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超能力⑤

時は戦国の世、山に囲まれたある場所、“旭丘(あさひがおか)”と“駿河台”…この国では女系一族でそれぞれ、女性君主が国を納めていた。ただこの二人は凄く仲が悪く、些細な事で戦をしていた。理由は…“絹”、山岳部に近い高地では絹糸の生産に必要なお蚕様が食べる桑の葉がよく育つ旭丘…一方でお蚕様が作る繭から絹糸を精製し絹糸を作る駿河台…同じ地域に住みながら利権争いで長年歪みあってきたのだ。

写真はイメージ。

まずは旭丘…女性城主、長篠の麻姫。 

『姫様!また駿河台の使いの者が…』
『何じゃと?またか…どうせ駿河台の月姫じゃろ?』
『はい…桑の葉をもっと安く寄越せ!、と申しております。』
『ならん!放っておけ!桑の葉がなければ駿河台は何もできん。こちらとてビタ一文ともまけはせん。これ以上圧をかけるなら戦じゃ…と申しておけ。旭丘の桑が欲しい大名はたくさんいる。使いの者は追い払え!門前払いじゃ。』

旭丘の桑は良質な葉でその辺の大地ではここまで良質な葉は育たない…だから他の大名はおろか、西の大大名徳川や東の石田に狙われているのだ。一方、隣の駿河台、安岡の月姫は…というと。

『月姫様!旭丘から使いの者が戻られました。』
『して…旭丘の姫は何と?』
『“馬ー鹿、馬ー鹿!お前なんかに我らの大事な桑の葉なんぞ一枚もやらん、寝言は寝てから言え”だそうです。』
『おのれぇ…あのお転婆姫め。妾を侮辱するとは絶対に許せん!皆の者戦の支度をせい!』

とある朝、駿河台は旭丘の奇襲を受けた。

『姫ぇ!月姫様!旭丘の連中が攻め込んでまいりました!』
『何じゃと?迎え討て!旭丘を懲らしめるのじゃ!』

奇襲を受けた駿河台は防戦一方で旭丘の軍勢は城の一歩手前まで来ていたのだが、駿河台は平地でありながらも周りが川に囲まれており、城の後ろは海と厄介な場所にあり容易に攻め込む事ができない水の要塞である。そんな中でじわじわと旭丘の軍勢を後退させている。

『このお転婆!よくも妾の事を愚弄したな!この罪、万死に値するぞ。』
『五月蝿いわ、このじゃじゃ馬娘め!無理難題好き放題言いおって!無理なものは無理…と申しておる。馬ー鹿、馬ー鹿!』
『お、おのれぇ…一度成らずも二度までも…母上にさえそんな事言われたことなかったのに!』

まるで今の子供の口喧嘩のようだ。両軍、ザザッと動き出そうとした瞬間、曇り切った隙間からパァァ…と光が漏れた。

“お待ちなさい!”

天から透き通る、清々しい女性の声が響いてきた。

“双方、刃を納めよ…今は争っている場合ではない!西から巨大な勢力がこの国に訪れようとしている。二人でその勢力に立ち向かっていく必要があるのだ…このままでは…”

光の隙間からスーッと女性が降りてきた。

『同じ事を言うが…二人で争っている場合ではない!西から脅威が迫っている…其方らは協力して脅威に立ち向かって行かねばならない。だが其方らの力では多勢に無勢…其方らにある力を授けよう…』

パアァ…と光の玉が二つ、私達のところにゆっくり、フワフワと落ちてくると私達の頭の上でパァァン!と弾けた。

『その力は其方らの心、つまり精神力で発動する…特別な力。その力は脅威に立ち向かえる武器となる。ただ心の乱れは力の乱れ…暴走を起こしてしまう。気をつけるのだ…』

と、女神様?らしき女性はスッと消えた…
西からの大きな勢力の脅威?立ち向かう力?妾も麻姫もよくわからないでいた…

『そうだな…確かにあのお方の言う通り、西の徳川と東の石田の勢力だけじゃない…何かこの世の者とは思えない不吉な厳ついものが妾達を脅かそとしている…女の勘じゃな。』
『そうじゃな…じゃじゃ馬の言う通り何かが来る…私達はその“何か”に立ち向かっていく必要があるな。』


モール内は様々なお店があるのだ。

『…貴女達の前世はその月姫と麻姫で彼女達の生まれ変わりが貴女達…つまり前世での繋がりが今の貴女達にはあるってこと。』

私、美月と私の友人、麻也は峯岡台のモール内にある占いのフロアで相性をみて貰っていたところ、占い師さんが私達の前世について話してくれた。来週には学校生活最大のイベント、修学旅行があるからで彼女と一緒に買い物をしにきた訳で占いはふとした興味で立ち寄っただけだったからだ。

『じゃあ、結局…彼女達はどうなったんですか?』

唐突に麻也が問いかける。

『うーん…私は口寄せとか青森の“イタコ”じゃないからわからないけど、今現実に貴女達が偶然にもまた巡り会えたのだからグッドなものかバッドなものかは…読めないなぁ。』

多分占い師さんの言う通りなんだと思う。どちらにしても私達は再び出会えた訳なのだから。私は来週の修学旅行である決意を持ってやるべき事がある…。

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