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美しさとは

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美しさの定義って、難しい。その時代に生きた人の価値観とともに、変わるのかもしれない。いや、まったく変わらないものなのかもしれない。美しさってなんだろう。自分に問いかけて、考えたこ…
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#アート

ステンドグラスと葡萄組合。

今回はイタリアを飛び出して、フランスのランスへとご案内します。2019年春にパリとランスに訪れていました。ランスと言えば、シャンパンの里。 ステンドグラスが発展したフランスらしく、シャンパンの里にあるランスのノートルダム大聖堂には、葡萄からシャンパンになるまでの工程が、ガラス窓に描かれています。 こちらにも大聖堂のステンドグラスを1枚だけ載せています。 丹念に眺めると、ひとつひとつの工程が細かく描かれていて漫画みたい。製作されたのは1954年なので比較的新しい作品です。

絵画と額縁の関係

ご訪問頂いた方に質問です。 「絵を見るとき、額縁も見ますか?」 ヨーロッパで絵を鑑賞するとき、 絵の迫力に勝るとも劣らない立派な額縁が 中心の絵を支えていたりします。 額縁って、単純に木枠。 たかが木枠、されど木枠。 壁に直接描くフレスコ画から、 板絵に変わったのが1300年代。 それ以降、 額縁製作は工房の重要な仕事の1つになります。 板絵をそのまま飾るのは味気ない。 板絵を守る木枠が欲しい。 旅路には持ち運べるようにしたい。 1300年代は ゴシック教会の縮小バ

1000年前の美しさの定義。

時代ごとに美しさの定義は変化していくけれど、いま私たちが見ても、美しいと思えるもの。そんな普遍的な美しさも、また存在する。 ロマネスク時代の美の基準とはなんだったのか。1000年前に遡ってみたいと思います。ルネサンス文化が生まれる、ずっと前のはなし。 古代ローマが崩壊し、分裂、侵入の繰り返しで、暗黒といっても過言ではない、つらい時期を過ごしたヨーロッパ。 目の前が何も見えない、真っ暗な世界のなかに、一筋の希望の光として、誕生したのがロマネスク。 トスカーナ州には約40

天文の美しさに囚われたひとびと。

長い歴史の天文学。どこよりもずっと進んでいたアラブでは、天体観測器が作られ、それが欧州へと渡ります。 1334年に建立されたフィレンツェのジョットの鐘楼。塔の高さ、塔の色の美しさに目を奪われて、見落としがちな装飾レリーフ。その一枚に表わされているのが、この天文学。 壁の部分に星座が薄く彫られている。 なんという細かい仕事。 当時の天文学と占星術は、切ってもきれぬ仲。種まきも収穫も、すべて天を眺め、星の動きをもとに、時を計り、時期を知り、人々の生活が成り立っていたのです。

ローマに秘められた、天体回廊。

前回で「天文のテーマ」は終えるはずでしたが、ローマへ行く計画が浮上し、今回は引き続き第二部です。 なぜローマで第二部かというと、ローマには、科学とアートが融合した素晴らしい作品が残されているからなんです。 前回の記事のきっかけになった「アートと科学」という小冊子を、この夏に読んでいて、すごく驚く発見があり、びっくりして、機会があれば、ローマに行ってみたい!と望んでいたのです。 今回は、体験してきたことを、お話しします。 フィレンツェからローマへローマで見たい展示会が、

空間の美しさとは? Part.1

空間を知るって、どういうことなんでしょう。 紙面に縦線と横線を引けば、水平と垂直はすぐに描けるけど、奥行きはどう表現する? まずは、絵画から探ってみよう。古代ローマや、中世時代は、数学的な根拠のないまま、なんとなく奥行きがあるっぽく、こんな感じかなーと、表現していた。 なんとなくの奥行きでも、ぐっと、深みがでてくる、1300年代の絵。 マリア様と幼子キリストが座っている玉座の後ろに、聖人を重ねて描くことで、二人の背後に、聖人がいるんだなぁ。と、感覚的に空間をつかめる作

空間の美しさとは? Part.2

フィリッポなくして、フィレンツェは形成せず。 フィリッポ・ブルネレスキが、遠近法を発明したのが1416年頃。2年後にクーポラのコンクールが行われ、彼の案が採用されます。 両手放しで、喜ぶことはできない条件はあるけども、とりあえず、現場監督として、1420年からクーポラの建設が始まります。 こちらが、ブルネレスキの建築記。 中世の面影を残すフィレンツェの街に、ダイナミックでシンプルな建造物が、自己主張することなく溶け込み、新しい時代へと繋いでいきます。フィリッポ・ブルネレ

ルネサンスの寵児、フィリッポ。 空間の美しさ。Part.3

天才と呼ばれる人に共通しているのは、ゼロから1を作り出せる人ではないか。彼らの作品を通して、つくづくと感じます。 吹き抜けのドゥオーモクーポラの八角系の台座、実は、中心が合わないんです。 と丸投げされてしまい、後世の人々は困った。どう建てていいのやら、どこから手を出したらいいのや、とんとわからず。 1296年から建て始め、1380年にはクーポラ以外はほぼ完成。 途中で、黒ペストが蔓延する非常事態があったのにも関わらず、100年もかけずに、ここまで建てるなんて、フィレン

ルネサンスの寵児、フィリッポ。 空間の美しさ。Part.4

やっと、ひとりで現場を仕切れるようになったフィリッポ。 一難去って、また一難。 現場作業安全対策ガイドラインクーポラの高さ、116.50メートル。見たことも聞いたこともない、超高層。 実際に請け負う現場作業員のもっともなる意見。みんなを集めて、フィリッポが話し始めます。 作業員の皆様が、いまだかつてみない大事業を前に、不安になられるお気持ちは、よくわかります。そして、いかに困難で大変な作業になるのかも、理解しています。転落死を回避し、高層でも怖がらず作業ができるように

音の美しさ

目で見て、手で触れて感じることのできる石。 角が丸くなり、表面の光沢が失われ、ところどころに溝や小さな穴があり、いままで、生きてきた証を、見せてくれる、風化した石。 まったく同じように、長い時間をかけて、いままで生きてきたのに、風化という言葉が当てはまらない、音。 わたしはキリスト教徒ではないけど、たまたま訪れた教会で、ミサが開かれていると、そのまま滞在することがあります。 ミサのときどきに、賛美歌が歌われ、何世紀も前に作曲されたものが、いま、この瞬間に、歌われるって

世界は音に包まれている Part.1

『音の美しさ』の続編です。 音楽。音を奏で、その音色を楽しむこと。 耳で聴き、時には感情をゆさぶり、時には気持ちを穏やかにしてくれる、心の処方箋のような存在。 自然、黙想。そして、音楽。昔から「音楽とは?」と、宇宙の真理を考えるごとく、深遠に思慮し、歴史に名を残した哲学者達。 紀元前6世紀頃のギリシャ。手を伸ばせば届くかのように、星の光が地上に降り注いでいた時代。 エーゲ海から聞こえてくるさざ波の音を耳にしながら、色とりどりに煌めく星空を眺めている、ひとりの人物。彼は

世界は音に包まれている Part.2

『音の美しさ』の続編です。 世界は音色に包まれている Part.1 美しさとは、調和である。音楽だけど、音楽じゃない。中世時代は音楽をどう解釈して、宇宙、神、人、との調和を図ろうとしたのでしょう。 ロマネスク様式の教会と音楽。天使が奏でる、天上の音 欧州で、キリスト教が世界の中心となると、神学が生まれます。神学では、天体の調和の観念は、天使の音楽として解釈し直されます。 昇天したマリア様が、天の女王になる、マリア様の戴冠式。大変おめでたいシーンなので、天使楽団が音楽を

世界は音に包まれている Part.3

『音の美しさ』の続編です。 世界は音に包まれている Part.1 世界は音に包まれている Part.2 建築と音楽の、数合わせ。ルネッサンス時代に入ると、以前に登場したブルネレスキと、彼と同時代に生きたレオン・バッティスタ・アルベルティが、フィレンツェ国の空間に手を加えます。 まずは、ブルネレスキに登場してもらいましょう。1420年に着工し、1436年にクーポラが完成。聖堂の献堂式が行われます。 献堂式に用いられる音楽は、もちろんオリジナル。ルネサンス最大の音楽家と言わ

世界は音に包まれている Part.4

『音の美しさ』の続編です。 世界は音に包まれている Part.1 世界は音に包まれている Part.2 世界は音に包まれている Part.3 音楽は、音色が流れるように続く、時のなかでの美しさ。 建築は、建物にリズム感を与える、空間のなかでの美しさ。 この二つに共通する調和。それは、算数や幾何学が出会う場でもあります。 中世時代の美しさは、床面も柱も、幾何学から割り出されていましたが、ルネッサンス時代になると「数字」が重要になってきます。 音楽と建築。ブルネレスキのあ