安心して狂っていたい

9月某日

思えば僕はずっと狂っていた気がするし、狂ったままでいられることを、少し嬉しく思っていた。

群馬旅行へ。友人というか仲間というか先輩というか、とにかくとても信頼している人たちと、車の中でああでもない、こうでもないと話をし続けた。こうやって集まるのは2年ぶりのことで、僕たちは少しずつ歳を取っている。いつまでこんなことを続けられるのだろう。
楽しくて、楽しすぎて、夢なんじゃないかとまで思った。夢みたいな二日間はすぐに終わった。

9月某日

群馬旅行から戻ることなく、台風が迫る東京に快速列車で飛び込んだ。東京に行く予定ではなかった。神田にある1泊1,600円のホステルを予約して、汗くさいドミトリーベッドで嵐の音を聞きながら眠る。
「夜には一気に世界が変わる」らしい。まさに世界が変わっている最中の東京を、狭い二段ベッドの下で想像する。うなりを上げる風、木の葉が空に吸い込まれるように飛んでいく。
起きて、東京駅まで20分ほど歩く。高層ビルの高いところに木の葉が貼りついている。水たまりを蹴って、公園のベンチで髭を剃った。
東京駅から今度は新幹線に飛び乗る。名古屋へ。名古屋に行く予定も急に決まり、1泊2日分の荷物で3泊目に突入しようとしている。

9月某日

非日常が好きだ。しかし、それは裏返すと日常をうまく愛せていないからなのでは、と勝手に思う。そんな風に自分の好きのポケットをたくさん裏返してしまい、中に入った大切なものをいくつも落としてきた。
はじめての土地はいつだって興奮する。誰かにとっての日常が僕の非日常になる。ああ、また裏返してしまう。好きを好きなままで持っていたいよ。名古屋に来た。

9月某日

ZINEを作りたいとずっと思っている。
一応説明しておくと、ZINEとは個人が作る雑誌のようなもの。写真や絵、文章などを載せることが多い。
ZINEを作りたい理由が特にあるわけではない。でも人々がZINEを作りたい理由はなんだか分かる。なんとなく。
僕は部屋で文章を書くことが少ない。一番多いのは街の中か電車の中で、ふと思いついたことをふらふらと書く。たぶん携帯電話やスマートフォンがなければ、ブログなんてやっていなかった気がする。
特にひとり旅のときは文章を書きたい気持ちが高ぶって、行きたい場所をいくつか逃してでも書き続けてしまうことがある。誰かに伝えたい思いを留めておけない。
だから旅行記のようなものを作りたいなと思っている。もしかしたら今回の旅は絶好のチャンスかもしれない。

9月某日

安心して狂っていたい。好きな人と一緒にいる僕はだいたい狂っている。突拍子のないことをして、極端なことを言う。
こういうことは、信頼を寄せる人の前でしかできない。最初から狂った人と思われてしまっては、きっと友情も信頼も得られない。
僕が狂えるのはあなたのおかげ。ずっと狂ったままでいたいな。いつまでこんなことを思っているんだろう。

#エッセイ #日記

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