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File.18 福島淑子さん(現代美術)インタビュー

2024年1月14日にホクト文化ホールで開催中の「next展」にてギャラリートークが開催されました。
今回は出展者の中から代表で福島淑子さんにお話を伺いました。

――現在の活動内容を教えてください。

油画で主に人物画の制作活動をしています。

――絵を描かれるようになったきっかけはなんですか?

小さい頃から落書きやアニメが好きで、小学校の時は他に何もなかったこともあり絵を描くことにハマっていました。上手く描けると褒めてもらえるのでうれしかったです。
中学の時は学校にいる時間が長くなったので帰宅後に描くということはほとんどなかったのですが、急に思い立って描き出すことはありました。当時326が好きだったので影響を受けて文章も添えていたのですが今見るとちょっと見せられないですね。
高校2年生の時に「美術部に入ろう!」という気持ちになって入部しました。その年は上伊那高等学校美術展に水張りパネルのクレヨン画を出品しました。そして2年の春休みに美術予備校に通い始めたことがきっかけで油絵を始めました。予備校は入試対策の制作がメインなので自由制作はできず、たまに家でアクリル絵の具や鉛筆で自由に描いていました(絵の具の移動が大変で油は予備校に置いたままでした)。大学に入り本格的に油絵を始め、予備校時代にできなかった表現に挑戦し惨敗だった記憶があります。芸術祭から始まりバイトで貯めたお金で参加した展示でも次に繋がる反応がないことばかりで、これは方向性が違うと思いました。根本的に筆の使い方が違うのかなと思い、マルレーネデュマスの画集を買って毎日眺めていたらある時自分の中で腑に落ちる瞬間があって、そこからもっと大胆にやってみようというのが今の制作につながる部分だと思います。
2006年に入賞したシェル美術賞の展示で、見にきていたギャラリストの方に声をかけていただいたことがギャラリーで発表ができるきっかけになりました。一番初めはギャラリーが所有するコレクションの奈良美智氏の作品との2人展でした。その際に自分の作品に値段がついていく、展示中にギャラリーを訪問すると赤丸が付いていることを目の当たりにして、作品のクオリティを上げなければとより一層考えるようになりました。ですので作家として絵を描くきっかけになったのはこのあたりの時期かなと思います。

――普段描かれるときに大切にされていることは何ですか?

 現在は2つあります。
 「記憶」と「多様な視線」が私のメインテーマなのですが、これらは制作に必要不可欠です。同じ出来事でも人によって違う事を覚えていたりするので、記憶をもとに制作する中でいろいろな人の視線というのが凄く大切だなと思い、その多様性を制作に活かせるようにしています。
現実と抽象的なものの差を縮めることも制作では重要です。具体的な資料を用意してそこに記憶という抽象的なイメージをはめ込むと、少なからずギャップが発生します。例えば合成画像を作るときうまくいかないとすぐ気がつきますよね、そういうズレを詰めていく作業が必要になります。ここがズレたままだと成立しないので。

《Majestic》2021-2022

――現在の表現方法でこだわっていることは何ですか?

今調整中なのですが、人物で構成された物語画の作画をしています。

――基本は油絵で描かれていると思いますが、油絵を選んでいる理由は何ですか?

油絵具はオイルを使うことで表現の幅が広がります。
作品を図と背景(黒いレイヤーの上にメインの図のレイヤーが載っている状態)に分けて制作しているときは背景を真っ黒に塗っていたのですが、両者の差をつけるために樹脂オイルでコールタールの様に仕上げていました。厚みを出すために塗り重ねるのですが、失敗するとちりめん状になるので部分的に剥ぎ取らざるを得ない繊細な作業でした。そして乾燥に要する期間が1年以上必要で、常に平置きのためスペースの問題もありました。またオイルを大量に使うと亀裂の原因にもなるため、今は制作方法を見直し新しい方向性を模索中です。
油絵具でできる表現は多様です。水溶性の絵の具と組み合わせたりスプレーやペン型のものを使ったりと色々な組み合わせが可能なので、色々試すうちに新しい組み合わせを発見することもあります。偶然出来たものを再現するのは容易ではないですが、作品の完成予想図と思い描いた表現がマッチするまで何回も試作して決まればどんどん描き進められるので研究する価値は大いにあると思います。
一番困るのは乾燥時間です。ですが乾燥時間が長いと拭き取ってやり直しができる等のメリットがあるので一概に否定することは難しいのです。

――やっぱり乾燥が早すぎると出したい色むらみたいなものが出しづらいですか?

ぼかしは乾燥がゆっくりの方がやりやすいですね。 例えばアクリル絵具は乾燥が早いのでやっぱり今のはなし!と急いで拭き取っても間に合わないことが多いですね。

――絵の具のノリや乾燥の速さを自分の好みで調節できる、油絵が良いということでしょうか。

そうですね。アクリル絵具と油絵具を両方使った結果、自分は油画の方がしっくりくることが多いです。油絵はもう足かけ21年なので感覚でやってしまっている部分が多く具体的に説明できないのですが、油絵具の方が表現の幅が広いので調節しやすいのかな…?うーん、アクリルはアクリルの良さ美しさがあるのでゴール次第でしょうか。

――乾燥が早すぎるとどうにもならないですよね。逆にアクリルは無理やり乾燥を遅くさせるものも入れられると思いますが、それはどうですか?

遅乾剤で調節可能ですが、実際試したところ遅くなりすぎて上手くいきませんでした。絵の具の自然な乾燥時間の中で計画的に作業を進めるのが自分には合っているのかなと思いました。


――今後の活動や目標について教えてください。

予想以上に育児が大変で見通しが立てられないと弱気になることが多々ありますが、なんとか制作時間の確保をして今後はコンスタントに発表ができるようにしたいと思っています。

――どんな個展にしたいですか?

人生観やライフスタイルに合わせて作品は変わるので断言できませんが、テーマは変わらず人なのでおそらく人物が存在する作品が並ぶと思います。これまでの展示では油絵がメインでしたがアクリル作品も含め半々くらいで出したいと思っています。

――画材を変えることでどんな違いが出てきますか?

比較するのはアクリル絵具なのですがやはり乾燥時間です。水溶性の良さは早さですね。細かい部分がさっと描け、マスキングテープを使って剥がすと絵の具の段差ができずに綺麗に定着しているので見ると気持ち良いです。子育てがまだまだ続くので乾燥時間の早いアクリル絵具の表現方法を模索したいと思います。
片付けもさっと済むので精神的に楽です。油絵具は専用クリーナーで洗浄後さらに洗剤で筆洗い、筆の数が多いとここまで1時間以上かかります笑 あと筆の乾燥で1日潰れます。発火の恐れがあるのでゴミ捨ては炎天下を避け、ゴミセンターに持ち込むこともあるので夏はなかなか大変です。

――片付けやすさって大事ですよね。揮発性の油って使うと匂いとかきつくないですか?

きついです。アトリエが2階なのですが、描いたあとリビングにいくと臭いがそこまで降りていてびっくりします。その中でご飯を食べているときこれはいかんと思いました。

――今後の目標はなんですか?

震災等いろいろな悲劇的なことが起こるたび、絵を描くことって何なんだろうと考えさせられます。絵が好きなので一生描いていくだろうと思いますが、それと同時に絵を描く意味と、絵で何ができるのかということを考えていなければならないと思っています。
いろいろな人と関わりができるようになってきて、自分のやっている分野で何ができるのかを考えたいです。

――nextに登録したきっかけは何ですか?

2010年ですね、13年前なので具体的に覚えていないのですが、どなたかに教えてもらい、自分でメールしました。申請と書いてあったので通らないかもしれないなとおっかなびっくり送った記憶があります。

――nextに登録してよかったことはありますか?

長野県出身の方、ゆかりの方がこんないるんだなということを知るきっかけになり良かったです。いろいろなジャンルの方、若い方々も沢山いるということを登録するまでは全く知りませんでした。

――nextに期待することはありますか?

展示の機会や、今回のような作家さん同士の交流の機会があると嬉しいです。
今日は初めてお会いしたnext登録者の方や、私と同じく県外から参加された方のお話も聞けて良い経験になりました。

<略歴>
長野県辰野町生まれ
武蔵野美術大学造形学部油絵科油絵専攻卒業
京都造形大学博物館学芸員課程修了
 
受賞歴
2006 シェル美術賞2007, 蔵屋美香審査員賞
2007 シェル美術賞2007, グランプリ
2007 日本学生支援機構 JASSO 平成 19 年度優秀学生顕彰, 奨励賞
2008 日本学生支援機構 JASSO 平成 20 年度優秀学生顕彰, 優秀賞
 
個展
2008 陸の孤島 / ギャラリーモモ六本木, 東京
2009 Lunacy / ギャラリーモモ六本木, 東京
2009 Fog / ギャラリーモモ両国, 東京
2010 ひふのうら / 丸善日本橋, 東京
2010 ( ) / ギャラリーモモ両国, 東京
2011 Spring Snow / ギャラリーモモ六本木, 東京
2014 ゆめうつつ / ギャラリーモモ両国, 東京
2016 Somewhere Someone / ギャラリーモモ両国, 東京
2022 Back to the Past Memories / ギャラリーモモプロジェクツ, 東京
2022 Iridescent Memories / ギャラリーモモ両国, 東京
 
グループ展
2006 シェルアートアワード 2006 / 代官山ヒルサイドフォーラム, 東京
2007 Forerunners Four Eggs (奈良美智 & 福島淑子) / ギャラリーモモ六本木, 東京
2007 シェルアートアワード 2007 / 代官山ヒルサイドフォーラム, 東京
2008 シェルアートアワード 2007 / 京都市美術館別館(現:京都市京セラ美術館), 京都
2008 オープニング展 / ギャラリーモモ両国, 東京
2009 Hop Step Jump / ギャラリーモモ六本木, 東京
2010 Vol.2 Visage / ギャラリーモモ両国, 東京
2011 再生-Re-Generate / ギャラリーモモ両国, 東京
2012 Summer Group Show / ギャラリーモモ六本木, 東京
2012 ナガノ新コンセプトゥス / 志賀高原ロマン美術館, 長野
2013 イマゴ・ムンディ / ルチアーノ・ベネトン・コレクション
クェリーニスタンパーリア美術館, ヴェネチア, イタリア
2018 再生-Regenerate / ギャラリーモモ六本木, 東京
2020 再考-Reflection / ギャラリーモモ両国, 東京
2020 Paper Works / ギャラリーモモ六本木プロジェクツ, 東京
2020 Gallery Show / ギャラリーモモ六本木プロジェクツ, 東京
 
コレクション
ジャン・ピゴッツィ・コレクション

ベネトン財団

(取材:「信州art walk repo」取材部 荒井美千子・香山羊一・倉島和可奈)


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