壁量計算について
独立して木造住宅をやるようになり、そこで思ったことを。
一般的な木造住宅はいわゆる4号建築物と呼ばれ、簡易な審査のみで確認申請を行うことができ、仕様規定を守れば構造計算を行わなくても設計を完了させることができます。(2025年4月に改正予定)
その仕様規定の中にある壁量計算と許容応力度計算の違いについて気が付いたことを忘備録としてまとめます。
今回検討対象とする住宅の条件は以下とします
・木造2階建て
・第二種地盤(Tc=0.6秒)
・1F:50㎡、2F:50㎡の延床100㎡
・階高2.8m
・金属板などの軽い屋根
・固定荷重は2F、RFともに1.0[kN/㎡](地震力算定用なので壁重量も含めた数値としています。おおよそこの程度になるかと思います。)
・積載荷重(地震用)2F:0.6[kN/㎡]、RF:0.4[kN/㎡]
まず壁量計算とは何ぞやということなのですが、ざっくりいうと規模に応じてどのくらい壁が必要かというのを以下のように規定しているものです。今回は地震力のみに言及します。
以下の図から必要壁量が求められ、その壁量に対して1.96[kN/m]を乗じることで短期許容せん断耐力が算出されます。
まずは壁量計算から必要壁量と短期許容せん断耐力を求めます。
$$
2Fの必要壁量:
{50_{[m^2]} \times 15_{[cm/m^2]} = 750_{[cm]} =7.5_{[m]}}
\\
2Fの許容せん断耐力:
{7.5_{[m]} \times 1.96_{[kN/m]} = 14.7_{[kN]}}
\\
\\
1Fの必要壁量:{50_{[m^2]} \times 29_{[cm/m^2]} = 1450_{[cm]} =14.5_{[m]}}
\\
1Fの許容せん断耐力:
{14.5_{[m]} \times 1.96_{[kN/m]} = 28.4_{[kN]}}
$$
以上より、壁量計算における短期許容せん断耐力が求められました。次に、許容応力度計算に用いられる地震力を算出します。
$$
設計用一次固有周期T:
T = h(0.02+0.01\alpha) = 5.4 \times 0.03 = 0.162_{[s]} \\
\\
T < T_cであるので、振動特性係数R_t = 1\\
\\
\alpha_2 =W_2 / W = 1.4 / 3 \\
\\
A_2 = 1 + (\frac{1}{\sqrt{\alpha_2}} - \alpha_2) \frac{2T}{1 + 3T} = 1.22\\
\\
C_1 = 0.2 \\
\\
C_2 = Z \times R_t \times A_2 \times C_0 = 0.244
$$
以上より、2Fの層せん断力Q2及び1Fの層せん断力Q1は
$$
Q_2 = C_i \times W_i = 0.244 \times 1.4 \times50 = 17.1_{[kN]} \\
Q_1 = C_i \times W_i = 0.2 \times 1.6 \times50 + Q_2 = 33.1_{[kN]} \\
$$
まとめると
・壁量計算による2Fの短期許容せん断耐力:14.7[kN]
・壁量計算による1Fの短期許容せん断耐力:28.4[kN]
・2Fの層せん断力:17.1[kN]
・1Fの層せん断力:33.1[kN]
となり、壁量計算による短期許容せん断耐力はC0=0.2における地震力よりも小さいことになってしまいます。耐震等級3を取得する場合は地震力がこの1.5倍となってしまうのでなおさら下回ることになります。4号建築で壁量計算で設計を行うのはよいけれど、背後にある数字も気にしながら設計したいものですね。
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