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肥満および非肥満症例でのバンコマイシンの投与戦略による1日投与量と安全性の違い

本記事は、主に医療従事者向けに記載をしております。また、本記事の内容は、私の所属している施設などとは一切関係がないことを併せてご承知の上、記事をご覧ください。

はじめに

2009年にバンコマイシンのTDMガイダンス[1]がIDSAより公表されてから、こぞってトラフ値 10-20μg/mLを目標に治療を行なってきたと考えられる。
そもそもトラフ値10-20μg/mLはAUC400mg・h/L以上となると言われる代替指標でした。
しかし、医師も薬剤師もこの数字のマジックに魂を奪われてしまい、本来の目的も分からず、解析ソフトなどで、とにかく、10-20μg/mLとなるように投与量を調整することに血眼になっていた。
時は、2020年。バンコマイシンのTDMガイダンスはアップデートされた[2]。その内容は大きくは変わっていないが、トラフ値だけでの評価はやめましょうというような、現場で散々トラフ値のコントロールを躍起に行なっていた薬剤師には、衝撃的な内容だったのではないだろうか。
その内容は私が過去に書いた、記事を参照いただくとざっとした内容はわかるのではないだろうかと思う。

今後、日本のガイドラインでもAUCを算出して評価という方向になると、2020年9月に開催された日本化学療法学会総会でのTDMガイドライン改訂に関するシンポジウムなどで、公表されていた。

今回は、特殊なポピュレーションである、肥満症例で、AUCを指標とした場合とトラフ値を指標とした場合に、投与量がどの程度変わり、安全性にどの程度寄与するのかという報告[3]があったので、論文を読んでみた。

論文の内容 

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引用文献

[1] Rybak M, Lomaestro B, Rotschafer JC, Moellering R Jr, Craig W, Billeter M, Dalovisio JR, Levine DP. Therapeutic monitoring of vancomycin in adult patients: a consensus review of the American Society of Health-System Pharmacists, the Infectious Diseases Society of America, and the Society of Infectious Diseases Pharmacists. Am J Health Syst Pharm. 2009 Jan 1;66(1):82-98. doi: 10.2146/ajhp080434. Erratum in: Am J Health Syst Pharm. 2009 May 15;66(10):887. PMID: 19106348.
[2] Rybak MJ, Le J, Lodise TP, Levine DP, Bradley JS, Liu C, Mueller BA, Pai MP, Wong-Beringer A, Rotschafer JC, Rodvold KA, Maples HD, Lomaestro BM. Therapeutic monitoring of vancomycin for serious methicillin-resistant Staphylococcus aureus infections: A revised consensus guideline and review by the American Society of Health-System Pharmacists, the Infectious Diseases Society of America, the Pediatric Infectious Diseases Society, and the Society of Infectious Diseases Pharmacists. Am J Health Syst Pharm. 2020 May 19;77(11):835-864. doi: 10.1093/ajhp/zxaa036. PMID: 32191793.
[3] Covvey JR, Erickson O, Fiumara D, Mazzei K, Moszczenski Z, Slipak K, Nemecek BD, Zimmerman DE, Guarascio AJ. Comparison of Vancomycin Area-Under-the-Curve Dosing Versus Trough Target-Based Dosing in Obese and Nonobese Patients With Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Bacteremia. Ann Pharmacother. 2020 Jul;54(7):644-651. doi: 10.1177/1060028019897100. Epub 2019 Dec 30. PMID: 31888350.

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