KPC産生腸内細菌科細菌感染症症例とNDM産生腸内細菌科細菌感染症症例ではどちらの臨床転帰が悪いか? (DOI:https://doi.org/10.1016/j.cmi.2020.09.043)

本記事は、主に医療従事者向けに記載をしております。また、本記事の内容は、私の所属している施設などとは一切関係がないことを併せてご承知の上、記事をご覧ください。

はじめに

今日は気が向いたので、要旨だけですが、1本読みました。

カルバペネマーゼ産生菌 (CPE)のうち、日本ではほとんどお見かけしないKPC産生菌とNDM産生菌による感染症症例の臨床的な転帰を比較した論文です。

CREについては、耐性グラム陰性菌感染症の治療ガイドラインの内容を記事にしたもので触れていますので、そちらをご参考にください。

今回読んだ要旨の内容での驚きは、韓国からの報告ですが、KPC群が475例、NDM群が384例と相当数の症例数を集めている、すなわち、それだけ、この地域 (2700床と大規模病院ですが・・・)で、CPEが流行しているということです。恐ろしい。。。

結果では、KPCの方が、30日以内死亡および保菌が判明してからの感染が多かったとのこと。

30日死亡のリスク因子として、KPC産生腸内菌細菌が独立した因子として見出されたようですが、そのほかに、担がん患者、カルバペネム系抗菌薬の使用歴、CPEの感染部位が独立した因子として見出されたようです。感染部位がどこかなのか気になります(本文が無料ではないので現状、わかりません。。。)

では、要旨を見ていきます。

要旨

Comparison of clinical outcomes of patients infected with KPC- and NDM-producing Enterobacterales: a retrospective cohort study https://www.clinicalmicrobiologyandinfection.com/article/S1198-743X(20)30597-8/fulltext#%20

目的

Klebsiella pneumoniae carbapenemase(KPC)産生腸内細菌科細菌とNew-Delhi-Metallo-β-lactamase(NDM)産生腸内細菌科細菌の臨床転帰を比較することを目的とした。

方法

韓国ソウルの 2700 床の三次紹介病院で,2010 年から 2019 年の間に KPC-または NDM 産腸内細菌科細菌分離株を有する全成人患者を対象に,レトロスペクティブコホート研究を行った。一次転帰は、KPCまたはNDM産生腸内細菌科細菌の初回分離後30日間の死亡率とした。副次的転帰は,コロニー化した患者のうち,30 日以内の保菌分離株による感染症の発症であった.30日死亡率についてはCox回帰分析を行い,感染症発症については競合リスク分析を行った。

結果

試験期間中、合計859人の患者が同定された;475人(55%)がKPC群、384人(45%)がNDM群であった。30日死亡率はKPC群がNDM群に比べて有意に高かった(17%[81/475] vs 9%[33/384];P<0.001)。
KPC群はNDM群と比較して、初回分離後の最初の保菌から30日以内に感染症を発症する頻度が高かった(8%[27/353]対3%[10/295];P=0.02)。
多変量解析の結果、30 日間死亡の独立した危険因子は、固形がん(調整後ハザード比[aHR]、2.51;95%信頼区間[CI]、1.66─3.79;P<0.001)、固形臓器移植(aHR、0.32;95%CI、0.17─0.61;P<0.001)、APACHE II スコアの高値(aHR、1.11;95%CI、1. 11;95%CI、1.08─1.13、P<0.001)、KPC産生腸内細菌科細菌(aHR、1.69;95%CI、1.02─2.79、P=0.04)、3ヶ月以内のカルバペネム使用歴(aHR 1.86;95%CI、1.26─2.75、P<0.001)、および初回培養時のKPCまたはNDM産生腸内細菌科細菌感染部位(P<0.001)。

結論

我々の研究では、KPC産生腸内細菌科細菌はNDM産生腸内細菌科細菌と比較して、より悪い転帰と有意に関連していることが示唆された。

よろしければサポートお願いします。 サポートいただいた費用で、論文の取り寄せ等に使わせていただき、記事を充実させていきます。