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東京都現代美術館 「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」


東京都現代美術館の「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」を見に行ったので感想を書いていきます。
3人の若手のアーティストの映像作品のグループ展です。

潘逸舟

1987年生まれ。上海で生まれ、9歳の時に青森に移住。中国から青森に移ったこと、そのことが、作家の作品のベースになっているそうです。

まず、写真の展示があります。

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人間が領土になるとき(2016)
海の俯瞰の写真で、島のようになっている岩場の上に作家が横たわっています。

奥の展示室に入ると、暗い展示室の中でプロジェクターで数カ所投影された映像が映っています。モノクロの映像が映っているところだけが煌々と四角く光っています。

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戻る場所(2011)
作家は裸で海岸の岩場(日本海のような)の上に立って海を見つめています。海から、服や靴が現れます。それを作家は着て元のように海を見つめます。これは、実は映像が逆回転になっています。服を脱いで服や靴を投げ捨げているのですが、逆回転にすることで着ているようにしているのです。

私にとっての海は原風景ではなく、自らの生活を映し出してくれる形なきものである。私はそこに介入することによって、形なきものとの関係を可視化してゆく。
___展示会場のパネルより

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そのほかにも、箒で掃いたり、波を回収したり、海をモチーフにした作品で構成されています。
作家は色んな角度で海というものをとらえ、作品にしています。

ここでの海は、どの社会的、政治的な文脈にも縛られない場所であると同時に、国家と国家の間を表す場所でもあり、また、人間を凌駕する自然の力そのものであると同時に、社会が個に及ぼす大きな力を象徴します。
___展示会場のパネルより

海をそんな風に捉えたことがなかった私にとっては、新しい感覚でした。
潘さんは映像以外にも作品を作っているようなので、見てみたいと思いました。


小杉大介

1984年東京生まれ、オスロ在住。

円形の劇場のような場所で「すべて過ぎる前に忘れて」
その奥に「異なる力点」という作品が展示されています。
今回展示されている作品は作家の家族との協働を通して作成されたそうです。

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すべて過ぎる前に忘れて(2021)

異なる力点(2019)
こちらの作品を約50分観ました。(写真が撮れておらず・・すみません)
これは作家の父親をモチーフに作成された作品です。ドキュメンタリーではなく、舞踏家の岩下徹氏が演じています。作家の父親を投影している「タダシ」は脳の病気にかかり、次第に身体が変化していきます。建築と身体の関係に焦点を当てたかったとインタビューで作家が語っています。

参考 Exposition Daisuke Kosugi – Jeu de Paume, Paris YouTube

決して感情的・悲観的に映像を構成しているわけではありません。淡々と身体は変化していき、生活している建物は変わららず、そこにあります。
悲観的にも観ることはできますし、観終わった直後は私も少しそういった気分になりました。でも、今思うと「タダシ」は淡々と生活しているように見えました。それが悲観的なことでも、希望的なことでもなく。非常にフラットに今は感じます。


マヤ・ワタナベ

1983年リマ生まれ、アムステルダム在住。
作家はペルー内戦が始まった頃に生まれ、大きな影響を受けてきたそうです。
ペルー内戦をモチーフにした映像作品が展示されていました。
作家は、映像を説明する文章がとても重要とインタビューで語っています。

参考 「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」展 参加作家 マヤ・ワタナベと担当学芸員による対談 YouTube


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境界状態(2019)
ペルーの内戦で犠牲になった集団墓地で地面を接写している作品です。ぼやけた映像で時にフォーカスが合います。その時、虫や骨や歯、衣服などが映し出されます。全体的にとても幻想的で美しい映像だと私は思いました。グレーの世界です。映し出されるものが、とても重いものなので、ペルーで起こったこと、この墓地で起こったことに思いを馳せざるおえません。


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銃弾(2021)
発砲によって亡くなった身元不明の犠牲者の頭蓋骨の内部の映像が大きなスクリーンに映し出されます。初め、頭蓋骨全体の映像から始まり、内部へカメラが進んでいきます。内部にはかつて、脳があり、血管があったのだと思います。有機的な頭蓋骨の内部からそれが生物であって、人間であったということを強く感じました。

直接的に遺体の一部を使って作品を作っているというのがすごく大変なことだと思いました。それが政治的なことにも関係しているということで、とても勇気のいることだと思います。遺体に接触する際には、専門家に立ち会ってもらっているなど、遺体に対しての敬意をできるだけ表しているようにも見受けられました。


一人で行くと思う存分映像が観れるのでいいですね。
時間を作って長編がじっくり観れるように計画して行くのも手ですね。

それぞれの作家さんの想いが美しい展示で表現されていたと思いました。

東京都現代美術館
MOTアニュアル2021 
海、リビングルーム、頭蓋骨
2021年7月17日(土)- 10月17日(日)
当日券も買えますが(私の場合、土曜のAMでも並ばず買えました)
美術館は予約優先チケットをおすすめしてます。


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