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石本さんのこと
ヘルシンキ郊外のイッタラアラビアデザインセンターへ。
アトリエツアーは本来グループでの参加なのだけど、メールで問い合わせたところ、運良くマンツーマンで受けられることに。ガイドのクリスティーナさんは日本語がとてもお上手で、ここぞとばかりに質問攻めにしてしまった。
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生活に根差したデザインのものが多い
この時はアトリエが秋休みだったのだけど、偶然(!)このデザインセンター唯一の日本人アーティストで、元マリメッコのテキスタイルデザイナーの石本藤雄さんがいらして、たくさんお話を伺うことができた。
アトリエの中は新作があるので撮影はできなかったけれど、その制作風景を垣間見られるアトリエの中でたっぷりとお話するのはとても贅沢な時間だった。
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技巧の妙が尽くされた作品の間を通ってアトリエにお邪魔すると、石本さんが私のマリメッコの赤い肩掛け鞄を見て、「ぼくの作った鞄だ」とにやりとした。
ずっと愛用しているものなので、偶然に驚くと、「昔の学生鞄にインスピレーションを受けてデザインしたんだよ。でも、これはサイズが小さくなっているんだね」
「前使っていた大きな方ははじめてフィンランドに来た時に買って、ずいぶん長い間使って草臥れてしまったので、新しいものを買ったんです」
「これは頑丈だから長いこと使えるでしょう、金具もしっかりしたものを使っているからね」とにこにこしていて、私もなんだか嬉しかった。
マリメッコの石本さんのテキスタイルは鮮やかで、茶目っ気があって可愛らしくて大好きでした、と言うと、石本さんが日本の愛媛から鞄ひとつで放浪してフィンランドに来て、マリメッコからアラビアに至るまでの半生を話してくれて、才あってこつこつと励み作り続ける人の前にはそれに見合うだけの場が開けるのだなあと感じ入った。
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テキスタイルから陶芸へ、マリメッコでのデザインからアラビアのアトリエへ移ったいきさつを聞くと、創作の自由を求めて、心ゆくまで好きなことができて、移りゆく自然の美しさを眺めながら制作に没頭できるこの場所へ至ったことが、本当に石本さんの幸福なのだろうなと感じた。
微妙な陰影の作品をじっと見ていると、黒に灰色の方は、《雨どいに積もった雪としたたる水》、藍色の方は《池に張った薄氷》をモチーフにしたものだそうで、「土を捏ねて、釉薬を塗って、焼いてみるまで出来上がりがどうなるかは分からないから、いつもチャレンジなんですよ」と石本さんは笑った。
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Oct 8th, 2019
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