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アートケアだより2023年6月号

 5月の総会は、4年ぶりに対面で開催しました。対面は久々ですし、「アートケアひろば」20周年なので、スペシャルな総会を!ということで、同日、当会監事の川口徳治朗さんに考古学のお話をしていただく運びとなりました。

 川口さんは、貝塚研究の第一人者として知られている方です。長年、神奈川県立歴史博物館で学芸員を務めておられました。

 お会いするたび、博識で考古学への愛と探究心あふれるお話をしてくださって、「私だけが聞いていてはもったいない!」と思っていました。そして、子どもたちには 「博物館のお仕事ってどんなだろう、考古学ってどんなものなの?」と、好奇心を生かす職業のイメージを届けたいと思っていました。

 こんな経緯で実現した企画です。

 土曜は習い事の人が多く、中高校生はテスト前だったり湘南祭が重なったりで、子どもの参加は6年生、2年生、年長さんと3人でしたが、大人を入れて20人集いました。

 川口さんから『博物館はおもしろい ”考古学からのアプローチ”』というタイトルを頂きました。「学校では学べない、縄文土器と弥生土器の見分け方を ①土器図 ②土器破片 を見ながらお話しますね」と、なんと貴重な土器のかけらを「触っていいですよ~」とお持ちくださることに! さてさて・・・


川口徳次朗さんのお話は軽妙で楽しく、あっという間に時間が過ぎました


●学校で習うのは西日本の土器をベースとしている

 まず、縄文土器と弥生土器の特徴についての一覧表と、土器が描かれた資料を見ながら、「ここに土器が8つ描かれていますが、どれが縄文土器でどれが弥生土器か、考えてみてください」と。「え~?!」と皆、各自、書き込むことに。ドキドキしながら答え合わせで「わ~!そうなんだ!」と色々な声があがっていました。

 縄目があるから縄文土器、とは一概に言えない。学校で習うのは西日本の土器をベースにしていて、関東の土器はむしろ弥生土器にも縄目模様が多い、ということをご解説くださいました。いや~知らなかったです。びっくり!

 さらに、壺型、深鉢など「形」の種類について。「拾ってきた木の実を入れるために背負えるようにした壺だから、この形になっている」とか、「お米を貯蔵するためのもの、煮炊きするためのもの、食べるためによそうもの、と使う用途に応じた形になっている」といったお話がありました。そのようなお話を聞くと、縄文や弥生時代の人たちがとっても身近に思えてきます。

●実物をしっかり見るのが大事

 そしてお待ちかねの「土器のかけらに触る」時間がやってきました。たくさんお持ちくださって、箱はずっしり。土器に模様をつける道具を再現したものも多種、お持ちくださったので、「これを使えばこんな模様ができる」とありありとイメージできました。粘土で模様をつけるときと同じです。

 「好きなのを2つ取って、それが縄文か弥生か、考えてみてください」と土器のかけらでもクイズ!

 最初に資料で当てた時よりも、詳しく解説を聴いた後なので、わかりやすいかなと思う一方、結構、迷います。赤い色が塗られていたことがわかるかけらもありました。

 「なんとなく縄文土器は色が黒っぽいイメージがありませんか?でも色は、土の色によってずいぶん違うんです。だから色だけで時代を決めるのは当てにならないんですよ」と川口さん。関東の方は赤土なので茶色っぽくなり、九州地方は白っぽいのだそうです。 

 するとすかさず質問が。「というと、出土した場所が大事ということなんですね」「そうです!」

 他にも質問が。「模様は決まっているんでしょうか?」

「時代で流行もありました。でもなんでも自由に作っていいわけではなく、『この村のこの人たちはこの模様』と地域ごとに制約がありました。だから、今、私たちに、この土器は何時代のどこの地域のものだとわかるわけです」

 そして川口さんは「本に書いてあったからこう、ではなくて博物館などへ行って実物をよーく見ることが大事です」とおっしゃっていました。


色も模様も様々。縄文時代と弥生時代の人が作ったと思うとドキドキします

●コロナで川口さんが思った仮説

 川口さんはコロナ流行でこんなことを思ったそうです。

 「今から5,000年くらい前、長野などでは縄文が盛んで石の斧や鍬などが出土しているのですが、4,500年前頃を境にピタッと出土しなくなったんです。それはなぜか? 僕はこのコロナの流行でハッとしました。

 人間が石の斧で森を伐採して環境を変化させた。そして森の中にいたウィルスが人間を宿主とせざるを得なくなったのではないか。世界を見ても、遺跡がなくなることと、開発、自然破壊と関連があったのでは、とされる例がたくさんあります」

 川口さんのお話をお聞きして、考古学が今の私たちにつながる「生きた学問」であることを、以前にも増して強く感じました。

 このほか、赤い塗料の話を詳しく説明してくださったり、盛りだくさんであっという間に時間が過ぎました。

 知らない世界を知るって、大人も子どももワクワクしますよね。みなさんが湯上がりのようないいお顔をされていたのが印象に残りました。

わかちゃん(年長)考古学レクチャーでメモをとる園児さんっているんでしょうか?!びっくりです

 メモはわかちゃん(年長)がお母さんと書いたものです。すごい~、こんなにメモしている!お父さんは土器に興味があり、茅ヶ崎市内で土器のかけらを見つけて資料館に持っていったこともあるそうです。


あやさん(2年生)色をぬらずにいられない!おしゃれな土器になりました

あやさん(2年生)は土器のイラストをカラフルに塗っていました。

おさなさん(6年生)土器の模写を自ら

 イラストは6年生のおさなさん。土器と川口さんの似顔絵をサラサラ~。恥ずかしがってましたが「せっかくだから見せてよ~」と。いい味、出してますよね!

おさなさん(6年生)が描いた川口さん! 川口さんありがとうございました!


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