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芸術が変化した時ーパリの近代化ー

どの時代も人々の生活様式が変わり、それに伴い文化が変化してきました。アートの世界も科学の発展と共に変化してきたのです。
今回は、パリの近代化がどのように起き、それが与えたアートへの影響を紹介したいと思います。

パリの近代化におけるキーパーソンは、”ナポレオン3世”です。彼は叔父であるナポレオン1世が成し遂げられたかった、パリの近代化を強く押し進めました。若い時、叔父の影響で追放にあい、ヨーロッパ諸国を周り、さまざまな都市を見てきたのです。

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特に印象的だったのがローマとロンドンでした。ローマに残る、教会を中心とした文化的都市構造、ロンドンが工業化によって整然とした街なみを築いた、産業的都市構造。両都市を合わせた、文化的に美しく、産業的で住みやすい都市を目指し、パリの大改造に着手していきました。

パリ大改造(1853年から始まる)以前の19世紀前半は、あの有名小説でミュージカルや映画にもなっている『レ・ミゼラブル』の時代です。
当時は大通りから入った路地は狭く、交通の便が悪かったそうです。他にも、下水道が道路に露出していたり、各家庭用の下水道が整備されていない為、糞便を外へ放り投げるなどして、常に悪臭が漂っていたそう。
このような劣悪な環境であるにも関わらず、産業革命が後押しし、仕事を得る為にフランスの人々はパリに集まり、人口はどんどん増えていきました。

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この状況を改善する為、ナポレオン3世はセーヌ県(パリが所属する地域)知事にオスマンという信頼を寄せる部下を任命し、パリの大改造を進めていきました。
下記の5つのカテゴリーで変革が起きたのです。

①道路
②広場。公園
③建造物
④上下水道
⑤街灯

①道路
現在のパリの美しい街なみはこの大改造で出来上がりました。

②広場、公園
緑の面積が少なかった為、公園ができ憩いの場として現在も残っています。

③建造物
かの有名なオペラ座はこの時にできた代物。

④上下水道
上記のように下水道があらわになっている状態から、地下に埋められ、衛生的な上下水道が整備されました。

⑤街灯
夜のパリはとても暗く、治安の悪さにも繋がっておりました。しかし、ガス灯が整備され夜でも街を照らし、夜道が不安な物からロマンスが生まれる場に変わったのです。

この近代化が起こした人々の心象変化はロマン主義から写実主義、現実主義への転換でした。
パリ大改造以前の19世紀前半は、ロマン主義絵画という、歴史や神話、宗教画をモチーフに作成されていました。パリ大改造の後はいま見ている世界、科学の発展がもたらした変化、そしてそこにいる現実の人々を描写したのです。ロマン主義の題材である歴史上の人物や神、キリストではなく、いまここに生きている人々の輝き、嘆きなどを捉える美しさなのです。

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このような人々の文化は科学や産業の発展により起こります。現代に生きる私たちはインターネットを使いこなし、グローバルなんていう言葉は古めかしさすら感じるようになってます。AR,VR技術の発展、5Gによる通信速度、取り扱えるデータ量の増加、生物学分野での遺伝子分野での発展はどのように文化を変え、どんな文化が生まれてくるでしょうか?
楽しくなってきましたね!

文:土居 洋輔