見出し画像

クリエーター(トレーダー)様と遊ぶ企画 わらしべ長者・第九章 “吉備津”

私は宮司さんの話から長崎へ行く事になった。新幹線で博多まで行き、そこで乗り換えて長崎駅へ。勿論貧乏な私は大規模な移動なんてしたことはない、せいぜい一つ県を跨ぐ程度で、しかも職場と家との往復くらいだ。

“長崎平和公園で待ってます。着いたら連絡を”

先方からの連絡で私は急いだ。長崎と言えば、先の大戦で原爆を撃ち込まれた地…というイメージがあるが、私にも長崎と言えば…という先入観はあったりする。
公園に着いた時は夕方近くになっていて、先方に着いた事をすぐに連絡したところ、10分たらずですぐに会うことができた。私は先方にひたすら謝った。

『いえいえ…とんでもない!ようこそ長崎へ。話は私の店で聞きますよ。』

私は先方の車に乗りながら刀の事を話した。中年の男性…店の主人は真剣に私の話を聞いてくれて、時には神妙な表情になり、話を聞いてくれた。店に着き暖簾をかきわけて店内に入ると女の子が店番をしている。

『あ、お父さん、おかえりー!その人だね、さっき話していた女性って。初めまして…私はここの店の主人の娘で“鹿村”って言います。宜しくね!』

鹿村様、寄稿感謝です。

落ち着いた感じで私よりも年上のようなお姉さんって雰囲気だ。主人は間髪入れずに彼女に持ってくるよう指示した。

『コレだけど…』

と、彼女は刀を差し出した途端、刀がカタカタと震え出した…勿論私が震えているわけではない。彼女が持っている刀も同時に震え出した。それに反応したのか、鬼の涙と言われる首飾りも突然光出した。

『やはりな…この刀達、やっと会えたんじゃな。長い年月でこの刀は別れさせられ、人から人へ渡って行った訳じゃな。手放さないでよかった…鬼も喜んでいるな。』
『本当に良かったね、刀もやっと会えたんだ…なんか風流でロマンチックだよね…』

私も嬉しかったし、やっと会えたんだ…とふと涙腺が緩んでしまった。

『さて、お客さん…お願いがあるんだが、この刀…なかなかここを離れたがらなくてな、売っても何故かここに戻ってきてしまう。神社とかに奉納しても何日か経つといつの間にここに戻ってくる…この刀を引き取ってくれないか?お金はいらんし、そうだなぁ…貴女の持っている物と交換でどうだろう、その首飾り…と言いたいところですが、鬼の涙は持ち主を選ぶらしいので私達と交換するのは難しいだろう』

私が持っている物と言えば…石と吉備団子(兵糧丸)しかない。

『だったらこれだよ!吉備団子!え?兵糧丸って言うの?どっちでもいいや。お父さん、団子と交換しようよ。』
『まったくお前は食い意地が張ってるよな…でもこれはお土産で売ってる吉備団子とは少し違うな。うーん…わかった!吉備団子と交換しましょう。』

…刀が増えてしまった。でも揃った刀は今までとは違い不思議な気を纏っている。

『交渉成立だね!譲渡届を書くから明日警察に行くよ!あ、貴女が持ってる刀は私に預けてくれる?』

また警察に行くのか…悪い事していなくても警察に行くのは勘弁して欲しいな。しかもまた一ヶ月も?

『うちの警察はそんなにかからないし、譲渡届を出すだけだからすぐ終わるよ。岡山では一ヶ月もかかったの?それは初期登録がなかったからだよ。ないまま持ち歩くと捕まっちゃうよ!』

私は彼女に刀を預けた。慌てていてホテルを予約するのを忘れていたけど主人が駅前のホテルをとっておいてくれたので良かった。私はホテルに向かった…翌朝、深い眠りから強引に目覚めさせる電話がけたたましく鳴った。

“お休みのところ申し訳ありません、フロントです…鹿村様と仰る方が貴女を迎えにきたとロビーでお待ちです。”

フロントから電話が入った。私は急いでロビーに向かった。

『お早う御座います、ゆっくりできましたか?さて昨日も言いましたが、長崎県警に行きますよ。』

私は身支度を整えて彼女の車に乗り込んだ。県警はそんなに遠くなくすぐに着いた。岡山と違い、県警は慌ただしく賑やかで奥で怒鳴り声が聞こえたりする。彼女はそんな中、行きたい部署がわかっているらしくあっという間に着いた。

『お早う御座います、先日話した者です。刀剣類譲渡の件で伺いました。』
『あ、鹿村さん!お早う御座います。その刀を譲渡なさるんですね?』

鹿村さんはテキパキとカウンターの署員の方と話している。

『はい、受理いたしました。ではこの刀の所有権につきましては鹿村さんは放棄し、こちらの方に刀に関する全ての権利・責任を譲渡する…って事で宜しいんですね?』

はい!と私は頷いた。

『その刀達、大事にしてね、決して分けたりしないでよね。折角また会えたんだから。あ、そうだ!これは私達からのプレゼント!』

と、彼女は一枚の封筒を渡してきた。中には幾らかのお金と航空券が入っていた。しかもお金は一万円がびっしり。私はこんなに受け取れないよ!と断ったが彼女は…

『いいっていいって!刀が増えて大変だろうけど、刀達を引き合わせてくれたんだからそのお礼。チケットは特に行く宛もないんでしょ?北海道なんてどう?歴史的にたくさんあるし、何かわかるかもよ。あ、空港まで送るよ。』

世の中にはここまで親切にしてくる人なんていないと思っていたが、世の中捨てたもんじゃないな…と思った。
九州まで来ていよいよ北の大地・北海道へ!空港で鹿村さんはバイバイ!と手を振ってくれた。

『お客様…機内には刀剣類の持ち込みはできません、こちらで預かりの手続きをお願いいたします。』

空港でのカウンターでのやりとり…私は飛行機に乗った事がない。常識的に考えても想像がつくが。ガタガタ揺れて折れたりしないかな…心配性の私、発動。渋々刀を預けたのだった。

長崎で待っていたのは鹿村様でした。鹿村様のイラストを!寄稿感謝致します。

・吉備団子(兵糧丸)→銘刀吉備津の雌刀
・銘刀吉備津の雄刀

・月光石の原石

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?