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息子は修復士
息子は寝る前に、僕のアトリエで15分だけ粘土工作をやるのが日課になっている。
僕はちょうど、絵の修復?といえば大袈裟だが、マスキングテープのせいで破損した画面の色彩を直していた。
粘土をやる息子に、絵画における修復の仕事について話をしてみた。
以前、シャガールのシルクスクリーンの修復を手がけたことがあり、周りの色を吟味して、どの色ならば欠けた部分にぴったり合うか、調合しながら描いていく、、ということを、わかりやすく話した。
そして、「直すことは生き返らせることだよ」と締めくくった。今はわからなくてもいい。
息子は粘土でロケットを作りながら、ふーんと聞いていた。
そして「パパ、色を作るやり方を忘れちゃったらどうするの?」と質問した。
僕「何回もやって思い出すんだよ」
息子「それでも忘れちゃったら?」
僕「うーん。そしたら、全く新しい色を作って、試してみるかな」
息子は、へぇー、と首を傾げた。そしてちょうど目の前に置いていた、僕の作ったクジラの作品を手に取った。
そのクジラの尻尾は片方が欠けていた。もろい紙粘土が崩れて、そのまま放置していたのだ。息子は、持ってた紙粘土を、欠けた尻尾に付けたして、コネコネ直していた。
そして「パパ、僕も直したよ!」と得意げに見せてくれた。
僕は感動した。よく理解してる。僕が話したのは絵画の話だったが、息子は目の前のクジラを、自分の表現で直したのだ。単純な話かもしれないが、本質を理解した。クジラは再び泳げるようになった。
「ありがとう!パパは、この尻尾をどうしようかと悩んでたんだ」
「やってみればいいんだよー。わからなかったら、図鑑を見ればいいじゃん」
「そうかー。なるほど。すごいね」
息子は満足そうにアトリエを出て、寝室に横になって、すぐに寝た。
こういうやりとりが大切だと深く思えるのも、緑内障と診断されたからかもしれない。
今日も教室で、闘病中の愛犬を思う話を、静かに聞いていた。悲しみと不安がしみじみと理解できる。
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嵐が来ると、木々はより深く根をおろします。
この根は伸び続けている。とても穏やかに、確実に。そして、この瞬間に瞬く、悲しみや喜びを感じ取っている。
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