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超能力④

ハワイという場所はとても開放的で観光に特化した地域でもあるので人類の坩堝と化しているが…日本人はかなり多い。

翌朝…日本では夜だが、私はビーチを歩いてみたくなり、隣で寝ている美月を起こそうとしたが、旅の疲れで起きなかったのでそっとしておいた。この部屋はシングルベッドが二つ、一応ツインルームなのだが、何故か美月は私のベッドの中で寝ている。でも私は嫌じゃなくて逆に嬉しかった。

部屋にはバスローブがあってそれを着て寝ていたのだが、バスローブの紐は解けていて私の裸…肌けている。下着は着けないもんだよ、と美月は言っていたが、本音はこれか!美月のやつ…
私は隣で可愛らしい寝息を立てて寝ている美月にちょっとしたイタズラをした。

指先に溜まる念をそっと解き放ち、彼女が着ているローブの紐を解き、その紐をベッドカバーにスルスル…と結びつけた。つまり美月が起きた時にローブが脱げるようにしたのだ。
ワイキキビーチの朝は日本にない清々しい空気があってそれが返って癒されたりする。潮風もそよそよと吹いていて朝の海、波も静かに波立つ。ビーチには外国のカップルとか多く、日本人の人を見かけたりもした。

『Hi!Is that lady alone now?』

二人の外国人男性が話しかけてきた。私は英語がわからないが、雰囲気的には理解した。

『No. I'm traveling with friends, so I'm not alone.』

確か…こんな感じだったと思う。ぎこちない英語で答えて、その場を後にしようとしたのだが、彼らはしつこく言い寄ってきたので…

ザザッ…ズン…!

と、落とし穴に落としてあげた。急にできた穴に驚いた彼ら…実際はそんなに深くないはずので自力で脱出できるはずだ。何処にでもいるんだな、ナンパって。

さて朝の散歩を満喫した私。ルームキーでガチャ…と開けると美月が少し怒った様子でベッドの端に座っていた。

『おはよう、美月…』
『“おはよう、美月”じゃないよ!一人で何処行ってたの?』
『あ、ごめんごめん!ビーチに行ってた。目が覚めちゃってさ、美月も起こしたんだけど、寝ていたから無理して起こさなかったんだよ。』

彼女はプンプン…と怒っていたのだが、怒りに我を忘れていたせいか肝心な事を忘れている。…と、いうか気がついていない。私は…惚けたフリをして美月に言った。

『きゃー!なんで私、裸なわけ?麻也ぁ!私の裸見たでしょ!』

美月は実にスタイルが良く、胸もあってどっちかというとDはありそう…そしてくびれがキュッとしててそれがいい。オシリはボンっとしていてモデルさん体型、ヘアは…ないんだと、じろじろ見ていると私の身体が見えない力でグイっと壁に押さえつけられたと同時にペンが何本か私に向かって飛んできた。うち一本は私の頭に直撃!美月は鬼の形相で、

『前の仕返しね!ペンって意外と痛いんだよ。私の裸をタダで見て…生きて帰れると思わないでね…麻也!』

は、はい…申し訳ありません!二度と致しません!美月の顔がまるで般若の面をつけているようで私には角が見えた。
ご立腹の美月をなんとか宥めて朝食会場に向かった。ホテルの朝はビュッフェスタイルでハワイならではの食材でいっぱい!

ヒルトンだけあって朝食にも一切妥協しない!


『美月ー!ごめんてば!』
私はひたすら謝ったのだが美月は黙々と食べているがさっきよりかは機嫌が良くなったようだった。
ハワイ2日目はハワイの観光地巡りだ。マノアの滝のハイキングをしてイオラニ宮殿…を回る予定だ。
ホテルからバスに乗り、20分くらいの場所に滝はある。
水飛沫が舞い、滝の音が私の心を落ち着かせる。神秘の滝って感じ。

マノアの滝。行った時には現地の方が演奏していた。

滝を出て近くのレストランで昼食…美月はまだ怒っていたが、怒りのゲージは下がりつつある。
私は気を取り直して美月と沢山写真を撮った。“二人で写りたいから写真を撮ってください”というと周りの人は快く引き受けてくれた。

さて私達、御一行はバスに揺られ…イオラニ宮殿の門を潜った。なんでもここはアメリカに統合される前は一つの王国を築いていたのだそうで、カメハメハ大王が最初に即位したのだそうだ。

イオラニ宮殿。ガイド依頼するには予約がいるみたい。
カメハメハ大王像。先入観で太っていると見るまで思ってました。

現地のガイドさんが宮殿内を案内してくれて宮殿の壮大さ、綺麗さに魅入っていた。
宮殿前で私達がポツンといると美月の手をグイッと引っ張る人がいた。
朝、私にナンパしてきた男二人組だ。美月は訳もわからず必死に抵抗しているが外国の男性は力が強い。敵うはずもなかった。

『(英語で)朝会ったお嬢さんじゃん!また会ったね。この子がお友達かい?結構可愛いじゃん!この後俺たちとドライブしようぜ!』

美月は怯えているし手を掴まれているから“力”が使えない。どうしよう…

『彼女さ、一緒に出かけようよ。』

と、男は美月の手をグイっと引っ張った。必死に抵抗する美月…その瞬間、私の中でブチっと切れる音がしたように感じた。私の形相に一瞬怯んだその男は美月を掴む手を緩めた…その瞬間、男の身体がフワっと浮いたと同時に床に勢いよく落ちてきた。床に這いつくばっていてまるで見えない大きな物に押さえつけられいるようだ。ミシミシと男の身体が軋む…その時、頭にコツンとペンが当たった感触で私は我に返った。男は近くにいた警備員に取り押さえられていたし、もう一人の男は慌てて逃げようとしたが別の警備員さんに捕まっていた。

『美月!大丈夫?怪我はない?』『うん、私は平気だよ。麻也!有難う!また助けられちゃったね。もう怖かったんだから。』

彼女は私に抱きついてわんわん泣いている。私は彼女をギュッと強く抱きしめた。
ホテルに着いた時私達の部屋に現地警察の方が話を聞きにきたのだが、なんでも彼らは観光客に巧みな言葉で接近して誘拐する手口の一味なのだそうだ。私は朝といい、宮殿での出来事といい、ぞっとした訳だ。

『え?朝一人で散歩していた時にナンパしてきた二人だったの?危なかったじゃん。麻也って意外と世間知らずなとこあるし、自分勝手な事をしてどうなるかわかったでしょ?』

夜、部屋のベッドで語り合う私達…私が下で美月が上…美月が私の肩を押さえつけている。

彼女の顔が段々と…

ワイキキビーチの夜は日本のビーチとは違い、雰囲気に酔いやすい…お互いうっとりしながら…

『でもね、そんな麻也だから私は好きなんだ…私がいないと麻也って何もできないからね。あ、そうだ…麻也…』

美月はだんだんと顔を近づけて私の唇にキスをした。

『麻也、飛行機の中で私にキスしたでしょ。あの時私…起きていたんだよ。麻也…大好き、愛してる…』

私は抵抗できなかった。いやわざとしなかった…美月の想いを私は身体全体で受け止めた…

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