何者でもない自分
何度も嗅いだ事のある臭いだ。いい香り、とはお世辞にも言えない。それは一種の「不潔さ」に関係する臭いなのかもしれないが、俺はその臭いが嫌いではない。
アジアの国や、経済的後進国と呼ばれるような国を回ると、大抵覚える臭いだ。湿っぽい中に、食べ物や、土埃や、人々の体臭が混ざった、複雑な臭い。
俺は今「チェンマイ」にいる。タイは初だ。乗り換えにはバンコクの空港を利用することは多いが、実は入国した事がなかった。
お隣のベトナムとカンボジアには行った事があるので、やはり似てる部分は多い。いや、こんな事を言うと現地の人に怒られるだろうな。千葉県と埼玉県ですらプライドや差別化をしているのだ。国家単位だと、それは激しいものもある。実際、ガイドさんに聞いたが、チェンマイはもともと、現在のタイの首都のバンコクとは別の国であり、南のバンコクよりももっと古く、歴史のある街なのだと、誇らしげに話していた。
しかし、色んな国へ行って、こうして現地人のガイドさんの話を聞くと、いつも自身の国や街への愛とプライドを感じると共に、根深い歴史的背景によるものなのだろう、他への優越感や、侮蔑感のようなものが入り混じる。
日本は幸いというか、立地上、アメリカに敗戦、占領されるまで、他国からの侵略や蹂躙はない国だから、その辺りの感覚はわからない。
チェンマイは今述べた通りの「古都」だ。とても歴史が深い。街中に寺院があり、車やバイクや、トゥクトゥクなどが排気ガスをまき散らかしながら、故さと新しさが共存しているが、例えばホーチミン・シティのような気忙しさはなく、どこかのんびりとしたムードが蔓延している。おそらく、バンコクだと、もっと都会的な時間の流れになるのだろう。
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