読んだ論文 (Impact of De-escalation on Prognosis of Patients With Bacteremia due to Enterobacteriaceae: A Post Hoc Analysis From a Multicenter Prospective Cohort. doi: 10.1093/cid/ciy1032.)

腸内細菌による菌血症に関する, De-escalationと臨床転帰の関連性について

上記のサイトからリンクを辿っていけば、本文は無料で読めます。

背景
広域スペクトラム抗菌薬への曝露を減らす戦略として、特定の臨床状況における抗菌薬のde-escalationの安全性について、より多くのデータが必要とされている。本研究の目的は、腸内細菌科(BSI-E)による血流感染症患者のde-escalationの予測因子とその転帰への影響を調査することである。

方法
BSI-E患者を対象としたプロスペクティブな多施設コホートを対象としたポストホック解析を行った。ロジスティック回帰を用いて、早期de-escalation(EDE)に関連する因子を分析し、30日間の全死亡率に対するEDEおよび後期de-escalation(LDE)の影響についてCox回帰を行った。EDEとデエスカレーションなし(NDE)の傾向スコア(PS)を算出した。治療終了時の失敗および入院期間も分析した。

結果
全体では516人の患者が含まれた。EDEは241例(46%)、LDEは95例(18%)、NDEは180例(35%)で実施された。EDEの発生確率の低下と独立して関連する変数は、多剤耐性菌(オッズ比[OR]、0.50[95%信頼区間{CI}、0.30-0.83])およびイミペネムまたはメロペネムで経験的に治療された院内感染(OR、0.35[95%CI、0.14-0.87])であった。交絡因子をコントロールした後、EDEは死亡リスクの増加とは関連していなかった;ハザード比(HR)(95%CI)は以下の通りであった:一般モデル、0.58(0.25~1.31);PSを用いたモデル、0.69(0.29~1.65);およびPSを用いたマッチドペア、0.98(0.76~1.26)。LDEは死亡率とは関連しなかった。de-escalationは治療失敗や入院期間とは関連していなかった。

結論
腸内細菌科による単菌性菌血症患者におけるde-escalationは,臨床転帰への有害な影響とは関連していなかった。


(個人的な感想)

過去に重症敗血症症例におけるde-escalationについて, RCTを行われているが、予後には関連していないことが報告されている (Intensive Care Med. 2014 Aug 5. PMID:25091790)

ツイ界隈でも有名なEARL先生のブログ にde-escaltionの過去の報告について、すごいまとまって記載しているので、是非ご覧いただけたらと思います

今回読んだ論文は、腸内細菌科細菌による菌血症に限って検討を行っておりました。早期de-escalation、後期de-escalation、de-escalationなしでの患者背景がかなり異なっている印象でした。下記に表を記載していますが、de-escalationなし (表のNDEの部分)では, 耐性菌 (ESBL産生菌, AmpC産生菌)の検出割合が多かったり, 院内感染であったり, ICUに入室していたり, 初期の重症度が高かったり, 30日死亡が早期群や後期群と比較して頻度が高い傾向があったようです。つまり, 臨床的には, de-escalationしにくい状況であったのではないかと推察されます。

画像1

ただ、アウトカムを起点とした, 多変量解析を行うと予後には影響しないということで, 解析方法により, 解釈がずいぶんと異なっている印象をすごく感じてしまいました。

正直, こんなにも解析方法により, 色々な解釈になるもんなんだと勉強になりました(論文になっているので正しいのでしょうが、通常、自分が実臨床データを使用する場合、こんなにこねくり回して解析をする方法は取らないので・・・)

今回は、耐性菌のみの解析っていう部分をしていないので、その場合はどうなのかっていう点はすごく気になります・・・。

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