アサクリ騒動考察・「存在しない」差別
注意
この記事はアサクリとまったく関係ありません。
アサクリのゲーム内容だとか、開発者の発言の是非だとか、弥助は侍だったのかどうか等については、まったく議論しません。
今回の炎上騒動が自分ごとに思えない方に向けて、ひとつの引っ掛かりを提供することを目指す記事です。
炎上の経緯
ゲームメーカーUbisoftの最新作、「アサシン クリード シャドウズ」の公式トレーラーが2024年5月16日に発表されました。
ゲームの舞台は待望の日本・安土桃山時代!……なのですが、その発表内容に大きな批判が巻き起こりました。
日本が舞台であるにも関わらず、主人公に抜擢されたのは弥助というアフリカ系黒人男性だったのです。開発者がインタビューで語った「(日本人でない)私たちの侍」発言なども合わさり、チェックリスト式ポリコレだ、日本差別だ、文化盗用だ、歴史修正だ、などと炎上したのです。
しかしながら、この炎上は主に海外コミュニティで起こり、日本コミュニティまでは延焼しませんでした。
もちろん話題にはなりましたが。当事者である日本人に、「大して気にしていない」という人も多かったようです。これが「日本における表現への寛容さだ」と考えている人も居るのではないでしょうか。
しかし、この態度は本当に問題ないのでしょうか。
「存在しない」差別
海外で大々炎上したはずの本件が、日本において大して燃え広がらなかったのは何故でしょうか。
海外の文脈では大問題だが、日本の文脈では問題ないからです。
欧米では人種差別が大きな問題となっています。
しかし、日本に住んでいるとあまり実感が湧きませんね。差別が「存在しない」わけです。
ただし注意してください。私は「差別が日本に存在しない」と主張しているのではありません。
「あなたの認識に存在しない」と主張しているのです。
「それ」は何を意味するのか
唐突ですが、私の体験談をひとつ紹介させてください。
ヨーロッパへの初出張でした。ヨーロッパのとある空港で、イスに座って搭乗時間を待っていると、ひとりの可愛らしい子供が私のところに近づいてきました。彼はこっちを向くと、両の目尻を人差し指で吊り上げ、細目にしました。
実はこれ、アジア人の顔つきを揶揄するジェスチャーです。諸説あるのですが、人種差別的・侮蔑的ジェスチャーとされていて、未だにあちこちで炎上を巻き起こしています。
ここでクイズ!
それを見た私は、そのとき、どのように思ったでしょうか?
認識しなければ存在しない
正解は「意味が分からずに困惑した」です。
私はジェスチャーの文脈を知りませんでした。可愛らしい子供による、意味の分からないジェスチャーです。私は微笑んでいることしかできませんでした。
その意味に気づいたのは、随分後になってからでした。
これがとても怖い事だと思う方はどれだけいるでしょうか。
そのときの私に、差別されたという感覚は存在していませんでした。
しかし、あの子の中には確かに私をからかう意思があったはずです。
そして、そのときの私は不愉快を覚えませんでした。
私の気は害されなかったのだから、何も問題は無かったのでしょうか。
欧米の文脈では、今回のアサクリは大炎上を巻き起こしました。
一方で、日本の文脈に属する少なくない人々の気は害されませんでした。
では、何も問題は無かったのでしょうか。
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