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クリエーター(トレーダー)様と遊ぶ企画 わらしべ長者・第四章 “桃太郎”

西園寺テオさんと劇的な出会いをした後、私は彼女が言っていた事が腑に落ちずにいた。
私は家を失い、安住の地を求めて旅を始めた。しかし彼女は家を求める事が真の幸せではない。それ以上の価値があるものがある…それを探すべきだと私に言った。私にとって家よりも価値があるものはなんだろう…と思っていた。

さて色々考えているうちに岡山港に着いてしまった…きっとそれは旅を続けていれば見つける事ができるだろう、と思った。さて私はテオさんの言いつけを守り、岡山県警に向かった。

警察…何も悪いことしていないのに緊張するな、誰もが思う事に戸惑っていた。
受付の方に相談すると素っ気ない態度で3階に行け、と案内された。

『あの、何かお困りでしょうか?』

担当部署の女の方が愛想良く応対する。私は風呂敷に包まれた斧を女の方が座るカウンターの前にゴトっと置いた。

『これは立派な斧ですね…つまり、この斧の携帯許可を申請に来た訳ですね。携帯申請の目的は?こちらの書類に必要事項をお書き下さい。』

携帯する目的?うーん…なんだろう…とりあえず、適当に“売買目的の為の所持”とでも書いておくか。とサラサラっと書いて提出した。通らなかったら何処かに預ければいいかっ!って楽観的にも考えていた。ところが…

『わかりました、この書類を受理致します。とりあえずこの斧はこちらで一旦預かり、審査の上許可証を発行致しますが審査には時間がかかります…そうですね、大体申請を受け付けてから1〜2ヵ月くらいを要しますね。』

何と!そんなにかかるのか…つまりここにしばらくいなければならないって事になる。困ったな…ホテルを使うにもそんなにお金がないし…途方に暮れていたその時、首飾りがいきなり光出した!

署内の人は驚いていたが、カウンターの婦警さんキョトンとしていながらも凝視していた。私は首飾りを服で隠しそそくさとお願いしますね…と言いながら、逃げるように走り出した。

『待って!待ってくれないとしょっぴくからね!』

斧の受付をしてくれた婦警さんだ。

『貴女!その首飾り、何で光ってるの!良く見せなさいよ!』

流石婦警さんだけある…体力があるせいかすぐに私は追いつかれてしまった。

『はぁ…はぁ…全くてこずらせて!貴女、その首飾りよく見せてよ!』

と婦警さんは首飾りをグイっと引っ張るが首飾りは頑なに離れようとぜず、グイグイと私の首を締め付けてくる。私は息苦しさに倒れそうになってしまった。ハッと我に返った彼女は首飾りを持っていた手を離した。

…私は、いつの間にか寝ていたようで見覚えのない部屋で目が覚めた。
ここは何処だろう、部屋は女の子が住んでいるようではあるがこじんまりとしている。

『良かった…やっと気がついたみたいで。危なく私が殺人容疑で捕まるところだったよ!』

と、奥からあの婦警さんが出てきた。私は思わず、羽織っていた服で首飾りをサッと隠した。

『アハハ…もう引っ張ったりしないから。それに貴女が寝ている間、よく見せてもらったしね。その首飾り、“鬼の涙”じゃない?つまり私が首飾りに選ばれた、って事でしょ。鬼の涙は意志を持った宝石で持ち主を選び、出会いを予言するって言われた、伝説の宝石で確か月光石の結晶…だよね?』

驚いた…ごく普通の人、しかも婦警さんが鬼の涙の事を知ってるなんて。

『ところでさ…あの斧なんだけど多分申請が通ると思うよ。問題なければ、早いうちに登録証が発行されるはず。あの斧って結構古いはずなのに、綺麗だよね。誰から譲り受けたかはあえて聞かないけどね。』

私は正直迷った…鬼の西園寺テオさんの事を言うべきか。仮に言ったとしても相手にされるかどうか…でも彼女は鬼の涙の事を知っていた。思い切って話してみる事にした。

『鬼ヶ島に住む、鬼から貰った、“金太郎の斧”?マサカリだよね。鬼とも関わりがあったんだ?凄いじゃん!私はね、桃太郎が使った刀を作った刀匠の一族なんだよ。見てみる?』

と、彼女…テルと名乗る婦警さんは押し入れから一振りの刀を出してきた。 

『これがね、桃太郎が実際に使った刀で銘は“吉備津”っていうの。吉備津って桃太郎の本当の名前、“吉備津彦命”からとっているの。ただ吉備津は二刀一対の雌雄剣で私が持っているのは雄刀でもう一刃の刀を探しているわけ。早く片割れの刀を探さないと鈍刀になってしまうの。貴女ならあちこち旅をしているわけだし、きっと見つけられると思う。これでどうかなぁ…』

来る者拒まずな私にとって斧よりもいいかも、と安易な考えで交換する事にした。

『了解です!じゃあ明日、譲渡の手続きをしておくね。ただ譲渡にも時間がかかるよ。その間、私の部屋に住んでいいからさ、ついでに家の事をやってくれると有難いし。勿論三食つけるからさ。』

そうだよな、忘れていた。発行されるまで野宿を考えていたのだが泊めてくれるのは嬉しい!一宿一飯の恩を返さねば。
私はしばらく、テルと言う婦警さんのお世話になる事にした。

今回は岡山の警察署での出来事で主役のテル様のイラストを使わせていただきました。テル様、有難う御座いました!

・坂田金時(金太郎のマサカリ)→名刀吉備津の雄刀

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