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消費税の割戻し計算と積上げ計算について

(この記事は、2023年10月1日現在の法令を元に作成しています。)

インボイス制度が導入されて初の決算を迎えている経理職の皆さん、お疲れ様です。
インボイスの導入に伴って、消費税納付税額の計算方式に特例が認められることになりましたね。

ところで、元々の割戻し計算と特例の積上げ計算について皆さん説明できますか?
自分は再確認するために国税庁のHPを確認したのですが、計算式の意味が全く分かりませんでした。

国税庁HPより

消費税率は10%か軽減税率8%のはずだけど、110分の100とか110分の7.8とかの計算式がどうやってでてきたのでしょう。
現在は会計システムで自動計算できますし、とりあえず丸暗記すれば計算はできますが、なぜそのような計算式になるのか理解できていないと、人に説明することもできません。

そこで、文章や計算式を分解してみることにしました。


割戻し計算の分解

まずは、割戻し計算を下図のように2つに分解します。

国税庁HPでは硬い言葉で説明していますが、要するに以下のことをやろうとしています。
①・・・1年間の「税込」の売上合計額から1年間の「税抜」の売上合計額を算出
②・・・①で計算した税抜金額から1年間に受け取った消費税額を算出

①110分の100の謎

次に、110分の100がどこから導き出された数字なのかについて解説します。

それを解説するにあたり、まず、普段の生活の中で税抜金額から税込金額をどのように計算するかを考えてみます。

例えば、税抜30,000円商品の税込金額を求める計算式は以下の式になります。(消費税率が10%の場合)
30,000×1.1=33,000

1.1は110%のことですね。110%を分数にすると110/100となります。
それを先ほどの計算式に代入すると以下の式になります。
30,000×(110/100)=33,000

ではこの計算式を踏まえた上で、税込金額が33,000円と分かっている場合の税抜金額を求める式はどうなるでしょうか。
仮に税抜金額をXとした場合、以下の式になります。
X×(110/100)=33,000
このまま、Xを求めてみましょう。
X×(110/100)×(100/110)=33,000×(100/110)
X=33,000×(100/110)

ここで、110分の100がでてきました。
上記の計算式によって、110分の100がどのようにして導き出されたのかが判明しました。
よって、税込金額に110分の100を掛けることで税抜金額を算出することができます。
(軽減税率8%の場合には、110が108に変わるだけで考え方は同じです)

②7.8%または6.24%の謎


続いては、7.8%または6.24%がどこから導き出された数字なのか解説します。
もう一度、国税庁のHPを見てみましょう。

消費税率は10%か軽減税率の8%なので①の110と108という数字は容易にこの税率のことだと想像ができますが、7.8と6.24は一体何の数字なのでしょうか。
その応えが、国税庁HPの別ページにありました。

国税庁HPより

なんと算出していた税額は、全消費税額の内、地方消費税率を除いた税額だったのです。
そんなのさらっと書かれても、説明してくれないとわかりませんよね・・・。

では気を取り直して、消費税額を計算してみましょう。
消費税率10%の場合の地方消費税率2.2%を除いた税率は7.8%であり、それを分数にすると7.8/100となります。
税抜金額に消費税率を掛けると消費税額が求められますので、先ほどの計算式の例で用いた税抜30,000円で計算すると、以下の計算式となります。
30,000×(7.8/100)=2,340

割戻し計算式の解明

ここまできたら、計算式の解明まであと少しです。
もう一度、国税庁HPを確認してみましょう。

割戻し計算でやろうとしていることは、以下の2つでした。
①・・・1年間の「税込」の売上合計額から1年間の「税抜」の売上合計額を算出
②・・・①で計算した税抜金額から1年間に受け取った消費税額を算出

そして、それぞれで以下の計算式を導き出しました。
①X=33,000×(100/110)
②30,000×(7.8/100)=2,340

①では税込金額(33,000円)から税抜金額(30,000円)を求めており、②では税抜金額(30,000円)から消費税額を算出しています。
そこで、②の税抜金額(30,000円)に①の式を代入してみます。

33,000×(100/110)×(7.8/100)=2,340
33,000×(7.8/110)=2,340

国税庁HPに出てきていた110分の7.8がついに出てきました。
110分の7.8というのは、ここまでの計算をぎゅっとひとまとめにしたものだったのですね。

軽減税率8%についてもこれまでの計算を応用すれば108分の6.24という数字が導き出されます。

積上げ計算について

続いて、積上げ計算について解説をしていきたいと思いますが、長くなりましたので一旦このへんで。
また次の記事をお待ちください。

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