読んだ論文 (Comparison of interactions between warfarin and cephalosporins with and without the N-methyl-thio-tetrazole side chain. Journal of Infection and Chemotherapy)

https://doi.org/10.1016/j.jiac.2020.07.014

【要旨】
N-メチル-チオ-テトラゾール(NMTT)側鎖を有するセファロスポリンは、血液凝固因子の産生を減少させることでワルファリンと相互作用する。しかし,NMTT側鎖を持たないセファロスポリンもまた、ワルファリンの効果を増強する。そこで,日本人の健康保険請求データベースを用いて,NMTT側鎖を有するセファロスポリンで修飾されたワルファリンの効果を比較することを目的とした。組み込み基準は、(1)2010年4月から2017年3月までの期間に第2世代または第3世代のセファロスポリンを静脈内投与された患者、(2)セファロスポリン治療中にワルファリンを投与された患者とした。患者は、NMTT側鎖を有するセファロスポリンを投与した群(NMTT群)と、NMTTを投与していない群(非NMTT群)のいずれかとした。患者データを傾向スコアでマッチングし、以下のアウトカムを両群間で比較した。(1)ビタミンK投与患者の割合、(2)出血イベントの割合、(3)ワルファリンの1日投与量の変化。203人の患者のうち,100人(各群50人)をプロペンシティスコアでマッチングさせた。ビタミンKを投与された患者の割合は両群とも6.0%であった。これらの患者にはメナテトレノンを単回静脈内投与したが,出血は認められなかった.ワルファリンの1日投与量を減量した患者の割合は、NMTT群で6.5%、非NMTT群で4.3%であった。我々の研究はサンプル数が少ないため,ワルファリンの過剰抗凝固リスクがNMTT側鎖のあるセファロスポリン群とないセファロスポリン群で影響を受けるかどうかは判断できなかった。しかし、NMTT側鎖の有無にかかわらず、出血リスクは十分に低いことが示された。

(個人的な感想)
両群ともに、出血イベントは少なかったということは朗報。
Limitationに記載されている内容はもちろんだが、下記も気になる点。
データベースを使用しており、2010年から2017年という長い期間に2世代、3世代セファロスポリンの注射製剤を使用していた患者が23万件で、そのうち、ワーファリンを使用していたのが、1048例ということ、その後除外症例を除いて203例で、NMTT群:非NMTT群=73:130という形。症例選択時のセレクトバイアスがかかっている可能性があるように感じられた。
患者(両群とも)の重症度がどれぐらいだったかも不明(重症度が高い患者では、それだけでPTの変動を認める可能性あり)。→本検討では、投与量調整をしている症例がほとんどいないことから、重症度は高くない?
INRの変化率が不明。INRがどの程度変化したかのデータもあわせて提示いただけるとなお良いように思った。

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