裂を裁つ
大寒を過ぎたころ、強い寒気の影響で各地で大雪となり、アルスシムラ嵯峨校にも今までにないくらいの雪が積もりました。
日ごろ見られない嵯峨野の白銀の景色に包まれ、生徒さんたちは卒業制作展に向けて織る日々です。
着物を織り終え、機からおろし、伸子張りをして裂地を整えると、裁ち合わせをします。織りあげた長い反物に、着物の部位ごとにはさみを入れていく作業を裁ち合わせと言います。
この裁ち合わせで仕上がりの印象が大きく変わります。誤ってはさみを入れると、着物のデザインに大きく影響するので、裁ち合わせの準備は講師も立ち会い互いに確認しながら行います。
そして裁ち合わせの日、志村洋子先生と講師が見守るなかではさみを入れます。
裁った裂を、衣桁に一枚ずつ掛けていくと立体的になり、織り続けた裂が別の姿に変わったようです。
私が染めて、私が織って、私が着る、この最後の集大成は着物を纏うこと。
それには、裂を切り離さなければならず、そして、纏うことで裂とご自身が一段階変わるメタモルフォーゼをしっかり見届けて欲しいと志村洋子先生が皆さんに話しました。
日々、気持ちを向けてきた織物は自分にとって大切なもの。それだけに裁つ作業は、不安と期待が入り混じります。衣桁にかけた着物は、自立して、今度は裂が、自分自身に問いかけてくるようです。
卒業制作展に向けて、生徒さんたちの裁ち合わせは続きます。
2022年度アルスシムラ卒業制作展は、2023年3月10日(金)~12(月)まで、京都市京都文化博物館6Fにて開催いたします。
皆様のご来場をお待ちしております。
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