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仁和寺&東寺のおかかえ絵師👑立体的な江戸絵画を描ける加納節雄のチャレンジは「無常」だ!

江戸絵画の世界的なコレクターが、 数年前に自ら江戸絵画絵師になった!
そんなウワサを耳にしたら、 なんだか興味をひかれませんか?
しかもその彼は、真言宗総本山 教王護国寺 東寺と真言宗御室派総本山 仁和寺という、京都の世界遺産・国宝寺院で2022年の夏に個展を開催して好評を博したとのこと。
写真を見ると、 屏風のように大きな和紙キャンバスに描かれた、 漆黒を背景にした仏画?! 数年でこのような絵を描けるようになるなんて!
一体何者なのでしょう?

そんな彼が、渋谷区神宮のMUJO 東京ギャラリーというところで、 1日限定、 1時間に1人を招く展覧会を開催するということで、 なんと訪問することになりました。
彼の名前は加納節雄さん。
浮世絵師・河鍋暁斎の作品をはじめとする、 大和絵・禅画・水墨山水・花鳥画の粋をコレクションしているのだそうです。 その日はご本人にも会えるということでドキドキ。

加納さんの作品が展示してあるという、 瀟洒なマンションの一室に足を踏み入れると、 心地よいお香の香りに満ちた空間。 最初の展示室は予想外のしつらえ。

壁だけでなく床と天井にも加納さんの絵が!
照明を極限まで落とし、 所々描かれた顔が浮かび上がるような照明は、 ろうそくで暮らしていた時代の感覚です。作品は、漆黒の背景に白で描かれているのですが、 薄暗い室内では漆黒がより深く感じられます。
目が慣れてくると、龍や仏様の顔が浮かび上がってくるのですが、細部まで緻密に描かれています。「時間をかけて描いた墨絵なのかな?」などと考えながら見ていると、「水性マジックインクで描いたのですよ」と案内役の東亨さんが教えてくれました。

水性マジックインク???
高級な和紙の上に墨で描いたのだとしか思えないような質感なのに!
次の部屋に移り、 今度は明るい光の中で観賞させてもらいましたが、 やはり重層的で趣のある質感。 そして軽やかな筆致で描かれているのですが、 より近づいて無数に描かれた面の一つ一つが、 本物の像を見ているみたいに立体的です。

一つ一つが人形焼きのように張り出して見える立体感にびっくり!

それに、この部屋で時間を過ごせば過ごすほど、絵の中の世界がとてもリアルになってきて、例えば仏様がお座りになっているこの球体は、巨大なシャボン玉のように空中を漂いはじめる。 そもそも江戸絵画は、 こんなに立体的だったのかしら?
そしてこの立体感は、西洋の絵画に見られる遠近法のような立体感ではなく、表面から奥に向かって熱く深みが増していくような立体感です。

東さん曰く「加納さんは、黒く塗りつぶす前に色々なものを描いているのですよ。 それから、 影を描かないので、 描かれた場面が過去として固定される事がありません。 ですから絵の中で常に時間が流れているのです。 だから動きがあってリアルに感じるのかもしれません。まさに『無常』の世界です。この世界は、東寺や仁和寺での個展の再現でもあるのですが、とても素晴らしかったです。その時は、太陽光や月光など、自然光で鑑賞したのですよ」。

加納さんはその後、東寺や仁和寺の『お抱え絵師』に指名されたそうです。
お抱え絵師!!!
なんだか古き良き江戸文化の復活みたいでとてもステキ!!!
無常って言葉で何回も聞いてもピンとこないけど、 こうやって絵で表現してもらえると、 なんだか体で理解できる気がします。ますます、加納さんってどんな方なのだろう!! 
期待が高まったところで、 次のお部屋で対面することができました。

「どうだった? 面白いでしょ?わっはっは ~」
と勢いよく登場した加納さん。
あの大作を一日一作品のペースで描き上げているというのも頷けるパワフルさです。

「人間が原始人だった時って、きっと他のどの動物より弱かったでしょう? それなのに、河原で綺麗な石を拾ったら、 美しくて捨てられないという 役にも立たない意識を持っていた(笑) 。 でもそれが人間の最大の特徴で魅力的な所だと思うんです。弘法大使や江戸時代の絵師や大衆もきっとそのような美を理解するパワーを持っていたと感じていて、それを復活させたいと思って描いているんですよ」と加納さん。

それで先ほどのような立体感と動きのある作品が生まれたのですね。
私は、 背景をあの漆黒に塗る前に加納さんが何を描いているのかが知りたくてたずねてみました。

「例えば雲って動いているでしょう? ここにあった雲が、 少し経つとあっちの方に動いている。そのような、雲や、その間にあるものを描いたりしています」と加納さん。

とても新鮮!
そのような、 時間の経過やそれによって生まれる空間などを漆黒の奥に描き込んでいるのですね。だから、フラットな平面に描かれているのに深い奥行きを感じたんだ!
これは、西洋の遠近法のように視覚的にわかりやすい立体感ではなく、見えないけれど奥深い、精神的な立体感!
もともと日本にあったものなのかしら~?

江戸の敏腕絵師がそのまま現代の東京に降臨したかのような加納さん。
これからの展開が楽しみで、 目が離せません!

【SETSUO KANO(加納節雄)/ PROFILE】
東南アジアでの原始仏道への帰依を経て日本に帰国。その後、世界に散らばってしまった江戸絵画の世界的蒐集家として活動。
江戸絵画で得た世界屈指の観察力と厳しい修行で得た創造力で特化した美意識、美学を併せ持ち、その美学に接した日本有数の文化人から世に出ることを切望され、2019年に自身の哲学である無常(MUJO)を創作意義として、「Whoda」の画号でデジタルでの創作活動を開始。江戸絵画の洒落の
世界と自身の人生観を纏い、唯一無二の無常の世界を現代に表現した。
従来のアートのアプローチである画廊やアートディーラーを介さない場での個展を立て続けに展開するものの、デジタル作品での表現の限界を感じ、襖サイズである1820㎜×1020㎜の和紙素材のキャンパスに水性マジックインクのみで一日一作のペースで描き始め2022年4月開催のニコニコ超会議
2022にて肉筆作品で初の個展を開催。さらに、同年7月19日から9月19日まで世界遺産、重要文化財、国宝である京都の東寺、仁和寺、東本願寺にて展示会を開催し、延べ2万人を動員した。

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