生が一部執筆)百済と日本の関係をまとめた本へのウェブサイトこちら

学んだこと

お話を伺う前は考古学を学んで就職したいなら、研究者か学校の先生になるしかないと思っていました。しかし、考古学の知識を利用していろいろな仕事ができると知ってびっくりしました!吉井先生は「関心を広めることを一番大事にしています。」と言っていました。(私も日々自分を見て一つづつ新しい発見と、ライターとしてのスキルを改善します!

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京都大学の歴史についても教えていただきました! 左:吉井先生 右:渡部みどり(筆者))

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