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58arts|青森 現代アートに出会う旅 1 八戸市美術館

夏の青森へ、現代アートに会いに行ってきました!
2024年は青森のアートを五感で感じる「AOMORI GOKAN アートフェス」が開催中で、今回はその参加施設を訪れましたが、バスツアーで行ったのでフェスの展示や企画展は観たり観なかったりです。


八戸市美術館

外観

八戸市美術館は、アートを通した出会いが人を育み、人の成長がまちを創る「出会いと学びのアートファーム」がコンセプトの市立美術館です。アーティストや美術館スタッフと協働して美術館活動に関わる市民「アートファーマー」(東京都美術館の「とびラー」のような存在)とともに、アートによるコミュニティ育成に取り組んでいます。

建築

ジャイアントルーム

1階中央のロビーに相当する空間は、八戸市美術館を象徴する「ジャイアントルーム」。橋に使われる構造(おそらくトラス構造)により、柱のない広い空間を実現、可動式の壁や机・椅子などにより、展示にもワークショップにも多目的に使える部屋です。
飲食も可能なため、アート鑑賞だけでなく勉強や休憩に利用する市民もいるそう。

須賀川市民交流センター tette(テッテ)も、市民が自由に集える場でした。

AOMORI GOKAN アートフェス 2024 メイン企画
エンジョイ!アートファーム!!

時計が公園のようで良き

このジャイアントルームでは、アートフェス企画として、5人のアーティストによる展示・パフォーマンスが行われています。

しばやまいぬ 展示

しばやまいぬ さんは、少女板画作家・イラストレーター。溌剌とした制服姿の少女たちの日常にファンタジーが潜り込む、そういった現代のサブカルチャーにありそうな世界を、伝統ある木版画の技法で表現しているのが新鮮です。

ほかにも、ジャイアントルームを森に見立て昆虫採集できたり、来館者が新種の虫を加えたりできるプロジェクトも担当しています。

東方悠平 展示

東南アジアとの関わりが多い東方悠平さんは、ベトナムで見つけた野生のバナナを手がかりに、一人ひとりが考える「自由」について語り合ったり、表現したりしながら、ジャイアントルームに現代版の「自由の女神」を建設します。とのこと。

野生=自由なイメージですが、人間に発見されて、販売されたり、人間好みな品種改良をされたら自由ではないな、などと思いながら、緑のバナナっぽいものを見つめていました。

コレクションラボ008
彩る書

展示室の入り口で書道体験もできる

コレクション展では、「彩る書」と題した展覧会が開催されていました。
さすが市立美術館、その土地ゆかりの作家による渋い展示を行なっている……と思いきや、現代的な感覚で楽しめる作品ばかりでした。

佐々木月花《甲骨文(臨書)》1994年

こちらは実際に出土した甲骨文字を書いた/描いた作品。漢字にはものの形から生まれた象形文字もあるのだから、意味のある文字として読む、運筆の巧みさをみる以外にも、鑑賞の仕方があっていいはず。

熊谷渓雨《源氏物語 須磨》1981年

例えば、これは何が書いてあるかはわからないけれど(くずし字は未履修)、霧雨か草か、細くゆらめく文字の列は、物悲しい雰囲気があります。

キャプションを見ると『源氏物語』の須磨の巻が書かれているらしく、なるほど、不倫がバレて親しい人に別れを告げ、自ら流刑地に赴く光源氏の気持ちかと、納得しました。

元の作品は和井田要《赤白黒》制作年不詳

筆でなぞってみよう! のコーナーも。展示作品を原寸大で印刷したものを、書道パフォーマンスで使うような大きな筆でなぞります。
全然、筆の運びが、わからない! けれど、緩急の付け方は体感できた気がします。

山上新平展「KANON」

山上新平 展示

一般企画では、写真家の山上新平さんの写真集出版を記念した展示が行われていました。
これまで木のような「命ある静物」と向き合い撮影してきた山上さんが、次なるテーマにしたのは「動的を見つめる」こと。会場には、チョウや波の写真が並んでいます。

けれど、今にも動き出しそうなダイナミックな写真、というわけではなく、羽ばたきやさざなみといった複数の細かい動きが静止画として映し出された作品には、静謐さが漂います。「動き」を存在として捉えたような印象を受けました。

tupera tupera のかおてん.

クリエイティブ・ユニット tupera tupera(ツペラツペラ)による「かお」をテーマにした展覧会は、2020 年から7会場を巡回して、この八戸会場でが最後になります。
tupera tuperaは、亀山達矢さんと中川敦子さんによるユニット。絵本『パンダ銭湯』『かおノート』やEテレ「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションで知られ、その明快な色とかたちは、子どもも大人もワクワクさせてくれます。

展示の前半では、これまでの絵本が原画や立体物を交えて紹介されています。
完成品となる印刷物では、絵のタッチや技法が意外とわからないもので、原画をみて初めて「手描きなのか」「これは切り絵だったのか」と驚くことがあります。

かお後
かお前

展示の後半には、展覧会のメインテーマである「かお」にフィーチャーした、体験型の展示が待っています。
朝ご飯やお菓子、文房具、石といったアイテムを組み合わせて顔をつくり、それぞれのプロフィールまで添えられた展示は、かおひとつで何度も笑えてしまいます。

武蔵野美術大学の学生さんによる立体造形、自分の体や用意されたパーツを使って顔をつくれる《床田愉男》(ゆかだゆかお)は、まるでかおのテーマパークです。

この展示に合わせて、八戸市美術館のいたるところに顔が出現しています!

また、八戸市美術館では「かおパス」なるものが存在しています。
これは「かおてん.」だけでなく、他の企画展のときも設置しているフリーパスです。展覧会ごとに料金を払い、顔認証システムに認証データを登録すれば、会期中は該当の展覧会に何度でも入場できるのだそう。

「かおパス」で入れてしまうなんて、とてもかっこいい技(?)ですね。

★おまけ情報

2024年3月、館銘板(館名の文字が立体になっている看板)の「美」の文字がなくなる事件があった八戸市美術館。その1カ月後に館長がスチレンボードで「美」を制作して設置、SNSで話題になりました。(5月に新しい館銘板が再設置されたそうです)
そういえば、そんなこともあった気がするけれど、八戸市美術館だったのか!

美術館のものづくり力の高さを感じさせるエピソードですね。

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