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超能力・帰還

夏休みを秩父で過ごした私と麻也。
あの経験は私達をまた一歩、成長させるきっかけになった。私達の想い…きっと伝わったはず。

私達は“破邪の御子”として未来を築く…そう決めたのだ。だから私は還ってきたわけだ。魔法学と言う学問は日本や海外に伝わる魔術を研究していく学問。しかしそれは名目…地下奥深い場所で封印されている異形の者の監視と“破邪の御子”の養成が真の目的だ。

私と麻也は講義の後、学務課に行く。学長との面会手続きを取る必要があるからだ。ただ学長は多忙な方で面会をするには学務課に申請をしなければならない。

『麻也、申請は一応連名で申請するけど、書類は私が書くからね。』
『了解!』

私は申請の書類と共に一通の手紙を添付した。そう…旅館の女将、“萬屋逢羽”さんの手紙だ。

『…はい、受理いたします。面会の日時については安岡さんの端末に送っておきますね。』

学務課の職員は淡々と話した。

一週間後、学務課からメールが来てアポイントの連絡が来たので私と麻也は学長室へ向かった。私は学長室と書かれたドアをノックする。

“はい、どうぞ…お入り下さい”

と声がする。私達は部屋に入った。学長室は書斎のような雰囲気で本がびっしりと並んでいるが…外国語だったり中には読めない言語のタイトルの書物があったりもする。

部屋の奥には学長らしき女性がいる。

『魔法学部、一年の安岡美月と申します、こちらは同じく長篠麻也といいます。』

私は自己紹介をすると…

『私は、逢羽女子大学学長の逢羽双樹と言います。私とは入学式で会ったきりだと思いますが、一応初めまして…と言っておきますね。』

学長は続けて…

『母上様からの手紙を読ませていただきました。貴女達が破邪の御子の試練を受けたいと?』

私は“はい”と言った。

『なるほど…つまりは貴女達はすでに二つの試練をクリアした…最後の試練は二つの試練をクリアした者にしかわからない、だから私を頼った…と言うことでしょうか?』

『…はい、仰る通りです。学長には言っておきますが、私と彼女…能力者で、高校の時一時的に力を使えなくなり、ある人物に会うべく私達は秩父地方にある三峰山と武甲山で待つ、麻姫と月姫に会い、二つの試練をクリアした訳ですが…』

私と麻也は袖を捲り肩の紋様を学長に見せた。

『ほう…確かに紋様がある。長篠家と安岡家の家紋ですね。ある国では二つの勢力があって二人の女性城主が国を二分し、納めていたと聞きます。ある出来事で国は一つに統一された…と聞いておりますが…』

その時、私達の背後からボゥっと姫様達が現れた。

『そうじゃ、私…麻姫と…』
『妾、月姫じゃ。』

『これはこれは…姫様方。初めてお目にかかりますね。私の事は母上からお聴きになられたかと思いますので私の事につきましては詳細を省かせいただきますね。』

『うむ。構わんぞ。』

姫様達は言う。

『ときに双樹。其方は妾達の力の源となる力をくれた神様に妾達は会いたいのじゃが、其方が詳しく知っていると母上が言っておったぞ。』

月姫は言う。

『月姫様、確かに私はその場所と行く方法を知っております。母上は萬屋金兵衛と夫婦となった事はご存知かと思います。金兵衛は志半ばに天寿を全うしてしまい、母上様の子供二人、つまり私の御先祖が突き止めた訳です。』

『そうじゃったな…妾は母上に頼んで良かったと思うぞ。双樹、申し訳ないのじゃが、もう少しだけ辛抱しておくれ。』

『勿論ですよ…月姫様。』

『さて…安岡さん、長篠さん。貴女達はすでに二つのアイテムを持っていますね。一つは貴女達の腕にある試練の証、もう一つは銅(あかがね)の櫛。そして私が持つ最後の“コレ”…です。』

と、学長は鍵をゴトっと机に置いた。

『これは“銅(あかがね)の鍵”と言う鍵で神々が住むと言われる高天原という神聖な場所に入るのに必要となります。入口は不死の山と言われた霊峰富士の途中、浅間という神社の奥にあります。高天原に入るには富士山にある神社に行かないといけないって事ですね。』

前に言っていた私の仮説はほぼ正解だった!

『高天原に行く道を探した、萬屋金兵衛、そして姫様達を育てあげた私の祖母、逢羽…全ては破邪の御子の為だったんです。私達一族はそんな宿命を負っていましたが、貴女達に私達一族の運命を託そうかと思います。まずは富士山へ!』

学長は…

『安岡さん、長篠さん…一つだけ忠告しておきます。高天原に住む神様達は下界の物を持ち込む事を非常に嫌います。富士の山に向かう時は身をしっかりと清め、神社での作法をしっかりと行うことですよ。』

学長は紙を私達にくれた。

手水舎での作法。学長がくれた紙にはお馴染みの絵が。

『魔法学を専攻する学生として、これはさすがにご存知ですよね?復習がてら作法を勉強しておきなさい。』

『は、はい…』

私達は愕然とした。学長から見たら私達なんて本当に子供なんだな…。その様子を見ていた姫様達は何も言わずに私達の肩をポンポンと叩いた。

『どんまい、美月!』
『麻也も…頑張れ。』

富士山か…私は壮大な山に挑もうとしている。三峰山・武甲山と登山してきた私達、富士山は倍以上の標高差がある。そして富士山は遭難や滑落事故が凄く多い…登山に詳しい人…そうだ!もう一度逢羽さんに会ってみようと思う。

私達は逢羽さんに会うべく秩父に向かうリニアトレインに乗り込む事になるのだが、それは次回に。

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