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クリエーター(トレーダー)様と遊ぶ企画 わらしべ長者・第三章 “鬼ヶ島”

“大変長らくお待たせ致しました、天候の回復を確認できた為、当駅から発車致します。お客様に大変ご迷惑おかけした事をお詫び致します。”

やっと発車か…長かったなぁ。エルちゃんのお爺ちゃんの言う通り、タダでは会えないよ、って事だろう。
新大阪を出た私は今までの事を振り返る…アパートが火事になりホームレスになってしまった事。旅の途中で色々な人に出会った事…私は兎に角これからの出会いにも期待をしていた。あっと言う間に岡山につき、降り、そこからフェリーを使い島に上陸する…期待と不安の中で私はフェリーに乗り込んだ。

私は鬼ヶ島と言われる女木島に着き、最初の一歩を踏んだ…特に何もなかったし、身体の不調もない。まして天気も雲一つない快晴。しかし鬼と会うにはどうしたら?鬼に縁のある場所を探すべく港の近くにある観光事務所を訪れた。すると…事務所の職員は、

『ここから車で1時間くらい行ったところに古びた神社があって境内の奥に小さい祠があります。その祠は昔桃太郎に成敗された鬼達を祀った祠なんですよ。』

と。やはりここであっていた!女木島こそ鬼ヶ島だったんだ!と確信した。私は観光客なので場所とかわからないからと言ったらその人が車を出してくれるという。私は甘える事にした。
道は舗装されていていたが段々進むと車一台通れるくらいの道になり神社の鳥居まで行くのがやっとだった。鳥居で降ろしてもらいその事務の方に感謝した。

本堂は廃れていたが、手入れはされていてまあ…綺麗だ。私は本堂の裏に周ると小さい祠を見つけた。見つけたのはいいがどうすれば良いんだろう…と思うと突然意識を失い倒れた。

『…い、…おーい、大丈夫?』

微かに女の子の声がする。私は意識を取り戻し、恐る恐る目を開けると雰囲気の変わった女の子がいる。

『目が覚めた?やっとアタイに会いに来てくれたな!待ちくたびれちゃったぜ!』

あれ?私は神社の奥の祠の前で倒れたんだっけ。同じ場所にいるのに雰囲気…というか空気が全然違う。ただ本堂には立派な家があり祠は難しい字で何か書いてある。ん?この人何処であったな…そうだ!私をここまで送ってくれた事務員さんを子供っぽくした感じであの人に似てる。彼女は私を抱き抱え、家の中に案内した。

『アタイはテオ!西園寺テオだ!』

テオの額には角が生えていて鬼っぽい感じ…いや、鬼そのものだった。

『いやー、悪かったな!足止めさせちゃってさ。だってお前、酒を持ってなかったし、アタシに会うなら手土産くらい持ってこないとな。お前が金兵衛のオッサンが言ってたオッサンの子孫だろ!金兵衛のオッサンには色々と世話になったからな。そしてお前!アタイが次の“とれーだー”だよ。ずっとオッサンの言いつけを守ってもうかなり待っちゃったよ…』

テオはなんでもこの集落をまとめている族長で集落を案内してくれたのだが、彼女が歩くたびに子供が“姉御ー、姉御ー!”と寄ってくる。そのうち私にも興味を持つ子もいて“わあ、ニンゲンだー!”とわらわらと寄ってくる。

『アタイはね、亡くなったオヤジの後を継いでこの集落を守ってるんだ。ただ鬼の世界も時代と共に変わる訳だから色々と稼がなきゃ生きていけない…だからあの事務所に勤務してる訳だ。他の鬼も素性を隠して出稼ぎとか行ってるんだぜ。働いて稼ぐ…という事を教えてくれたのも金兵衛のオッサンだった訳だ。』

鬼として生活するのも大変なんだな…昔と違い、世の中は変わっていく訳だから。

『さてお前…“びじねす”の話をしようか。お前は2つ物を持っているよな。一つは酒。これはお前が倒れている時に見つけた。鬼殺し!お前やるな、アタイ達鬼はこのお酒が特に好きなんだ。1日の疲れを癒す大事な品物だ。もう一つは…ほう、芭蕉の葉の団扇か。しかも伝説の品物か!よっしゃ、2つ共交換するかっ。』

と、ニコニコしながらテオは奥の宝物殿から一本の斧を持ってきた。

『これはな…斧じゃが、ただの斧じゃない。坂田金時と呼ばれた人物が道に迷った時にアタイ達が助けてその御礼として置いて行ったんだよ。お前も知ってるだろ?“金太郎の話”。これをやるよ!もう一つは…』

…と、首にかけていた首飾りを差し出した。

『これは一族で一番大事な物で“鬼の涙”と言われる物。これからのお前を導いてくれる。この世では採れない月光石を加工した物だ。アタイ達は金兵衛に色々と世話になった。その証だよ。水滴みたいに見えるから涙なんだけどアタイは決して泣かないからな!』

受け取った瞬間、私はまた意識を失った…

『もしもし!お客さん、大丈夫ですか?』

私は我に返った。私をここまで送ってくれた事務員さんがいる。

『お客さん、なかなか帰ってこないし心配して戻ってみたら何か風呂敷包とネックレスをぎゅっと握ったまま倒れてるし…びっくりしましたよ。』

あれ?テオは?あたりを見渡すと元の世界に戻ってる!寝てた?

『ふふっ…テオって誰です?ちなみに私も西園寺テオって言うんですけどね。』

え?確かテオは姿を変えて働いているって言ってたな。

『あ、そうそう。前に私の事見てた時があったでしょ?あの時見ていたビー玉も月光石の結晶でできていたの。まあ、今はただのガラス玉になってますけどね。鬼の涙は決して手放してはダメですよ?使命を全うしたら勝手に離れていきますけどね。』

事務員のテオは淡々と語った。

『その斧、そのままだと持ち歩けないでしょ?岡山に戻ったらまずは県警に行って携帯許可をもらった方が良いですよ。それまで風呂敷に包んで見せない方がいいです。』

私は港に戻って乗船券を買い、テオ…西園寺さんと別れた。別れ間際…

『貴女にとって安住の地を探すのが最高の幸せ?貴女にとってそれが一番だと言うなら私は人それぞれだから否定はしない。本当の幸せを願うならもっとやることはあるはず…ですよ。』

本当に大事なもの…か、なんだろう。私は複雑な気分になりながらも見送りしてくれてる西園寺テオさんの言った事を心に刻み、鬼ヶ島を後にした。彼女は私に手を振っていた…

キーパーソンとなった西園寺テオ様の協力、感謝致します。

・日本製芭蕉扇(団扇)→
坂田金時の斧&秘宝“鬼の涙”
・お酒 “銘酒鬼殺し(オーガキラー)”→西園寺テオ様に譲渡

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