読んだ論文 (Concomitant vancomycin and piperacillin/tazobactam treatment is associated with an increased risk of acute kidney injury in Japanese patients. DOI:https://doi.org/10.1016/j.jiac.2020.05.012)

日本人におけるバンコマイシンとタゾバクタム/ピペラシリン併用療法におけるAKIのリスク因子について

序章
最近の研究では、バンコマイシン(VCM)とピペラシリン/タゾバクタム(PT)の併用投与は急性腎障害(AKI)の発生率の増加と相関があることが確認されている。しかし、日本人を対象としたエビデンスは少ない。そこで本研究では,VCMとPT(VP療法)を併用した日本人患者とVCMと他のβ-ラクタム系薬剤を併用した日本人患者(VA療法)を対象に,急性腎障害(AKI)の発生状況を比較するレトロスペクティブ研究を実施した。
方法
2012年6月~2018年12月に津山中央病院で実施された本研究は、VCMとβ-ラクタム系抗生物質を≧48時間投与された成人患者を対象としたもので、リスク、傷害、不全、喪失、末期腎疾患の基準に基づいてAKIの発生率を主要転帰と定義した。患者の臨床的特徴と転帰を検討し、一変量および多変量ロジスティック回帰分析を用いて両群間で比較した。サブグループ解析は、患者のベースラインの入院状況を集中治療室または一般病棟として層別化して行った。
結果
272例(V P療法92例、VA療法180例)を解析した。一変量解析の結果、AKI発症はVP療法とVA療法の間で有意差が認められた(25.0% vs 12.2%;p<0.01)。多変量解析では,VP療法とVCMの初期トラフレベル≧15 μg/mLがAKI発症と関連していることが示された。集中治療室に入院した患者よりも一般病棟に入院した患者の方が、VP療法でAKIを発症した(p = 0.02)。
結論
日本人集団において、VP療法はVA療法と比較してAKIのリスクの増加と関連していた。


(個人的な感想)

まあ、海外の報告と大差が無いように感じた。やはり、VCM+TAZ/PIPCはAKIに注意ということで。

いくつか気になった点↓

マッチング等を行い、背景を慣らして検討してみてもよかったのではないかと感じた。

感染症病名がどうなのか・・・。肺炎なのか、UTIなのか、菌血症なのか、qSOFAはあくまでも初期の状態はわかるが、その後の経過を見るものではないので、どうなんだろう??

症例の組み込み (除外) 基準において、腎機能のカットオフをSCr 1.2mg/dLとした根拠が過去の報告に合わせている→これは、カットオフとして適切だったのか・・・。

多変量解析では、VCM の初期トラフ値が15mcg/mL以上が因子として見出されているようですが、これは、VCM+TAZ/PIPCの併用によりAKIになって、予測よりも濃度が上昇してしまったのか、狙って、初期からこの濃度になっていたのかっていうところの言及はないので、VCM+TAZ/PIPC併用時に高濃度を目指したらダメなのか良いのかってことがわからない。



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