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File.08 宮坂絵美さん(インスタレーション)インタビュー

宮坂絵美さんは油彩やインスタレーションを制作し、精力的に芸術の普及活動にも取り組んでいます。今年は大学院への進学や、スイス北西部の都市バーゼルで毎年開催される世界最大級の現代アートフェアー、アート・バーゼルへの出展を計画する(新型コロナウイルスの状況を鑑みて中止になりました)など、バイタリティー溢れる活動をされ、今後の活躍が楽しみな宮坂さんに、お話を伺いました。

―― 現在のご活動について伺いします。

現在は平面作品で、写真の上に油絵を描いていくという方法で油絵を制作しています。

―― 写真というのは、どのようなものを題材にされていらっしゃいますか。

リカちゃん人形や、人形用のおもちゃなどを写真に撮り、写真の上から油彩で描いていきます。

―― 写真の上に、絵の具を盛っていく、ということですね。ポップカルチャー的な印象があります。

いちから描くよりは、作品に持っているイメージを落とし込み易いです。

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―― 作品の発表のご予定はありますか。

来年に大学院の試験があるのですが、そこで発表したいと思っています。

―― 大学院をご受験されるのですね。

現在コロナ感染拡大下で、オミクロン株まで出始めていて(2021年12月初旬当時)、実現するかわからないのですが、できたら、受験をして、そこで発表したいと思っています。

―― 宮坂さんが活動を始められたきっかけ、人生のどこかのタイミングで、美術を志された時期があったかと思います。それはどんなきっかけからでしょうか。

昔から絵画教室に通っていて、そちらの講師の方が、美術大学出身でした。
「もし美大を目指すのであれば、東京の予備校とかに通って、高校2年生ぐらいから目指す子は目指すんだよ」と教えられてきたので、高校2年生ぐらいから目指し始めました。高校の部活は、茶華道部で、茶道と華道をやっていました。たまに美術部にも行って一緒に参加して絵を描いていました。

―― 油彩を大学では学ばれて、途中から芸術史を学ばれていらっしゃいます。

大学に転学したきっかけみたいなものは、学費が高額だったこともあって。ただ、芸術史についても興味がありました。結果、どちらも学ぶことができたので、よかったと思っています。海外の芸術について、芸術祭などの知識も学べたので、今の活動に役立っています。

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―― インスタレーションを制作されています。絵画とか立体作品とはちょっと異なるアプローチです。空間に非物質なもの、光とか音など。洋画から、インスタレーションへ制作が移行されたきっかけは何でしたか。

世界的に有名な方が美術大学の予備校の先生でした。先生の展覧会に招かれ、埼玉県立近代美術館に行った際に、そこで見た先生の作品がレーザーの作品でした。この先生も、もとは油彩をされていた方ですのに、このようにインスタレーションとかできるんだなと思って驚きました。そこで、自分でもやってみたいなと思って、今に至っています。

―― 宮坂さんのインスタレーション作品で、虹の映像がたくさんある前で演奏者が金管楽器を吹いているというものがあります。人工の中に、演奏者の息で音を出す、というプロセスが非現実と、現実、生きる人間の基本である呼吸というものが融合していて。作品を見る人によっていろいろ受け取れる作品なんだろうなと思って、拝見しました。

2014年ぐらいに、茅野市美術館さんのほうで、私の企画した展覧会で【①】、キモトリエさんと、宮本一行さんをお呼びしました。金管楽器を吹いていたのが、宮本さんです。私もあの頃はインスタレーションを盛んにやっていたので(笑)ああいう形になりました。いろいろな皆さんが、いろいろな見方をできるよう、自由に感じ取っていただけるような作品にしたかったのです。

―― グラフィックで作られる方もいらっしゃるんですけれども、宮坂さんの作品にはライブ感がありました。
作品を拝見したときに、あれは、生で撮ったものを、その場で生かしていらっしゃるのかなって感じがすごくして。その場で作品を作っている、という感じがすごくしました。

プロジェクターの白い画面を表示させて、前のほうに虹色に反射するフィルムみたいなものを置いて、後ろに反射するように。プロジェクターを置いて、光を当てて、虹ができるような仕組みになっています。この作品は京都の芸術大学のほうでも展示をさせていただきました。

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―― インスタレーションは、いわゆる仮設で、それが1回終わったらすべて取り払われてしまう印象です。環境の中で再現性がなく、恒久的なものではありませんが、映像で記録することで、作品を保存し、時間を超えて保存できるということがやっとできて、YouTubeなどでも発信できるようになりました。そういう1回限りの芸術というのか、恒久性がない芸術にとりかかられている。

たとえば、芸術作品として、その芸術家が亡くなったあとでも作品だけが残っていくっていうことがあげられると思います。私は形として残るものだけが芸術じゃない、と思います。1回きりで終わるものもあっていいと思っていますし、地域の芸術祭とかで、その期間が終わると終わってしまう、それでもそこに、偶然、ないしは必然的に居合わせた人が、その作品を見て、何かしらその記憶に残るようなものがあれば、期間や時間は全然関係ないのかなと思っています。

―― いつか誰かの記憶が芽を出すかもしれない。種まきのようです。

そうですね。本当に。

―― 表現するうえで大切にしていること、普段の生活に対するまなざしを、お伺いできれば。

作品を制作するうえで大切にしているのは、基本の面で『楽をしない』ことです。
制作にあたって、手法を考えに考えることをしています。写真の上に油彩を描くという手法を取りたいといった制作プロセスの手法という部分についても、表現、制作するうえで大事にしたいです。
周りの作家さんたちの表現に常にアンテナを張ることもしています。展覧会の企画をすることも大好きです。それによって、他の作家さんたちを知り、作品を知ったりできます。それが、自分の作家活動に良い影響を与えています。
最近では、香りに興味があって香りがする作品を作ったりしています。

―― 香り、ですか?

香りのある油、油絵具というのか、アクリル絵具みたいなものを作りました。アロマオイルで、これは洋ナシの香りとか、チョコレートの香りとかです。それを使って香りのある絵を作ったりしています。

―― 楽しいですね。小さい子でも、楽しみながら参加できますね。

―― 全世界的に環境がここ2年ですごく変わってしまって。コロナの前と現在、アーティストとして、活動の機会もなかなか人が集えないという制限の中で変わってきたりしています。作品作りでも、何か影響や、お考えが変わったことなど、お伺いできますか。

常に入場者の心配をするようになりました。
イベントをするにもソーシャルディスタンスで観客の席をあけなければならない、アルコール消毒を必ずしなければならないっていうふうな、芸術とは全く違う対応を求められる。心配事が増えたかなっていう状況です。

―― 以前だったら作品の制作とか、企画だけに注力できた部分がそうではないことに気を遣わなければならなくなったという、ことですね。アートの楽しみ方にも制限がかかっています。作品に触れたり、その場の雰囲気を楽しみながらというものから、鑑賞の仕方が全く違うものに変わってしまいますよね。

安全を守るための厳しい制限と、お客さまが楽しめるようなイベントの両立が難しいのではないか、といろんな不安が増えています。

―― なにか解決策っていうのは見えそうでしょうか、アーティストのお立場から。

解決策って言われると、ちょっと今の時点では今後は、どうなっていくのかわからないので、何とも言えないんですけれども、ただ、コロナ禍の中で美術館との対応や、アーティストとしての対応を考えていくことが、勉強になっています。新しい感染に対して、こんなに対応しなきゃいけないんだな、と実感して、これほど考えたことは、今までありませんでした。これを機にいい勉強として、危機対応を考えるきっかけにはなっています。
確か、ニュートンが大学に通っていたそのときにペストが流行って、それで、大学が封鎖されたんですけれども、そこで今みたいに自宅で勉強して、引力について考えていて。

―― 万有引力が、リンゴを!

そう、それで万有引力を発見したという話は聞いたことがあるので、悪いことだけじゃないって思うことにしています。

―― 時代の転換期って新しいものがたくさん生まれるような可能性がありますね。

はい。そうです。

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―― 今後のnextへ期待されることをお聞かせください。

next主催の展示がもっと増えるといいな、と思います。
今、この地域では伊那文化会館の展示室のイメージがあるんですけれども、いろいろな展示施設があると思うので、例えば巡回展のようなものとか、next主催で、next登録アーティストさんを展示するような企画が増えればいいなあ、と思います。また、座談会のような形でアーティストさん同士がお話しできる機会があると面白いと思います。

―― ありがとうございます。私たちも、せっかく登録していただいたアーティストさんへお返ししていかなければならないって、考えています。今後とも、ぜひぜひお願いいたします。今後のご活躍をお祈りいたします。

①お名前、パフォーマンスについては下記から引用。
http://www.chinoshiminkan.jp/schedule/2015/01.html
2015年1月4日[日]~1月5日[月]  【Perceptual domain –Group show-】
インスタレーション、サウンドアート、コンテンポラリーダンスのコラボレーションイベントと作品展示。
アーティスト:宮坂絵美、キモトリエ、宮本一行

<略歴>
1989年 長野県生まれ
2009年 女子美術大学 京都芸術大学出身
2012年‐2013年 個展Orbital sign松本市美術館(長野)
2012年 Shanghai Art Fair ShanghaiMART(上海)
2012年 3331EXPO at 3331Arts Chiyoda(東京)
2012年 Leipzig exhibition at Das Japanische Haus Leipzig (ドイツ)
2013年 個展、グループ展 表参道画廊(東京)
2014年 Play with soundscapeー音風景の可能性ー茅野市民館(長野)
2014年 個展 泳ぐオーロラ space dike (東京)
2014年 個展 知覚領域 松本市美術館(長野)
2015年 グループ展 Perceptual domain Group show 茅野市美術館(長野)
2015年 池袋アートギャザリング 東京芸術劇場(東京)
2016年 Perspective 茅野市宮川寒天蔵(長野)
2017年 冷たい風景 Hanalab.(長野)
2018年 個展 岡谷美術考古館(長野)
2019年 トーキョーインディペンデント 東京芸術大学(東京)
2020年 surface ミレピアーニ(イタリア)
2021年 絵画は歌う 岡谷美術考古館若手アーティスト育成展選出(長野)

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(取材:「信州art walk repo」取材部 山田敦子・白澤千恵子・宮澤瑞希・中村睦子)

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