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もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(西洋画編)

「神は細部に宿る」といいますが、それは絵画も同じ。
よく見なければ分からない、でも見逃したらもったいない!!
そんな細かすぎる名画の魅力を見ていきましょう。

600年前とは思えない!超絶技巧

まず紹介するのは、1434年、つまり約600年前に描かれたこの作品です。

ヤン・ファン・エイク『アルノルフィーニ夫妻の肖像』
婚姻の儀式を描いています。


様々な視覚的刺激に晒されている現代人からすれば、なんてことのない絵に見えるでしょう。

でもよく見てみてください。その緻密さ、特に質感表現は今見ても驚異的です。

まずは、ぱっと目を引く女性の衣服。ドレスのひだの重厚さとか超絶リアルですよね!袖や襟元の毛皮もフワッフワで思わず触ってしまいそう。頭のレースは、フリルのくしゅくしゅとした手触りまで伝わってきます。

目立つところだけではありません。細かいところもこだわっています。たとえば…

窓の木枠や外壁(画面左端)


床材の模様(画面左下が分かりやすいです)


複雑な形の天井のシャンデリア


などなど、写真のように(いや写真以上に)リアルです!
画面の隅から隅まで雑なところが一切ありません。その細かさには画家の執念まで感じられます。

極めつけは、部屋の後ろにある鏡(真ん中より少し上のところです)。


部屋全体の鏡像が小さい鏡の中に描き込まれています。
しかもただの鏡ではありません。よく見ると、鏡像が湾曲しています。そう、凸面鏡なのです。この微妙な歪みの表現がすごい!

ここに写るのは、夫妻のほか、戸口に立つ2人の人物です(1人は作者自身だと言われています)。つまり、鑑賞者はこの2人と同じような位置で夫妻を見ていることになり、自分の目で直接現場を目撃しているかのような感覚になります。画家のこだわりに脱帽です。

想像を超えた緻密さ

お次はこのダイナミックな作品です。

ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』


この作品は旧約聖書のバベルの塔のエピソード(下記)を題材にしています。

人間は天まで届く塔を建てようとした。神はその傲慢さを怒り、人間に罰を与えた。これまで1つだった言語をバラバラにして互いに通じないようにしたのである。このため現場は混乱し、塔の建設は中止となった。

描かれているのは建設途中の塔です(一説によれば、塔の高さは400メートル以上になるそう。東京タワーより高いですね!)。

この巨大な塔の中に、超細かい描写が隠れています。
たとえばこちら。


画面に白い点々が見えます。豆粒どころか塵くらいの大きさですが、なんと人間を表しています!信じられない小ささです。
この小さな人々があらゆる場所に登場し、その数なんと約1,400人になるそうです。

ただ細かいだけではありません。
この絵のすごいところは「実際にこの巨塔を作るとしたら、どうやって作るのか。」をしっかり考証しているところです。
絵を見ると塔の製作工程がよく分かります。

①建材の運搬
船で材料が運ばれてきます。船の描写もきっちりしてます。


②窯で煉瓦を焼く
塔の周囲に、煉瓦を作るための窯が設置されています。


③材料を引き上げる
クレーンが使用されています。当然電気はないので、滑車の中に人が入って動かしたそうです。


④煉瓦を積む
塔の上部。作業するための足場が組まれています。


赤い部分は煉瓦、白い部分は漆喰(アスファルト)です。粉が飛び散ってしまったようです。作業ミスの場面まであるのがリアルですね。


作っているところを本当に見てきたかのよう!舞台設定の細かさが尋常ではありません。
バベルの塔の物語が、伝説の域を超えて真に迫ってきます。

雄大な景色の中の細かすぎるこだわり

最後に紹介するのが、この雄大な風景画です。

ジョバンニ・アントニオ・カナレット『大運河のレガッタ』


ヴェネツィアの伝統行事であるレガッタ(ボートレース)を題材にしています。

作者のカナレットは、都市の風景画、特にヴェネツィアの風景画が大得意でした。
カナレットの描くヴェネツィアは、心象風景のように情緒たっぷりなのに、その場にいるかのような臨場感にあふれています。

さて、都市の雰囲気を上手く表すためには、建物の描写が超重要です。カナレットはこれがすごかった!

左手前部分の拡大図


レンガや石造りの質感や、漆喰のちょっと剥がれた感じまで、しっかり再現しています。
しかも柱や壁の細かい装飾までちゃんと描かれているんです。たとえば手前の宮殿には、柱の装飾や階段の獅子像が描かれています。
二次元の域を超え、精巧なミニチュアのような実在感です。さすがヴェネツィア絵画のプロフェッショナル!

今度はレガッタの様子を見てみましょう。

左中央部分の拡大図


ものすごい数の人、人、人!人口密度も尋常じゃありません。見てるだけで目がチカチカしてきます。
実際、レガッタのときには何千人もの見物客が訪れるそうです。現場の熱気と喧騒が伝わってきますね。

この細かさは、画面の奥の奥まで徹底されています。

運河のいちばん奥を拡大したもの


建物の窓、橋の装飾、ボート、人などなど、無数の細かい線がどこまでも引かれています。どの描写も緻密で整然としていて、まるで機械で描いているかのようです。

広々とした風景の中に、こうした細かすぎるこだわりが隠れているのが魅力です。

隅から隅まで要チェック

さら〜っと見てるとついつい見逃しがちな細かい描写。
目を皿のようにして見れば、絵画鑑賞が面白くなること間違いなしです。

※日本画編もぜひご覧ください。

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