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「響・動・心」を知る。


雲間から顔を出した午後のお日さんの 白い手漉きの障子越しに 部屋に届く光の気配に包まれて、古びた文机に向かい 墨をすり、静かに写経をする。
何と豊穣で心安らぐひとときだろう。

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墨をする音に混じって、ほのかに漂い始める青墨の香り。懐かしさとともに、辛かった昔もよみがえってくる。

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小学生の頃である。何度も母に叱られ 筆を持った手を打たれ、泣きながら仕上げた書初かきぞめの思い出がよみがえってくる。

私の目からはポロポロと大粒のなみだがこぼれて、きっと半紙の上の「希望」と書いた文字をにじませてしまったに違いない。

この辛い体験は 長い間、私から『 書 』をずっと彼方に遠ざけてしまっていたかもしれない。

そんな私に、「もう一度帰っておいでよ」と声をかけてくれたのが、京都の芸術大学で受けた 書のセミナーだった。

以来、私は手を真っ黒にしながら、初めて「書」と遊ぶ楽しみに目覚めた。

五年前のことである。

* * *

全紙大(69cm x 136cm)の画仙紙の上で、時には紙を飛び越えて、たっぷりと青墨を含ませた筆を気ままに遊ばせるのは、心が解き放たれて、実に気持ちがいい。

ある時、自分の好きな漢字を 一つ、二つ、三つと、無作為に並べてみたことがあった。

きょう


どう


しん



「響 動 心」は

「 どよめくココロ」と 読める(!!)らしい。

辞書で知った。

安らぎたいはずの私は激しく激しく揺れて.....

乱れた心が 中々しずまってくれなかった。




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