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「本物を知る」ってことについて

突然だが、俺は「奥田民生」を、まあまあ好きだ。

唐突ですまん。とにかく俺は「奥田民生」を嫌いじゃない。ユニコーン時代の曲は、中高生の頃、色んなバンドの曲を練習したが、ユニコーンの曲もけっこうコピーした。まあ、実際は特に好んで聴きはしないが、評価はそこそこ高い。

俺の中で「奥田民生」は、そんくらいの(?)ポジションであり、日本の音楽シーンの中では、

「まあ、いいんじゃない?個性あるし、実はドラムも上手よな」

と、別に上から目線するつもりはないのに、なぜか評すると上から目線“風”になってしまうというアレだ。そう、アレだ。

いや、ちょっと待ってくれ。先に言っておくが、このnoteで奥田民生さんを論じたり、ましてディスったりとか、そういうつもりは微塵もないことを強調しておく。

で、俺が奥田民生に特に思い入れがないとはいえ、奥田民生ファンの人からあらぬ誤解を受けて、ましてそれでかく言う俺自身がディスられるなんてことになってはたまらんからだ。

いや、何でいきなり「奥田民生?」となってると思うけど、今、この文章を書いてる、まさに今、京都の居酒屋で“おでん”食いながらちびちびやってるのだが、店の有線放送で、ちょいと一昔前のJ-POPが流れていて、そこで奥田民生の曲が流れている。

それでふと、昔のことを思い出し、コンニャクにつけすぎたカラシに鼻をつーんとさせながら、これを書いている。さらに酒の力も借りてるというしょーもなさだ。

ちなみに、これを書いてる間に有線放送は奥田民生から槇原敬之の曲に変わった。(あの人そういえばシャブでパクられて以来どうなったんだろ?)。

菜の花のおでんって、珍しいね。

ついでにもう一つエクスキューズをしておくと、いつも「ちょっといい話」をnoteで書くのだが、今日の話はかなり「役に立たない」話であることを先に伝えておこう。しかし、この世は「役立たない」ことが、結果的に人間の成長につながるという不思議があるので、つまりはこの文章は受け取り方によっては役に立つのかも…?

さて、俺は20代の頃、とにかく色んな仕事をした。バイトや契約社員も含め、だけど、履歴書に書ききれないくらいの職種、環境を体験した。

これだけ書くと、

「へえ、仕事は続かない、すぐ辞めちゃうタイプなんですね?」

と思うかもしれないが、実は経験した8割方の仕事は、そこそこ続けて、業務を一通り覚え、なんならバイトポジションで最高位になってから辞める、という感じだ。自慢じゃないが、俺は「やる」と決めたら「やる」タイプだ。

で、奥田民生を語りたいわけじゃなくて、そんな数々の仕事の、とある面接を思いだした。

それは某、大手クレジットカード会社の「データ入力」の仕事だった。ちなみにその仕事は俺の中でも「長続きしなかったランキング3位」の職場だった。2ヶ月で辞めた…。ちなみに1位は食品加工の工場、1日でアウト(リーダーとケンカした)。2位はテレアポの1ヶ月半…。

面接は7、8人の合同面接だった。だから3時間くらいの拘束時間があった。

ただ今思えば、

(誰でも入れたんじゃね?)

って思うんだけど、まあ、一応面接だからね、しっかりやるわけさー。
(沖縄風に言ってみる。NHK朝ドラが沖縄が舞台なんだよな)

面接の中で、謎の一人一人の『自己アピールタイム』があった。業務内容とはまるで関係ないプレゼンテーションだ。データ入力の仕事に、一体なにゆえそんなプレゼン能力が必要になるのか、今考えてもさっぱりわからない…。

(はぁ?アホじゃん?)

と、ドン引きだったがルールなので仕方ない…。まあ、

(テキトーに言っとけばいいか)

と俺は思ってたんだけど、いざ始まってみると、けっこいみんな「ガチ」な感じで驚いた。

(え?そんな本気でやるの?誰もそんな趣味とか家族構成とか興味ないんだけど?てゆーかおまいら真面目すぎだろ?)

とか不謹慎な思いつつ、俺の順番は最後から二人目だったので、それまではとにかくまったく興味のない人たちの、さして面白味の感じないエピソードに耳を傾けるフリをして、メンタルトレーニングだと思いながら、時が過ぎ去るのを待つしかなかった。

おや。店の有線放送が今、“リンドバーグ”になった。
なつい(懐かしいの略)…。「今すぐキスミー♪」。キスミーて…。令和四年には「死語」だと思う。

話を戻す。酔っ払って、スマホで書いてると、いつもより脱線しやすい。

「音楽が好きなんです」

同世代くらいの男の番になったのだが、その男は真っ先にそう言った。

メガネをかけた地味な風貌だが、そこそこファッションはオシャレな感じ。終始笑顔で、見るからに絶対「いい奴!」な雰囲気な男だった。多分、不特定多数の女にはまったくモテないのに、なんか知らんけどブスから中堅どころな女とは、常に付き合えてしまう、というタイプだと瞬時に俺は分析した。彼女いない歴、が常に少ない「いいやつ」だ。

(すまん、酔っ払ってこれを書いてるので、やや口が悪い)

音楽が好き……。俺はミュージシャンなので、そういうキーワードにはどうしても反応してしまう。

(お、コイツ、音楽好きなんか?)

と、それまでは右耳から左耳へと見事にスルーさせながらも、ちゃっかり周りに合わせて笑顔で拍手なんかしちゃいつつ、数秒後にはすべてを忘却してたのだか、「音楽ファン」と言われると、流石に聞く耳を持つわけだ。

同世代だし、面白い話を聞けたら、面接の後に話しかけたり、一緒の職場になったら楽しいかも、なんてことまで瞬時に考えてしまった。

「僕〜、音楽なしでは、生きていけないんですよ」

と、男は言う。

(ほうほう。そこまで言うとは、かなり好きなんだな)

「ノーミュージック、ノーライフってタワレコで言ってますけど、ほんとにそんな感じで〜」

(うむ。我輩も同様である。音楽のない人生など考えられん!)

なぜかデーモン小暮閣下のように、上から目線でその男を眺める俺がいた。

「音楽を聴いてない時間がないってくらいで、いつもウォークマン(今は言わんな…)を持って出掛けます」

彼はポケットからポータブルCDプレーヤーとくしゃくしゃに丸く絡み合ったイヤホンを取り出す。

(おお!俺もだぜブラザー!俺もいつも音楽が人生のど真ん中にあったんだ!)

俺の期待が増す。その頃、移動中は音楽より読書の方が多かったとは言え、半生ずっと音楽漬けだったからよくわかる!

「音楽がなかったら、もう死んじゃうかってくらい、僕は音楽ファンを通り越して、音楽オタクなんですよね」

と、照れくさそうに笑うメガネ男に、

(そうそう!そうだぜ!オタクになっちゃうんだよな〜)

と、共感マックス!俺はその場で立ち上がり、彼をハグしたくなった欲求を堪えた。

「ちなみに〜、一番好きな音楽は〜」

(お?どんなの聴くんだ?ここまでオタクだと、ジャズ?クラシックって雰囲気じゃないよなぁ〜。ロックなら60年代か?まさかの70年際ディスコミュージックとか?)

俺の期待値が高まる中、頭は超高速回転で、そんなことを考える。しかし、

「奥田民生です!」

と、彼はハキハキとした口調で言った。それまで、どこかモゴモゴした口調で、正直聞き取りづらかったのだが、そこは超ハッキリと聞こえた。

(………え?)

俺は耳を疑った。自分に何が起きたのか分からなかった。

「奥田民生が好きで〜、もう、いつも聴いてるんですよね〜」

(…え?…え?え?)

「音楽なしでは生きていけないです。だから、仕事の合間に、音楽の話とかできる友達ができるといいなぁなんて思ってます。よろしくお願いします!」

彼のプレゼンは終わった。

俺はあまりの衝撃に、そのあと自分が何を喋ったのか全然覚えてない。

俺の中で、色んな常識がぶっ壊された日となった。(ちなみに面接は受かった。彼も合格してたが、配属が違ったので、絡むことはなかった…)

それまで俺の中で、

「音楽なしで生きていけない!」

ほどのオタクって、ミュージシャンの中で生きて来たからたくさんいたんだけど、それはそれはもう相当なもんで、マニアックの“極み”な連中だった。オタクを越して“変態レベル”だった。そんな奴らとずっと付き合って来たのだ。

だって、そいつらとの話ときたら、

「スティーリー・ダンのエイジアで、ラリー・カールトンがさぁ…」
「ロン・カーターのリズム感はどうもいただけないね…」
「マービン・ゲイのライブのディビッド・Tのプレイは…」
「ジェイムス・ギャドソンのハイ・ハットのグルーヴがさぁ」

などなど、知らない人にはまるで「記号」にしか聞こえないような会話だけで、一晩中酒を飲みながら語れるのだ!

俺の中で、「音楽なしで生きていけない男」って、そういう奴だと思っていた…。

それが、まさかの「奥田民生」…!!

そもそも“奥田民生”は個人名であって、「音楽」という『ジャンル』ではないはずのに、一番好きな“音楽”は奥田民生て…!

俺はその時、彼にこう言いたかった。落ち着いて、ゆったりとした気分で、こう言いたかった。

「なあ…、君はさ、これからの人生、音楽がなくても生きていけるぜ?」

君は音楽が好き、なんじゃないんだ。奥田民生が好きなんだ。どこかで頭の配線が間違ってしまっているんだ。だから大丈夫だよ。君の人生から音楽がなくなっても、君のウォークマンが壊れても、きっと君は違う喜びを見つけられるよ。

………

ふー、おでん屋を出て、ホテルに戻って続きを書く。
ちなみに最後にかかっていた有線BGMは「COMPLEX」だった…。

で、最初に書いたけど、奥田民生をディスってるわけじゃない。ただ、なんというか、もしも本当に「音楽」が好きだったら、やっぱフェイバリットアーティストに「奥田民生」は出ないような気がするんだが、これを読んだあなたは思う?

だってね、例えば、もしもだよ。

「僕は食通で、本当に美味しいものを食べることがなにより好きで、人生はうまいもんを食べることにあるんです!」

みたいな人がいるとしてさ、そんな人が、

「一番好きなものは“なか卯”の親子丼です!」

とか言ってたらどう?

「いやいやいやいや……、お前は絶対に。世界の美味しい食べ物をまだまだ知らん!」

と言いたくなるだろう?それと同じだ。

確かに、世界中のグルメを食べ尽くし、山海珍味を味わい尽くした上での、あえての、

「結論!世界最強グルメは、なか卯の親子丼!」

ならまだわかるが、そんな人いるだろうか…。

ちなみに、なか卯の親子丼は美味しい。それは間違いない。だからなか卯ディスリではない。

それと同じで、「奥田民生の音楽はカッコいい」。素晴らしいアーティストだ。しかし、

「音楽なしで生きていけない」

とまで豪語する男が選ぶ音楽とは思えなかった…。そして彼が世界中の音楽を知り尽くした上での、ぐるっと一周回って、

「最終結論、やっぱ一番最高な音楽は奥田民生だ!」

ってわけではないと思う。うん、確実にそう思う。今思うと、

(お前、そもそも洋楽とか聴いたことないんじゃね?)

って感じの、とにかく「いいヤツ」そうなおにーちゃんだったんだ。

で、こんな長ったらしく書いておいて何を伝えたいのかと言うと、別に何も言いたいことなんてない…。伝えたいことなんてない…。ただ、心情の吐露である。ちなみにしつこいが、俺は誰もディスりたくもない。奥田民生もなか卯も。

でもね、「本物」ってあるんじゃないかな?ってことを、投げかけたい…。酒の勢いを借りてな…。

ほら、どんなジャンルにもさ、そういうのってあるじゃん?何も知らないけど、自分の知ってる小さな世界に夢中になって「あたしは〇〇で幸せです!」みたいな盲信というか、迷妄というか…。

とにかく、奥田民生の音楽を耳にして、15年くらい前のことを思い出し、こんな文章を書いてしまった。おかげで居酒屋に居座り、いつもより多めに飲んでしまった…。

駄文にお付き合いいだきありがとう。今日は無料記事にします。

ちなみに今日は京都で、相国寺に行き、

夕方に、京都在住の友人の「上さま」に会い、動画撮影した。

アクリル板越しの上さま。

写真は、終わった後にカフェでのひと時。衝立があって話しづらかったわ…。(動画はYoutubeで近日中に内容はアップするよ。「読書」とか「本」がテーマの話をした)

で、なんで京都にいたかというと、昨日は恒例の『歩く瞑想 in 鞍馬山』でした。すばらしい1日だった。

好きです、京都。しかし、まさかの京都最終日に、奥田民生でしめくくるとは思わなんだな…(笑)。

サポートという「応援」。共感したり、感動したり、気づきを得たりした気持ちを、ぜひ応援へ!このサポートで、ケンスケの新たな活動へと繋げてまいります。よろしくお願いします。