読んだ論文 (Evaluation of once-daily dosing and target concentrations in therapeutic drug monitoring for arbekacin: A meta-analysis. https://doi.org/10.1016/j.jiac.2020.08.002)

アルベカシンの1日1回投与および目標濃度のTDMに関する評価:メタ解析

https://www.jiac-j.com/article/S1341-321X(20)30272-5/fulltext

残念ながら、今回の論文は、無料ではないようです(私は会員なので、閲覧できます)

要旨

introduction
アルベカシンは,日本で初めてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症の治療薬として承認されたアミノグリコシド系抗菌薬である。アルベカシン治療中は治療薬モニタリング(TDM)が推奨されているが,目標曝露量や1日1回投与量に関するエビデンスはほとんど報告されていない。本研究では,アルベカシンの1日1回投与による腎毒性や治療失敗に対する効果をメタ解析により明らかにすることを目的とした。

方法
文献検索はMEDLINE、コクランライブラリー、医中誌-Webを用いて行った。

結果
9件の観察的コホート研究が組み込み基準を満たした。15-16μg/mL以上のピークアルベカシン濃度は、治療失敗の統計的に有意な低リスクを示さなかった(リスク比[RR]= 0.61、95%信頼区間[CI]= 0.30-1.24)。<2μg/mLのトラフアルベカシン濃度は、腎毒性の有意に低いリスクをもたらした(RR = 0.30、95%CI = 0.15-0.61)。1日1回の投与で有意に治療失敗のリスクを減少させた(RR = 0.61、95%CI = 0.39-0.97)が、腎毒性(RR = 0.54、95%CI = 0.16-1.75)はなかった。

結論
1日1回の投与でアルベカシンの治療効果を向上させることができ,アルベカシンのトラフ濃度が2μg/mL未満であれば腎毒性のリスクを低減することができる.また,アルベカシンのピーク濃度が15~16μg/mL以上では,治療失敗のリスクを有意に低下させることはなかった。これらの知見を確認するために追加の臨床試験が必要である。


(個人的な感想)

昨日と同様、メタ解析の論文を選んで読んでみました。

アルベカシンのピーク値と効果、トラフ濃度・投与法法による腎機能障害への影響に関して評価をしていました。

先日のものはRCTを含んでいましたが、アルベカシン自体の報告が日本人ばかり書いているようで、観察研究しかなかったようです。

結果は、TDMガイドラインに記載されているような内容に沿っているように感じました。著者はTDMガイドラインの改訂に関わっている先生方のようですので、改訂に伴う検討だったのでしょう(想像ですが・・・)。

いずれにせよ、この報告の内容であれば、ガイドラインの内容もこれまで通りとあまり変化が無いように思います。

少し気になったのは、成人のみを対象としており、小児の患者のデータは含んでいないという点。スペシャルコホートで、ガイドラインでは触れて欲しい点なので、この点のメタ解析をしていただけると良いように思います(自分では不可能なので・・・)

追加の臨床試験が必要とのことが本文に記載されていますが、抗MRSA薬が昔のように数が限られている時代ではないので、ABKをチョイスして治療という場面があまり無いように感じるんですが、実現可能なのでしょうか?その点も気になりますが・・・。

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