File.12 小麻智美さん(現代美術)インタビュー
――現在の活動内容を教えてください。
現在は高校で教員をしながら現代美術作品を制作しています。
油絵や立体作品など、様々な作風で創作活動をしています。
――現在の活動を始めたきっかけを教えてください。
大学に入るまでは真面目に油絵を描いていました。
大学は油絵専攻で入学したのですが、周りの人たちがいきなり油絵を描かなくなるという現象がありました。油絵だけに留まらず様々な表現方法でのアプローチを試みているようで、描いている人は少数派というような状況です。
私も新しい表現に挑戦してみたりしていましたが、基本的には油絵を描いていました。
卒業後、制作していく中でテーマが表現方法に先行して浮かんでくることがあります。
それを表現する方法は何がいいかと考えた結果、現在の作風になりました。
――文字を延長するような作風についてお聞かせください。
東京を離れて、松本の母校で教員をしていた際に思い付きました。私は元々阿南町出身の田舎者ですが、なんとなく東京が恋しいと感じるときがありました。
東京に行ったときのにぎやかさ。看板も多いしとにかく情報量が多い。そのような幻想的な部分は、良い意味でも悪い意味でも東京にはあると思います。
大学を卒業してからしばらくは東京で広告の仕事をやっていました。それで看板のサインに興味を持ちました。そして、看板の文字を看板の方から外側に発信する、看板の文字を伸ばしていくようなドローイングをはじめました。
当時は自分の作風に迷っていましたが、都会で展示・制作するにはこういうスタイルがいいかなと思ってはじめました。
――松本では母校の教員をしていたとのことですが、母校の先生を辞めた理由をお聞かせいただけますか。
ビニールでの作品の制作をしていたとき、このまま作家をメインにできるのではないかと思いました。教員の仕事は楽しいしやりがいもありますが、どっちもやっていくのは無理なので、一旦は作家をメインにする方を選びました。
現在は阿南で教員をしていますが、阿南での生活はゆっくりと仕事ができます。畑をいじりながら好きなことができるので、充実していると感じます。
――阿南に戻った際に思ったことを教えてください。
やはり東京は便利です。人もアーティストもたくさんいます。松本に戻ってきたときも便利さを感じていました。
4年前に阿南に戻ってきて、実家で野菜を作りながら制作をしていこうと思った際、阿南はマイペースに制作できるけれど、看板の文字を延長するような都市型の作品は作りづらいと感じました。自然が多いところでは、その土地に合った作風があると感じました。阿南での活動は後者をメインで行っています。
――自然が多いところでの作風を教えてください。
よく様々な土地に旅することがありますが、四角い矩形ではない作風は栃木の温泉旅館で修業をさせてもらった際のものです。栃木は、空気・水・雪といったものも、長野とは少し違います。派手ではなく素朴で、自分と向き合うという意味ではとても良い経験でした。
――制作をする上で大切にしていることを教えてください。
制作・展示する場所によって作風をどう合わせていくのかを大事にしています。疑問に思うことをテーマにして素材を選択していきますが、場所による制約があればそれに合わせますし、無ければ自由にします。絵画ということにこだわり過ぎないようにしています。
――制作をする上で自由になるために行っていることを教えてください。
基本的にアーティスト活動をメインでやってはいきたいのですが、そちらに偏りすぎないようにしたいと考えています。仕事もそうですが、色んなことを体験してみることが大事だと思います。一つのことに没頭しすぎるよりかは、どこかに行ってみたり、体を動かしてみたり。違う方向のことをやってみることが作品のことを考えるヒントになり、より自由に制作することができると思います。
――nextの活動に対する印象を教えてください。
初期の頃から先輩方が名を連ねていたのでチェックはしていました。その頃からnextに入れてもらうのが憧れでした。今までなかなか一箇所に留まることがなかったので、機会自体がありませんでした。今回加入ができるのでありがたいです。
――nextに期待していることがあればお聞かせいただきたいです。
アーティストが作家活動をやって生きていくことは、他の仕事などもあるので難しいことだと思います。活動に集中できない人・生活が苦しい人もいます。作家として食べていくために展覧会や販売につながるサポートがあったら嬉しいです。イベントやWSもやりたいですし、音楽とのコラボ企画があっても面白いと思います。
――今後の活動予定を教えてください。
11月におこなわれる飯田市美術博物館「現代の創造展」には毎年出展していますが、今年も出展します。
――これからの目標を教えてください。
自分で集中してつくりたい作品もありますが、逆に人と関わりながらの制作もしてみたいです。話を聞いて、制作のヒントを貰ったりしてみたいです。
(取材:「信州art walk repo」取材部 清水康平・宮澤瑞希・塚原夏樹・山田敦子)
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