【第1章】没入感こそ“ナマ体験”の極み、
大学時代に日本美術史を専攻した私の研究対象であった雪舟に関して、前衛的美術家の赤瀬川原平(1937-2014)は次のようなエッセイを寄せています。
「雪舟という名前がいい。名前がもうそのまま水墨画のイメージである。」(赤瀬川原平「切手の雪舟を剥いで見る」)
これはエッセイの冒頭であり、その後は雪舟について少し批判的に述べた文章であるのだが、水墨画は実物をみなければ、真の理解にはならないという趣旨で、実物を見る体験(筆者はここで“ナマ体験”という言葉を使う) がいかに大切