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今週の振り返り 10/4~10/8

今週のニュースを取りまとめ
今週は大きなイベントもあり、相場は大きく動く1週間でした。
来週はどの様な動きになるでしょうか?

◆今週の振り返り

まず、今週のメインイベントは8日に発表された米雇用統計。市場予測を大きく下回る結果となりました。
10月雇用統計の振り返りは下記で少し詳しく行っています。

パウエルFRB議長は先月、9月の雇用統計が「適切な」結果であれば11月にテーパリングを開始する準備が整うと表明しています。
今回の結果が「適切」かどうかは議論があるとは思いますが、少なくとも「不適切」ではないと。
ただし、インフレ懸念やサプライチェーンの供給制約、新型コロナウィルスの感染再々拡大懸念による職探しを行わない人の増加、そこにワクチン接種の義務化が人手不足に拍車をかけるなど、幾重にも問題が絡み合っています。
今回の雇用統計は、次回のFOMC(11/2~11/3)開催前に発表された最後の指標となります。
もしかすると、11月の雇用統計の発表を待って、12月のFOMCで決定の判断をするとの慎重論が出てくるかもしれません。金融取引問題で辞任した2人の理事の後任が誰になるかと合わせて、慎重に見ていくことになり、市場はさらなる不確実性に対応する必要があるかもしれません。

原油価格と天然ガスの価格が上昇しています。原油価格は、1バレル80.11ドルを付けて約7年ぶりに1バレル80ドルを超えています。
原油価格の高騰は、OPECプラスがコロナ禍で昨年から大規模な協調減産を続けているなかで、少しずつ生産を増やしていますが、10月4日の会合で追加増産を見送ったことに、急激な経済再開による世界規模の需要が相まって高騰しています。
天然ガスに関しては、EUを中心に不足しており、天然ガス価格が急騰していましたが。この欧州のエネルギー危機に対して、世界のエネルギー市場安定化を支援する用意があるとロシアが表明したことを受け、米欧市場で天然ガス価格が一時急反落しましたが、落ち着く見通しは未だ見えていません。
また、ロシアからの天然ガス供給をめぐっては、EU内には、ロシアへの依存を嫌う国も多く、素直にロシアからの天然ガス供給を受け入れない国もあるかと思います。暫く、紆余曲折があるかもしれません。

このエネルギー価格高騰の中で、短期筋のターゲットにされたのが、日本市場でした。日本はエネルギー自給率も低く、エネルギー価格の高騰は日本経済に大きな影響を及ぼします。また、岸田新内閣発足直後という政情的に不安定なタイミングで、米系短期筋が円売り・日本株売り・日本国債売りのトリプル日本売りを仕掛け、この結果、日経平均は3万円台から一時3,000円も下げる状況となっています。円も大きく売られたため、ドル円をはじめとするクロス円は大きく上昇する結果となっています。
元々、日本はエネルギーの輸入依存度が高いため、原油高となれば外貨が国外に流れるので、それが影響して円安になりやすい傾向があります。何とも言えない絶妙なタイミングでの仕掛けで、今週の日本市場は大きく混乱する1週間だったかもしれません。

英国は、ガソリンスタンドでのガソリン不足が深刻化し、給油待ちの車の列が数キロにも及ぶ事態が発生しています。
英国のガソリン問題は、原油不足ではなく配送する運転手が不足しています。これは、英国がEUを離脱した際に、約10万人のヨーロッパ出身の運転手たちが英国を去ったと言われており、これが原因で物流が滞っています。
また、EUから物品を運んでくるトラックも減少したことで、英国スーパーで販売される食品の7割を占めるヨーロッパからの物流が滞り、スーパーの棚から徐々に食料品が消えていく事態になっています。この供給網の混乱により、原材料不足から原材料価格が高騰したことを受け、生産者価格も高騰し、結果として小売価格が高騰しインフレが進んでいます。
この英国のインフレ率は、現在の高水準が当初の想定よりも長く続くとの見通しが広まり、利上げが差し迫っているとの観測が強まり、その結果、英国10年国債の利回りは上昇しました。
金利先物市場では、2022年に最大3回(2月、6月、12月)の利上げを織り込み始めています。そのタイミングで、エネルギー危機を抱えているユーロが対ポンドで大きく売られたことが引き金となって、今週のポンドは底堅い展開となっています。

今週、ポンドより強かったのが豪ドル。
豪州は、RBA豪州準備銀行の金融政策決定会合で、従来通りのスタンスとなり、24年まで利上げ無しとの発表でしたが、8月の貿易収支は過去最高の黒字となっています。輸出品目第2位と3位の液化天然ガスと石炭価格の上昇が効いており、8月の輸出は中国向けだけで前年同月比55%増の186億豪ドルと、両国間の政治・通商面の緊張による影響はほとんど受けていません。
中国恒大集団の問題もあり、鉄鉱石の輸出は9.7%減となっていますが、それ以上に液化天然ガスと石炭の輸出が伸びています。中国の電力不足は豪州資源を買い膨らませている構造となっており、中国はこれから冬に入ることで石炭需要が高まることになれば、豪ドルの下支えになるかもしれません。

今週の為替相場は、長期金利が上昇傾向の通貨(ドル・ポンドなど)、資源国通貨(カナダドル、豪ドルなど)は買われており、エネルギー問題がネックになる国の通貨(円、ユーロなど)は売られている傾向だったかもしれません。

◆来週の予定など

来週の主な経済指標です。(日、米、英、EU、豪、中)
なお、要人発言等は予定の変更や中止となる場合があります。

10月11日(月)
特に重要な指標の発表はありません

10月12日(火)
07:00 米 エバンス:シカゴ連銀総裁の発言 ☆☆
08:50 日 国内企業物価指数☆
15:00 英 失業率・失業保険申請件数・雇用者数☆☆☆
18:00 EU・独 ZEW景況感調査☆☆
23:00 米 JOLT労働調査☆☆

10月13日(水)
01:30 米 ボスティック:アトランタ連銀総裁の発言☆☆
08:50 日 機械受注☆
12:00 中 貿易収支☆☆
15:00 英 GDP・貿易収支・鉱工業生産・製造業生産☆☆
15:00 独 消費者物価指数☆
18:00 EU 鉱工業生産☆
20:00 米 MBA住宅ローン申請指数☆
21:30 米 消費者物価指数CPI・消費者物価指数(コアCPI)☆☆☆
23:30 英 カンリフBOE副総裁の発言☆

10月14日(木)
05:30 米 米国石油協会 週間原油在庫☆☆
07:00 豪 デベルRBA副総裁の発言☆☆
09:30 豪 失業率・新規雇用者数☆☆☆
10:30 中 消費者物価指数・生産者物価指数☆☆
13:30 日 鉱工業生産(確報値)☆
19:10 英 テンレイロMPC委員の発言☆
21:30 米 新規失業保険申請件数
21:30 米 生産者物価指数・生産者物価指数コア☆☆
23:00 米 ボスティック:アトランタ連銀総裁の発言☆☆
23:30 米 週間天然ガス貯蔵量☆☆
24:40 英 マンMPC委員の発言☆
24:00 米 週間原油在庫量☆☆☆

10月15日(金)
02:00 米 バーキン:リッチモンド連銀総裁の発言☆☆
13:30 日 第三次産業活動指数☆
18:00 EU 貿易収支☆
21:30 米 小売売上高(自動車除く)☆☆☆
21:30 米 NY連銀製造業景気指数☆☆
21:30 米 輸入価格指数☆
23:00 米 ミシガン大消費者信頼感指数☆☆
翌01:20 米 ウィリアムズ:NY連銀総裁の発言

来週のドルの動きでは、13 日に発表される米9 月消費者物価指数は、上昇が予想されており、インフレ懸念があるためインフレ率を確認することになります。エネルギー高が懸念されているので、14日の週間天然ガス貯蔵量・週間原油在庫量は天然ガス価格、原油価格に直結するため注意が必要です。
政治的には、FRBメンバーの後任問題。倫理規定違反で辞任を表明した、ローゼングレン米ボストン連銀総裁とカプラン米ダラス連銀総裁は共にタカ派であり、タカ派のクォールズFRB 副議長も13 日に任期満了を迎えます。また、タカ派のクラリダFRB 副議長も倫理規定違反が取り沙汰されているため、11月のFOMCでは、タカ派の4名が不在となる可能性もあるため、前述のインフレ率や原油高次第によっては、テーパリング開始が12月に先送りになる可能性もあります。
連邦債務上限問題は、8日に12月3日まで引き上げること法案が可決し、当面のデフォルトは回避されました。ただし、ただ与野党の対立は根深く、12月まで多少の時間稼ぎができただけであり、米共和党のマコネル上院院内総務は8日、バイデン米大統領に書簡を送付し、連邦債務の法定上限を巡り、次にこの問題が浮上した際には支援しないとの姿勢を示し、民主党が単独で行動する必要があると指摘しています。この債務上限問題の根本的な解決に至るかどうかは不透明であり、引き続き懸念材料として注意が必要です。

ポンドは、BOEの早期利上げに対する期待から底堅い展開が予想されますが、英国内ではトラック運転手や食品加工業者の労働力不足が深刻化しており、既に飲食店やガソリンスタンドの一時的な休業が拡大しています。
短期的には物価が一段と上昇し、景気回復の鈍化が懸念されます。
BOE は「金融政策正常化の第一歩は、利上げによって行われるべき」との認識を示しており、原油高なども背景に金融政策委員会(MPC)メンバーの「インフレ高は一時的」との見方に修正を迫られる可能性があるため、要人発言には注意が必要です。来週は8 月のGDP や9 月の雇用データなどの発表が予定されており、特に、雇用データで懸念されている業種の雇用に改善の兆しが見えるか注目されます。

豪ドルは、引き続き原油、石炭などのエネルギー価格にけん引されて底堅い展開が予想される反面、今週の7日まで休場だった中国市場が来週から本格的に再開されます。中国が休場中の中国恒大問題は進展が見られず、他の不動産業者のデフォルトも懸念され始めています。これが鉄鉱石価格の下落を呼び、豪ドル相場に影響を与えるかもしれません。
14日には雇用統計が発表されます。今週行われたRBAの理事会で「完全雇用への復帰と目標と一致するインフレを達成するために、非常に支援的な金融条件を維持することをコミット」と声明で発表されましたが、雇用情勢の動きは引き続きRBA にとっては重要指標となりますので注目です。

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