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「リイズ」太宰治

物語は、画家志望の杉野くんと、作家自身と、杉野くんの母で成り立っている。そこに現れたモデルの女性。

杉野くんにとっての、そして杉野くんのお母さんにとってのリイズ。

最後に笑いながら言うセリフがよい。

「絵描きなんて、なんだって、一生気長な仕事ですから」。

人生、気長なもの。なかなか答えは見つからない。
それを、ああでもない、こうでもないといってるけど。

お母さんと息子・杉野くんの違いは大きい。

お母さんの人への愛情や優しさ。

この一枚で命運が決まるなんて。
1つの展覧会に、いろいろ考えるなんて。

画家なんて、なんとも気の長い、完成までは程遠い人生なものだ。

だからこそ、絵を描くことよりも大切なことなあるだろうな、と考えた次第。

気長で済むことと、気長では済まないこともある。
杉野くんの人生と、モデルの人生とはあまりに違う。
そして人間としての幅広さや、出会うご縁も、だいぶ違う。
それもまた人生。

その人が輝く場所がある。それに恵まれなかったら、なんとも不運なことだ。
モデルは、あのままモデル事務所にいれば、一番災難を見る存在かもしれないが、お母さんに見染められて、女中としての働きは、他に類をみない輝きを持つだろう。
居場所が違えば、輝きもするし、失うこともあるのは怖いことだ。

そして、杉野くんは、遠い先に満足した絵が描けるのだろうか。
一回も入選すらせず、母親に甘えてばかりのボンボン息子でも、人の評価を気にせず、「ルノアールと戦う」なんて、素朴で呑気なところが、作家自身とも相性がよかったのだろう。
それはそれで、杉野くんの居場所かもしれない。
太宰治は、それを客観視して物語る。

さて。
出張先で、研ぎ澄まされた集中力で制作できることも。
家に帰ればまた全く集中できないことも。それら全てが人生そのものだ。

長い先を見て、どんと構えるところと、今この瞬間を大切にする心を同時に持ちたい。

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