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クリエーター(トレーダー)様と遊ぶ企画 わらしべ長者・第二章 “秘宝”第二幕

新大阪駅の構内は人で混雑していて、駅の職員達は慌ただしく走り回っている。一部の客はイライラしだし、職員に怒鳴っている人もいる。
私は選択を迫られる…このまま、駅に残るか、降りて別のルートで移動するか…の二択だが、特に急ぐ訳でもないし私自身呑気に考えていて正直どっちでもいいや、とさえ思っていたりする。

やまちゃんは新大阪で降りて駅の近くにあるホテルに泊まるらしく改札口で別れた。運休が決まっている中駅には最低限のお店はあるが、狭く限られた空間というのは逆に退屈になってきたし、お腹も空いてきた。探索も兼ねて、駅の職員に理由を話し、運転再開したらまた乗りたい、と話したらOKと言う答えが返ってきたので改札口を出た。

新大阪駅の雰囲気、東京と負けないくらい賑やかでお店も多い。探索してみると大阪も悪くないな…と思ったりもする。あ、そうだ!確かおにぎりがあったはず、食べようと思った瞬間、女の子に声をかけられた。

『あの、すみません…図々しいんですが、そのおにぎり、いただけませんか?実は財布を落としちゃって、朝から全然食べてなくて。』

女の子は嘘をついている様子はなさそうだし、財布がないから本当に困っているようだ。私は彼女におにぎりを渡した。貪りつくようにガツガツと食べてしまった。

『有難う御座います!凄く美味しかったです、あ…でも貴女の分が無くなっちゃいましたね。家に来てください、ご馳走しますから』

ここで赤の他人の家に厄介になるのは流石に不味いのでは?と思い断ろうとしたが、タイミングよくグゥー!とお腹がなってしまい、思わず赤面してしまった。
彼女に案内された場所はリカーショップ、つまり酒屋だった。客間に通された私は彼女に自己紹介をした。“エル”と名乗る女の子は両親と祖父と暮らす四人家族で暮らしているのだとか。

『新幹線、停まっちゃってるんでしょ?ツイてないよね。運休の理由が大雨と強風なんだ…雷様が怒ってるのかな…理由はわからないけど。』

雷様と言うワードを出した途端、店内にいたお爺ちゃんが慌てて入ってきた。

『初めまして、儂はこの子の祖父で杜氏をしてます。ところで貴女は何処に行こうと?』

私はキョトンとするエルちゃんを横目にお爺ちゃんに話した。この先の香川にある女木島で待つある人に会う事を。

『女木島?アンタ…鬼に会いにいくと?女木島は昔鬼ヶ島と呼ばれ、角の生えた鬼が住んでいるという。鬼は近辺に住む人達に色々と悪さをして困らせていたところ吉備津彦命によって成敗された…桃太郎の話じゃな。大雨と強風…アンタ、まだ島に入るにはまだ持っていない、足りない物があるんじゃよ。』

…と、お爺ちゃんは奥の酒蔵から一本の一升瓶を持ってきた。

『これは儂が長年作り続けていたお酒で儂にしか作れん。特別な材料と澄んだ水…色々な条件があって完成するんじゃよ。だからこの世に一本しかない。鬼はお酒が大好きじゃからな。“銘酒 鬼殺し、おーがきらー”じゃ。』

エル様、有難う御座います!

『ねえねえ、お爺ちゃん。このオーガキラーってお酒、濁ってるけど、濁り酒なの?』
『そうじゃよ、鬼は透き通るようなものを極端に嫌うからって理由じゃよ。濁り酒って見た目に反してしつこくないし、あっさりした感じなんじゃよ。』

私はお酒・銘酒鬼殺し(オーガキラー)を受け取り財布を取り出したが、お爺ちゃんはいらんと断ってきた。

『すでにお金の代わりにもらっとるよ。おい、エル!また財布を忘れとったぞ。まったくそそっかしい子じゃな…どうせその人から何か食べ物をもらって食べちゃったんじゃろ?エルが食べちゃった物と交換じゃな。さっき駅長さんが言ってたのじゃが、運行再開するって言ってたぞ。急がないと不味いじゃろ!』

私はエルちゃんとお爺ちゃんに御礼をいって駅に向かった…一升瓶は重いなぁ。
さてキーアイテムとなるお酒を手に入れた私…誰が私を待っているんだろう。いざ鬼ヶ島(女木島)へ!

今回はエル様のイラストを採用致しました。エル様…感謝致します。

コガネニシキのおにぎり→日本酒・銘酒 鬼殺し(オーガキラー)

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