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40arts|ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END(森アーツセンターギャラリー)

かわいくて幻想的でちょっと奇妙な世界観、繊細で緻密な描写で大人気のヒグチユウコさんの展覧会に行ってきました!

ヒグチユウコの人気ぶり

ヒグチユウコさんは『せかいいちのねこ』シリーズや『ギュスターヴくん』(今井昌代と共著)といった絵本のほか、ホラー映画のオルタナティブポスター(宣伝用でないアートよりのもの)や本の装幀、グッチやホルベイン、ラデュレなど企業とのコラボレーションワークでも活躍する画家・絵本作家です。

表参道にあるオフィシャルグッズストア「ボリス雑貨店」では、書籍やステーショナリー、ファッション雑貨、複製原画などの販売と展示を行っています。石黒亜矢子さんやキューライスさんといった他の作家さんのグッズも取り扱っていますよ。

先日、恵比寿のGalerie LIBRAIRIE6で開催された「The Zodiac Sign」展では、整理券配布や原画の抽選販売があったくらいなので、ヒグチファンには熱狂的な方が大勢いる模様。私もそんなヒグチファンの友人と展示へと向かいました。

メトロハット(日比谷線から上がってくるところ)のムービー

全国を巡回した展覧会が再び!

本展は、2019年の世田谷文学館を皮切りに全国を巡回。当初は約500点だった展示品もなんと約1000点と倍増して、東京に凱旋しました。

世田谷文学館は絵本やマンガの展示などを多く開催するミュージアムで、明るくて素敵なところですが、さすがに森アーツのように広大な展示スペースはありません。雪だるまみたいに大きくなって帰ってきたのですね!

ショップでは新規グッズのほか、ノーマル図録の位置付けとなる『ヒグチユウコ画集 CIRCUS Exhibition Edition』と、これまでの巡回展示の集大成・スペシャル図録となる『画集『COLLECTION OF WORKS 2023(SPECIAL EDITION) Heart/BORIS』』も販売。
後者は、CIRCUS展のアートワーク、全10会場でそれぞれ描き下ろされたポスターとチケットが収められた、激ヤバなコレクションアイテムです!

不思議でかわいいい仲間たち

ヒグチさんの作品には、愛猫のボリスや『ほんやのねこ』の主人公こはるちゃんといったネコをはじめ、ネコの顔にヘビの手、タコの足をしたギュスターヴくん、白い体躯に6本の手をもつひとつめちゃん、星に火星人のような足が生えたオカヒトデなど、不思議なキャラクターが登場します。

どの子も本当に表情豊か。単純な喜怒哀楽ではない、「疑惑」「失意」「面倒臭い」といった複雑な感情を読み取ることができます。そうした人間臭い感情が表れている作品をみると、作家はもちろん彼ら自身にも、慈しみの心が宿っているように感じました。

友人曰く、かわいいネコちゃんと同じくらい、心臓や肺といったグロテスクなモチーフもお好きで、画集『fear』を自費出版したほど。「愛」というワードで語るのも陳腐ですが、恐怖の感情にすら愛おしさを感じているのか、かわいさと怖さが同居した表現となっています。

堅実な画力と血肉化した表現

昨今は絵画や工芸、切り絵といった多彩なジャンルで、超絶技巧系の作家が話題にのぼることが多いですよね。作家もディテールをつくり込むのが楽しいのではないかと想像します。ヒグチさんも毛並みやシワの線の多さ、モチーフの密集度は高さがありながら、ギラギラとした攻撃的な圧はあまり感じません。

和紙に描くことで、線や色彩に柔らかさが出ることも理由のひとつでしょう。加えて、技術が目的になっていないことも大きいのではないかと思います。
ヒグチさんの場合は、技巧に走る線ではなく、自身の創造した世界を描き出す内向的な線という印象を受けます。結果的に絵力はあるのですが、キャラクターの個性や物語性が滲み出てくる表現を目指しているように感じました。

15〜16世紀の画家ピーテル・ブリューゲルやヒエロニムス・ボス、江戸時代の絵師 伊藤若冲のオマージュ作品では、彼らのテイストをそのまま再現しつつも、おなじみのキャラクターを混入させることでヒグチ色を出しています。

そもそも、ヒグチさんの画風はブリューゲルやボスの奇妙さ、若冲のリアリティと親和性が高いでしょう。特筆すべきは、自分流にアレンジして描くのではなく、同じ世界観を共有しながら、同じ時空に存在するはずのない作家と自身、両方の画風を保持して描いていることです。
恐ろしい画力とコピー能力です。

オルタナティブポスターの作品群でも、その描写力の高さを窺い知ることができます。

平面から立体へ広がる世界

会場には平面作品のほか、ボリス雑貨店の展示で制作された立体物も多数みることができました。ボリス雑貨店には、オリジナルのファブリックを張った家具や洋服、食器といった商品も並んでいて、潤沢な資金があれば住空間ごとヒグチワールドにできるのです。

こけしの展示もやっていたそう
全然気軽じゃないけど、コラボ商品でもヒグチワールドを取り込める

ほかにも、展示室には驚き盤(コマ送りの絵を回転させて隙間から覗くアニメーション)や覗き穴、小さなトンネルなど、来場者を楽しませる仕掛けがたくさんあります。隅々見ても見切れないよ〜!

コラボカフェも要チェック

こちらのメニューは終了

コラボカフェでは、ヒグチさんの世界観を満喫できるメニューが目白押し。現在、お皿のスーベニア付きメニューは終了していますが、ドリンクやグラススイーツはお楽しみいただけます!
※お皿のかわりに展覧会ポスターをプレゼントで再開したそうです!
鑑賞前は利用できないので、閉館時間や並ぶ時間を考慮してご利用ください。

 グラスに貼り付けたシートはお持ち帰りOK


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