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かんきんれいかいきん

フランスでは、今ホヤホヤに、3月17日から2ヶ月近くに及んだ外出禁止令が、来週5月11日の月曜日から正式に解禁されることが報告された。
レストランやバー等人が集まる場所の営業はまだ禁止で、もう少し先になるらしけれど、もう外出証明証を持たずに普通に自由に外に出れるようになる。

なんだか不思議な感覚である。
指令が出されて一週間目は慣れずに自由が奪われた気がして、結構精神的な意味できつかったが、それもつかの間、二週間も経った頃には監禁生活にも慣れた。自分の好きな時間に起きて寝て、好きなだけ本を読んで映画を見たり、見たかった海外ドラマを一気に見たり(遅ばせながらGOTにハマリ中)、家でに限られているけれど自分のしたいことをして、料理にもゆっくり時間をかけたり、友達と好きな時に好きなだけ電話で話したり、そして何より自分と真正面に向き合う時間ができて、とても精神的に充実した時間を過ごしていたので、とても不謹慎なことを承知に言えば、内心この監禁生活も悪くないなと思っていた。経済的に悠々自適というわけではないので、もちろん経済生活を度外視すればということだけれど。

しかも、フランス人というのはやっぱりどうも右にならえができないわけれで。わたしももちろんもうその仲間におおいに入っているのだけど、真面目に家にひきこもっていたのは最初の一週間くらいで、外出禁止の網目をどうにかかいくぐって、友人たちと結局いつも会っていた。

自由を奪われたように感じて少ししんどかった最初の時期、近くの知り合いが経営するワイン屋にかけこんでオーナーがこっそり出してくれた一杯のワインのとろりとした金の色とか、空がまっ青な日、友達がサプライズで持ってきてくれて道端で乾杯し合った冷えたビールの味とか、友達が自分のレストランの裏庭にこしらえた畑でほらっと採って口に入れてくれたグリーンピースの青くて甘い粒の香りとか、そういったものがわたしの監禁生活を支えてくれていた。
引きこもりの生活も大好きだけれど、やっぱりこうやって生の人同士の交換というはわたしにとって本当に大事なものなんだと気づかされた。

それにしてもこんなにもゆったりとした気分で過ごす生活をするのはいったい何年ぶりだろう。この感覚を忘れないでいたいな、と思う、かんきんれいかいきん三日前の晴れた日の夕方。満月。

洗濯物を取りにバルコニーに出たら、隣に住む一人暮らし仲間のルイーズもちょうどバルコニーでラジオを聞いていた。バルコニー越しに脱監禁の乾杯をする。

愛しい日々の連続を。

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