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【開催記録】 第42回 アート対話カフェ 2023/6/24(土)

今回のテーマ

今回のワークショップは「アート作品を分析的に観察し考える」というテーマで開催され、計11名の参加者同士で対話が行われました。

VTSでは、2つの問いかけをもとに、問答と対話をします。
この2つの問いかけには工夫がしてあり、それらに答えることによって、参加者はアート作品を、注意深く観察しながら考えることができます。

その結果、アート作品が「分かった!」という感動を体験をすることができます。VTS、は日本の学校で教わる”鑑賞”とは異なるアート作品の見方で、優れた教育効果があります。


1枚目の絵


ヨハネス・フェルメール 『婦人と召使い』(1666年−1667年頃)

1枚目の絵ではヨハネス・フェルメールの「婦人と召使い」を使用しました。
作者名や作品名などは、事前に参加者に明かしていません。

参加者から出た意見

  • 左の使用人らしき女性が、女主人にメッセージを伝えているところではないか。使用人は届いた手紙を渡し、主人は手紙を書いている途中。

  • 右の女主人が明日の来客に出すメニューを渡している所。
    メイドは、買い物リストを受け取っているのではないか。

  • 右の娘が、母に内緒でラブレターを書いている場面ではないか。
    母が相手の男性から手紙を届けられ、言い訳に困っている所?
    母の表情が固い。娘も顎を押さえて狼狽えている。
    腕まくりしているのも、汗ばんでいるからではないか。

  • 左の女性が、ドレスを着た女性に手元に置いてあるビンを紹介しているのでは。とすると、手元の紙は値段が書かれている。ドレスの女性は予算を気にしているのでは?

  • 左が家政婦で、右がお金持ちの女性。
    右の女性の目線が怪訝そうに見える。勉強しているところに、左の人がお願いしにきたところではないか。

  • お手伝いさんと雇い主。
    雇い主は服装が派手で裕福そう。お手伝いさんはかなり質素。
    上下関係を感じた。

  • 結婚式の前日に、何か悪い知らせが届いたシーンではないか。
    右の女性の手がパタリと止まっている。

  • 使用人が何かを企み、騙している現場なのでは。
    背景が真っ暗で情報が少ない。使用人が闇から浮き出てくるような雰囲気。
    使用人の左手が隠れている。隠しているのでは。ミステリアスな雰囲気を感じる。

  • 右の女性に見つかってはいけない紙を、見つけてしまった場面では?
    主人のイヤリングが、冷や汗・涙に見える。隠しきれない驚きを表しているのではないか?

  • 黄色の服で、絵の印象は幸福な印象を受けた。
    暗いと発言が多いのはなぜなのだろう?(参加者への問いかけ)

  • 裕福な人の背景にも暗い描写がある。
    黄色いドレス以外は暗い。暗い方に目がいく。

  • 宝石箱のようなものが見える。
    メッセージの内容は財産に関わるものではないか?

  • 「貴族の崩壊」を表しているのではないか。
    暗い方から、明るいところへ紙が出てきている。
    貴族が悪巧みして、明るみに出てしまったことを表しているのでは。


2枚目の絵


アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソーの『眠るジプシー女』(1897年)

2枚目の絵は、 アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソーの「眠るジプシー女」こちらも絵に描かれていることから、それぞれ意見を展開して発言していただきました。

まず参加者の皆さんに、絵に描かれている要素について確認してから、次に何が起きているか述べて頂きました。

参加者の意見

  • 楽器はロマ。ジプシーがモロッコのサハラ砂漠にたどり着いて死んでいくのを、ライオンが見守っている?死を象徴して黒を使っているのかと。楽器はアフリカの楽器ではないような気がした。

  • 場所は分からないが、温かい土地で川が流れ、夜が明けつつある時。横たわっている人は眠っているのかな?夜が明け始めていて旅人のよう。横にライオンがいる。夜明けだと考えたのは、星と月があるので。地平線の山の稜線が白み始めているようだ。月が出ていて日が昇りつつある。

  • ライオンも表情も無表情でなにもよく分からない感じ、人の方も読み取れない。私も女性の楽器の弦の上の方が白くて夜明けの近い頃だと考え、非現実的な空気感を感じた。

  • この女性が実在なのかどうかわからない。この土地を象徴するようなものとして描かれているのでは、と。そう考えた理由は、眠っている女性の身体の配置が読み取れないのと、砂漠の色と同化しているようにみえる髪の色と服の色が、砂漠の色と明確な区別がされていないところから。

  • 嫌なことがあって、砂漠で楽器の練習をしに来たのだが一回休もうかなとしているところ。女の人の口が開いてて、目もどこかを向いていて、右の瓶に水が入っていてそれを飲んで寝たのかなと。

  • 横たわっている人の左手があるのかないのか疑問。
    杖を持っている。右腕がたくましくみえて筋肉が発達しているようで、左手を失っている?だとしたらツボ等を持つのは不可能だし、難しい絵だと思う。

  • 二項対立のようなものがあるのかなと。
    夜と朝、尻尾がシンボルかどうかわかりませんが、ライオンが男性で横に女性がいて動物と人間、楽器を女性…
    生と死とか川で境目として、相対するものが配置されているかな、と。

  • 女性が着ている服がカラフルで髪はピンク。LGBTのパレードが色がカラフルなので…LGBTの活動をしている人が休んでいて起きたら、また闘うのかなという想像をした。

  • 皆さんに質問ですが、普通ライオンって近くに居たら怖いと思いますがライオンはどういう存在だと皆さん思われたのかな…と。

  • ライオンに見えなくてタテガミの位置も違っているようで、ぬいぐるみなのではと。現代版で言うと、家出をした娘を心配して、お父さんがライオンに変装して様子を見に来ているのでは?親子の愛と想像して楽しんでいました。

  • 私もライオンが獰猛なライオンではなく、群れを追い出されて雄ライオンとしての生殖も期待されず放浪しているようなライオンでは、と。
    きょどっている感じもして。女性は寝ているのに腕が太く、きっちり棒を握っていて安心してだらっとしている感じもなく緊張感、気を張っているところがある。静かな夜中なのに安心していないように見える。

  • 現実味がない世界観の絵。
    夢の中の印象で、穏やかな感じ。獰猛な感じがない。作者は疲れていて穏やかな世界を描きたくて、寒くも暑くもなく、争いのない時間帯、世界観を描いてみたかったのかなと。作者のあこがれ、願望が描かれているのではと。


最後に

同じ絵を見ても、一人一人意見が変わってきます。
議論の際は、このように同じ根拠(事実)を見ても、「論拠」が違うことで意見が変わります。

VTSでは、その論拠がどれ位の妥当性があるのかを考えながら、対話を進めていきます。これをクリティカルシンキングと呼びます。

アートに関する知識や情報は不要です。
皆さんもアート対話カフェで、「観察する力」と「考える力」を育ててみませんか?

参加者の皆さん、またのご参加お待ちしております!

https://www.kokuchpro.com/group/adcf/